5日行われた衆議院本会議で、民主党提出の「郵政改革法案」の提案理由説明を、大串博志衆院議員が行った(以下、その全文)。
郵政改革法案提案理由
ただいま議題となりました郵政改革法案について、提案理由及び法案の概要をご説明いたします。
改革を行うにあたって、その改革が本当に国民のためになるということを確保するためには、まずもってその目的と手段を明確にすることが重要です。郵政事業の改革を行うにあたっては、何がもっとも重要な目的なのでしょうか。それは、何が郵政事業における国民の権利であるのかを明らかにして、その国民の権利をしっかり保障し、安心を確保することです。そして、さらに、現在、郵政事業という巨大な「官」の中に、莫大な、国民の貴重な資産、資金がため込まれ、これが公的部門の非効率な事業に垂れ流されているという現実を変え、その資金が「民」の世界へ確実に流れるようにすることです。「官から市場へ」の改革です。
このような目的を達成するための手段として、我々は、郵便と決済サービスを国の責任で全国サービスを提供する一方で、郵便貯金、簡易保険の資金量は民業圧迫にならないように縮小するべきだと主張してきました。
小泉総理が述べておられる、「官から民へ」、あるいは「民間でできることは民間に」という考え方については、異論はありません。
しかしながら、今般、内閣から提出されている郵政民営化法案においては、本当にこのような「官から民へ」という考え方が適切に実現されていくのか、大いに疑問です。本当に「官から民へ」という考え方を実現するのであれば、まずは、官と民の役割を定義し、峻別する必要があります。ところが今般の郵政民営化法案においては、これにかかる定義、峻別が明確にはなされていません。すなわち、何が郵政事業における国民の権利か、これが明らかにはされていません。民営化をすれば、市場が自動的に、官の分野と民の分野を振り分けて、それぞれの分野のサービスが適切に国民に提供されるよう調整してくれるのか。市場はそのような機能は果たしません。
さらに、内閣提出の郵政民営法案においては、郵政事業においてため込まれた国民の貴重な資金が、民間セクターの、真に効率的な事業に回るようになるのか、ということについても疑問が残ります。それどころか、国民の貴重な資金が、あいかわらず特殊法人、独立行政法人などの、非効率な公的セクターに流れ続けるおそれがあります。またさらには、官の関与が長期に残る可能性がある中で、民業を圧迫する形で、事業融資などの新規分野への、不適切な進出が行われ、そのツケが最終的に国民に回ってくる可能性があります。
さきほど申しましたように、「官から民へ」「民間にできることは民間に」。これらのスローガンには、私も賛同します。しかし、だからすべてを民営化、というのは、決して正しい選択ではありません。まずは官の分野を明確に確定した上で、それ以外の分野について、民間ができることからは官は手を引き、民間に任せる、そういうことこそが、本当に正しい選択だと私は考えます。
このような理念の下、私たちはここに郵政改革法案を提案します。以下、本法律案の概要を申し述べます。
第一に、国民の暮らしの安心を支え、地域住民の生活の向上を確保するために、郵便及び郵便貯金については、国の責任で全国的サービスを維持することとします。2007年10月1日以降の経営形態は、郵便は公社、郵便貯金は公社の100%子会社である郵便貯金会社とします。
第二に、2006年度中に郵便貯金の預入限度額を700万円に引き下げるとともに、2007年10月1日以降、定額貯金を廃止し、預入限度額を500万円に引き下げることとします。なお、旧貯金については郵便貯金会社に特別勘定を設け、公社の委託を受けて管理・運用を行うこととします。
第三に、2007年10月1日以降、簡易生命保険は廃止することとします。なお、旧契約については、公社の子会社として保険業法に基づき2つ以上の郵政保険会社を設立し、これらの会社との間で再保険契約を結ぶこととします。そして、各郵政保険会社の株式は、2012年9月30日までにすべて売却し、完全民営化することとします。
第四に、郵政改革とあわせ、特殊法人・独立行政法人等の抜本的改革を進めることとします。その一環として、国債と財投債を明確に区別するための措置を講じた上で、公社及び郵便貯金会社、完全民営化までの郵政保険会社による財投債・政府保証債・格付けのない財投機関債の購入を禁止することとします。
第五に、2007年10月1日以降、公社の役職員は非公務員とするとともに、天下りを制限することとします。
内閣提出の郵政民営化法案が公的部門のさらなる肥大化と民業圧迫を招くものであるのに対し、私たちの案は、郵政事業における国民の権利を保障し、かつ確実に公的部門を縮小し、民間経済を活性化します。どちらが真の改革の名に値するかを、私たちは今後の論戦でお示ししていきたいと考えます。議員各位のご賛同をお願い申し上げます。
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