民主党『次の内閣』ネクスト文部科学大臣 鈴木 寛
1.はじめに
自民党長期政権のもとで、わが国の義務教育に対する公的支援は一貫して低調に推移しており、公教育費財政支出は対GDP比率2.7%と、OECD諸国中最低となっている。特に、小泉政権は、「米百俵」のかけ声とは裏腹に、教育改革の中味については全く関心を示さず、結果として、児童・生徒をめぐって、いじめ、殺傷事件等が続発し、学力・体力など、子どもたちの「生きる力」も急速に低下している。
小泉自公政権は、こうした教育現場の惨状を一切顧みることなく、全く教育論がないままに、昨年来、三位一体改革に名を借りて「義務教育費総額の削減」を強引かつ巧妙に推進している。一方で、文部科学省も、教育現場に対する中央管理統制主義を改める意思を明確には打ち出していない。
子ども・教育の将来に最も重点をおく民主党としては、わが国の公教育再生にとって、最も望ましい教育行政のあり方とその実現に資する義務教育費負担制度のあり方について提案をまとめた。
2.民主党の地域現場主権・学習権保障に関する基本理念
民主党は、特に、教育に関しては、補完性の原則に基づけば、中央政府等が従来有してきた諸権限及び財源が、都道府県にではなく学校設置者である市区町村にまで移譲されることが不可欠であり、そのことによって、各地・各現場において当事者の創意工夫が発揮され、迅速かつ不断に改善活動が行われると考え、教育政策を立案してきた。
現に、そうした観点から、先の総選挙マニフェストにおいても、中央統制管理型の教育行政の根拠となっている地方教育行政法の抜本的見直しを明記しているところである。
同時に、民主党は、高度情報・知価社会化が急速に進展する21世紀においては、「すべての人々に対する学習権の保障」こそは、最も重要な基本的人権の一つであり、また、社会の構成員の理解と自発に基礎をおく新たな社会統治システムの構築にとっても不可欠であると認識し、学習者一人一人の単位での「義務教育環境・機会」の実質的保障・充実を目差すべきであるとの考えのもと、教育施策の抜本的見直し・再編に関する検討を積み重ねてきた。
義務教育国庫負担制度等の改革にあたって、上記の二つの視点を同時に踏まえた真の改革提案を策定した。
3.民主党案の骨子
(イ)名称
「学校設置者等への権限移譲と義務教育財源確保のための法律(仮称)」を新たに制定する。
(ロ)目的と概要
(1)地域・現場主権主義及び補完性の原則の徹底の観点から、都道府県ではなく、学校設置者及び学校に対して、義務教育に関する諸権限を移譲・集中する。
(2)国民が等しく有する学習権を確実に保障するため、義務教育費を確保する責任を中央政府・地方自治体の双方に課し、財源確保を図る。
(3)中央政府から設置者に対する教育一括交付金を創設する。一括交付金の算定は、教育現場の実状を的確に踏まえた客観的かつ透明な基準に基づき決定され、文部科学省の恣意性が働かないものとする。
(ハ)骨子
(1)中央政府・都道府県・市区町村、それぞれの義務教育財源確保責任を明記
都道府県民・市区町村民に対する報告・公表・説明義務
(2)教育一括交付金の創設
イ. 交付先:中央政府から学校設置者へ(市区町村立学校は市区町村、都道府県立学校は都道府県)
ロ. 予算使途:教育目的(それ以上詳細な使途は決めないが、教育目的以外への流用は不可)
ハ. 交付金の算定基準:供給者サイドの視点ではなく、学習者サイドの視点に立って、一人一人の学習者が義務教育環境及び機会を十分に確保されるよう、その必要な水準を定め、(中央政府・地方政府・設置者が共同で)、その保障のために必要な金額を客観的かつ透明な基準により算定(文部科学省の恣意性は働かない)
(3)学校設置者への権限の集中
イ. 現状では、バラバラの教育諸権限(人事管理権(都道府県)、学校設置権(市区町村)、学級編制決定権など(文部科学省))を、設置者に移譲・集中する。
(4)設置者間の連合・連携・協力の促進
イ. 教育行政に関する適正規模(人口30万〜50万人)を検討しつつ、広域市区町村間の連合・連携・協力を積極的に推進する。都道府県はその支援を行う。特に、採用・配属・研修などは積極的に共同して行う。
(5)その他
イ. 交付税制度についての県・市区町村間の所要の調整を行う。
ロ. 附則等で地方教育行政法の所要改正を行う。
以 上
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