前原誠司代表は22日午後、北海道札幌市を訪れ、「私の目指す政治・これからの日本」と題した講演を行った。この中で前原代表は、先の総選挙を振り返りつつ、次の選挙に向けて「常在戦場」の決意を披露したほか、税金のムダづかいを削るにあたっての論点を具体的に述べ、民主党のめざす社会像や外交・安全保障政策、農業政策などについて明快に語った。
前原代表はまず、今日の常任幹事会で次期衆院選に向けた第一次の公認候補内定者54名を発表したことに言及。「公認作業をできるだけ急いで、いつ選挙があっても勝てる」体制づくりを急ぎ、党全体で「常在戦場の意識」を持ち続けることの重要性を強調した。
前回の総選挙についても前原代表は、郵政民営化に対する熱意を示した小泉首相に対し、政権交代を主張した民主党が、「重要政策についての党としての考え方をしっかりと示せなかった」ことを指摘。政権交代への「気構えも準備もできていないと、多くの国民の皆さん方に思われた結果が、大敗につながったと率直に思っている」と反省の念を込めて振り返った。そして、民主党を「戦う集団」に変えていき、全国に候補者を揃えるとともに、「民主党が政権をとった時に、どうするのかを常にお示しし続ける」として、「われわれの本気さを理解し感じ取っていただく」ための、対案・提案路線の重要性を力強く語った。
前原代表は更に、小泉首相の言う『小さな政府』論についても疑義を呈し、本当にそうなのか、特別会計の問題などを具体的に挙げて、真の改革競争の必要性に言及。その上で、税金のムダづかいを削るにあたっての5つのポイントを挙げた。前原代表が第一に挙げたのは、肥大化した行政機構の問題であり、この点に関する打開策を「公務員制度の改革に求めたい」とした。第二に挙げたのは特別会計の問題。31の特別会計を整理し、「問題点を洗い出して、具体例を国民の皆さんにお示しする」とした。第三に公共事業の問題を取り上げ、「地方自治体の本音に基づいて(ムダな公共事業を)止められる仕組みをつくる」ことの重要性を強調した。第四、第五には、分権の問題と、これに関する省庁の再編の問題を挙げた。
そして前原代表は、「税金のムダづかいを止める競争だけでは、民主党の存在価値はない」とし、「どういう国家像をめざすかという観点から、二つの政党が競い合う状況が必要だ」と述べ、民主党のめざす分権社会の理念を明快に説明した。この中で前原代表は、「めざすべき社会のキーワード」として、「生き甲斐」を挙げ、昨日、代表自身が訪れたコミュニティスクールとして運営されている京都市の総合養護学校などの試みを紹介。こうした地域主体の教育やコミュニティを活用した社会参画の試みを全国に拡げていきたいとの意欲を示し、「地域の力をどうやって呼び起こすか」が重要だとして、「生き甲斐」の受け皿としてのコミュニティの重要性と、その前提として分権の必要性を改めて強調した。
外交・安全保障政策についても前原代表は触れ、かつての自民党と社会党のようなイデオロギーの対立はもはや存在しないことを改めて強調した上で、昨日のプーチン大統領との会談での北方領土問題をめぐってのやり取りなどを紹介しつつ、小泉首相が、「直接、(首脳同士が)話をすることに欠けている」点に危惧の念を表明。これまでの日本外交も、東シナ海の開発やFTAの問題などで「役所任せというものがあまりにも多かった」とし、「政治のリーダーシップが欠如」していることを厳しく指摘した。その上で前原代表は、いわゆる左右の対立ではなく、「どうしたら国が発展して、国民が豊かになるのか」、国家戦略に関する建設的な議論の必要性を語った。
前原代表は、農業政策にも言及。農業は、「保護する対象でなく、どう産業として脱皮させるか」だとして、様々な規制を排除し、株式会社の活用と土地利用の効率化について議論を進めていく意向を示した。そして、農業政策について改めて改革プランを提示していくことを明らかにし、こうした幾つかのテーマを、代表の下に新しく設置された総合政策企画会議の場で議論し、党として発信力を高めていく、とした。
最後に前原代表は、「一つの政党が、ある一時期を除いて、ずっと政権政党で居続けることは、先進国としては恥ずかしい」として、「民主党はそういう意味で、歴史的使命を負っている」と指摘。「政権交代可能な二大政党制を、スローガンだけではなくて、政策や(党の)体質の問題の違いを示していきながら、国民の皆さんに安心をもって選んでいただけるような一極をつくり上げていく」との決意を力強く語って、講演を締めくくった。
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