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2005/12/21
患者の尊厳重視の医療制度確立を目指し代表ら諏訪中央病院視察
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前原誠司代表は21日、長野県茅野市にある諏訪中央病院を視察。医療制度改革が大きなテーマとなる通常国会に備え、求められる医療のあり方等をめぐり、鎌田實同院名誉院長らと意見交換した。視察には、羽田孜最高顧問はじめ、細野豪志役員室長、山井和則、菊田真紀子、柚木道義、篠原孝各衆議院議員、羽田雄一郎、足立信也、島田智哉子、津田弥太郎参議院議員らが同行した。

 同院は茅野市・諏訪市・原村によって運営される自治体立の病院で、法律が整備される前から在宅医療を開始。地域医療の最前線の病院として注目されて久しい。「やさしく、あたたかい、たしかな医療を目指す」を理念に掲げ、訪問看護・往診を行うなど地域に密着した医療環境作りに取り組んできた。同時に、最新の機器を整備して、高度医療も実践。介護ケア病棟、療養型病棟、介護老人保健施設、ドック検診センター、訪問看護ステーションも運営し、その連携のなかで、「放り出さない」「見放さない」あたたかで丁寧な医療を実現した。また、多くの市民ボランティアの協力・支えが病院運営に欠かせない存在となっているのも特徴でもある。

 また、民主党の医療改革の旗頭でもあったといえる故・今井澄参議院議員も、同院院長として住民の健康回復・維持に取り組んできた現場でもある。

 八ヶ岳をはるかに臨む心地よい病棟内の談話室、訪問看護ステーション、介護老人保健施設など、病院内を鎌田名誉院長の案内で見て回った視察団一行は、同名誉院長、武井義親副院長らと懇談した。

 懇談の冒頭、「諏訪という地域はわれわれ民主党にとって縁の深い、思い入れの深いところだ。今井澄先生には私も大変かわいがってもらった」と前原代表は述べた上で、故・今井議員はじめ鎌田名誉院長らが実現してきた患者の視点に立った医療のあり方への敬意を表明。平均寿命男性1位、女性3位という高い指標を達成し続けながら、老人医療費は全国で最も低い県に位置づけられている長野県に対し、「モデルの県だ」とする認識を示すとともに、来年の通常国会の大きなテーマのひとつとなる医療制度改革を前に医療のあり方を今一度検証していきたいとの考えを示した。「医療制度改革をお金のことだけで考えすぎている気がする。患者さん、人間が生きていくということ、生まれて死んでいくということをどう考えていくか、医療がそれにどう関わっていくべきか、そうした原点をもう一度考え直したい。単なるお金のことだけで医療を考えるのは本末転倒ではないか」と語った。

 できるだけ病院にかからない、予防医療を含めたトータルの医療のあり方を検証していく必要性も提示。「それを踏まえた医療制度改革を民主党の考え方として出していきたい」と表明した。

 視察の第二の目的に関連して、先の党大会でも提示した代表自らが提唱する「市民参画型分権社会」のあり方に言及。「200人以上の方がボランティアとしてこの病院で活動しているのはひとつの理想形ではないかと思う」として、市民が担う公共サービスの取り組み、広め方等も検証していきたい考えを示した。

 武井副院長からは「7、8万の市民を対象にした我々のような中規模病院が、その住民に対して真正面から向かい、どんな施設が必要かということで整備してきた。そうした点も見ていただき、国民の安全を守るために生かしてほしい」との要請があった。

 鎌田名誉院長は「人間が生まれて死ぬまで、全体にかかわる医療がしたい」との思いで故・今井議員らと昭和40年ごろからの取り組んだ医療を紹介。赴任直後の病院について「累積赤字4億円のオンボロ病院で、地域は不健康で、脳卒中が秋田に次いで全国で二位だった長野県下で脳卒中が一番多い地域で、医療システムを支えている国保の財政は火の車で医療費も高かった」と振り返った。

 日本でも有数の長寿地域となった現在については、「長寿地域であるということは老人が多い。老人が多いということは当然医療費が上がるはずなのに、長野県下の市のなかでは老人医療費も一般の医療費も安い」として、一人当たり国保医療費、一人当たりの老人医療費とも最も安く推移している状況を説明。そうした医療費抑制は、「丁寧な健康づくり運動の推進」「救急医療や高度医療の拡充」「支える医療の充実」という3つ医療のバランスのいい展開によって実現したものであることを明らかにした。

 そう説明した上で鎌田名誉院長は、「日本の医療の問題は、救急医療や高度医療はかなりよくなってきているが、支える医療という視点が弱くなっている」と分析。あわせてそうした諏訪中央病院での三つの医療のバランスのいい展開を医師会の協力も得て展開してきたことが、地域住民の健康増進と医療費抑制の実現を可能にしたとの認識も示した。

 また、訪問看護医療も脳卒中を減らす運動のために地域での医療活動を展開する中で寝たきり老人の看護を続ける女性たちと遭遇。寝たきり老人の悲惨さを前に「見てしまったもの、知ってしまったものを何とかしよう」との発想で、「お風呂に入れてあげよう、何とかしてやろう」と始まったものであることも、名誉院長の口から語られた。

 さらには、寝たきり老人や障害のある人を街に連れ出すなかで、地域住民の理解の広まりのきっかけとなり、まちがやさしくなったとの説明もあった。住民による「支える医療」ともいえる展開だ。

 平均在院日数を減らそうとする日本の医療の流れについては、「減らそうとすると医療が冷たくなる」との見方を鎌田名誉院長は示し、ちゃんとしたリハビリを受けたい患者に対し、長期入院をいやがる傾向が出てくる点等を憂慮した。同院では、一般病棟のほかに回復期リハビリ病棟、医療・介護療養病棟と連携、その先には自宅療法、訪問看護を行うことで「最期まで面倒をみてくれる、やさしい医療」が確立している。

 鎌田名誉院長は、国民皆保険制度を守っていくことの重要性、医療の質を確保するためにも医師・看護師不足であるとの認識なしに医療費抑制だけを目指す医療制度改革であってはならないこと、せめてドイツ、フランス並みにGDP費約10%の医療費をかけるなかで医療の見直しは行われるべきであること、診療報酬引き下げは医療の質低下の引き金になりかねない点等を指摘。また、同院の医業収支比率を示し、「いい医療しているのに自分たちの首をしめるようなことをなっている。こうなると、(そうした医療制度を強いる)政治に愛着を感じられなくなる」と語り、地域医療の理想的な形を確立しつつある同院が成り立ち得る医療制度改革にしていってほしいとの要請があった。

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