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2005/11/28
前原代表、奥大使・井ノ上書記官の追悼フォーラムで外交論を展開
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前原誠司代表は28日、早稲田大学国際会議場で行われたイラクで殺害された外務省の奥克彦大使・井ノ上正盛書記官を追悼する「奥・井ノ上2ndメモリアルフォーラム『日本の外交戦略』」(奥・井ノ上イラク子ども基金、早稲田大学オープン教育センター主催)に出席。第2部のパネルディスカッションで、日本外交をめぐり持論を展開した。

 パネルディスカッションは田原総一朗氏(ジャーナリスト 早稲田大学特命教授)の司会のもと、前原代表のほか、姜尚中氏(東京大学大学院情報学環教授)、櫻井よしこ氏(ジャーナリスト)、森本敏氏(拓殖大学海外事情研究所長)らがパネリストとして参加した。

 田原氏から日本政府の外交戦略をどう見るか問われて順番にコメントするなか、最後に発言した前原代表はまず、奥・井ノ上両氏のご冥福を改めて祈るとともに、日本とイラクの子供たちの交流事業と図書寄贈プロジェクトなど、イラクの子供たちへの支援活動を行っている奥・井ノ上イラク子ども基金の取組みに敬意を表した。同時に米軍によるイラク侵攻が開始された国境の小さな村に生きる子供たちを描いた映画『亀も空を飛ぶ』の印象を語り、弱者の視点からの米軍侵略の分析の必要性を提議した。

 米国内でのイラク戦争の評価については、「共和党・民主党関係なく、きびしい評価が下されつつある」と述べ、中間選挙を前にして相当程度のイラクから米軍の撤退が行われるであろうとの考えを提示。ひいてはイラクは分裂国家の道を歩むのではないかとの見方があることに言及した。

 そうした指摘に基づき前原代表は、「その前提を踏まえて日本としての中東政策、対米関係を補強するイラク問題をどうするか、冷静に考えることが求められている」とも語った。奥氏・井ノ上氏はじめ自衛隊の活動に敬意を表することに変わりはないとしつつも、帰国した自衛隊から情報を入手することが的確な現地情勢把握につながるとして、自らが入手した情報をもとに「結論からいえば、仕事がまったくないというのが実態」と語り、(1)主な任務とされてきた給水活動もODAなどに取って代わり、(2)建物補修なども実作業は雇い入れた現地のイラク人に任せるケースがほとんどで自衛隊はコーディネーターに過ぎないこと、(3)第三の活動とされる医療活動の実態は600人の自衛隊中医務官は8人に過ぎず実効性が伴っていないことなどを明らかにし、「アメリカへのメッセージのための自衛隊駐留となっている」と分析した。

 そう指摘しつつも前原代表はサマワと関係性ができた以上、「何らかの関係性を保ちながらの撤退が望ましい」と語り、自衛隊の支援活動を引き継ぐ語りでのODAによるイラク支援を考慮する必要性を提示した。同時に撤退には2〜3カ月が必要との見方も示した。

 対アジア外交をめぐっては、「アメリカとの関係がうまくいけば対アジア政策もうまくいく」とした日米首脳会談での小泉首相が主張について「まったく間違いだと思っている」と表明。アメリカとの同盟関係を通じてしかアジアとの関係改善が望めないとなれば、アメリカは日本の足元を見ることになり、アメリカにカードを与えてしまうことにもなるとした。「アメリカ一辺倒、それしか外交の突破口がない今の状況は日本にとって不幸。日本の孤立化を真剣に懸念している」と語った。

 靖国神社問題をめぐっては「A級戦犯が合祀されているところに(総理大臣は)参拝すべきではない」とする従来からの主張を改めて提示。日本の国益をどう実現していくかを考え、この問題をどう対処していくかのトータルとしての配慮が必要とした。同時に、対中国政策としてはお互いがプラスになる総括的な議論が必要とし、「中国と日本はお互い議論することがあるのに、話し合われていないことが問題」とした。

 対中国外交についてはさらに議論を進め、日本の国連の常任理事国入りを中国が強行に反対した問題に象徴されるように、アセアンプラス1(=中国)と中国が主張し、アセアンに影響力をもって接するのは中国だけとする強行な力の外交戦略を行っている中国にどう対峙していくか、アメリカ一辺倒で万全と主張する小泉路線で物事が解決できるような単純な話ではないと指摘した。

 同時に前原代表は、アセアン、アジア外交にしても努力しなければ今のステータスを維持できないとの考えを重ねて示した。

 田原氏は「戦後、日本は外交戦略をまったく持っていなかった。そこが抜けていた。民主党、そこをがんばってよ」などと語り、森本氏も「その通り。日本が対中・対韓関係があまりよくないことをアメリカも困っている。日本はアセアンをもう少し味方につきつけて、同盟国としての日本の姿がアメリカのなかでどんどん小さくなる」と述べた。

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