衆議院予算委員会は1日午前、内政問題について集中審議を行い、民主党・無所属クラブからはトップバッターとして岡田克也代表が質問に立ち、経済見通しと定率減税の縮減、年金制度抜本改革、政治倫理の問題を取り上げて、小泉首相の見解を厳しく質した。
まず岡田代表は、経済見通しと定率減税の縮減の問題について、「分かりやすく言えば、所得増税」だとして議論を展開。来年度の経済見通しに触れて、なぜ消費は確実に増加すると考えているか、首相に根拠を質した。首相は、「景気回復が家計部門に波及する動き」などを述べたが、岡田代表は、「希望的観測ではなく、きちんと言えるかどうか」が問題だとした。そして、「景気は、一部は良くなっているかもしれないが、全体としては非常に苦しい」として、「労働分配率が下げ止まり、消費が確実に良くなるとは言い切れない」と指摘し、首相に見解を求めた。首相は「全体として明るくなってきた」などの見方を示した。
岡田代表はこうした首相の認識に対して、「あまりにも楽観的な見通し」だとして、「所得税増税のために敢えてそういう言い方をしているのではないか」と指摘。「増税だけが先行することは、消費を大いに冷やすことになる」と主張した。その上で岡田代表は、橋本内閣の時の9兆円の国民負担増で景気が失速した例を取り上げ、首相の認識を質したが、首相は「当時の状況と違う」などとした。岡田代表は、「今はまだ楽観できる状況にはない。従って所得税の全体の見直しの中で定率減税の問題も議論していくべきだ」と主張。「景気が失速すれば内閣総理大臣としての責めを負うことになる」と、首相に厳しく釘を刺した。
続いて岡田代表は、先日の党首討論においても主張したように、「国民が最も不安に思っている年金の問題について、しっかりと骨格をつくるべき」だとして、まず年金制度の抜本改革を先行して議論していくことについて見解を求めた。これに対して小泉首相は、「そういうつもりで答弁していた」とし、「年金一元化から議論しましょうということに何の異論も申し上げるつもりはない」と答弁。社会保障制度全体の議論の中で、年金の抜本改革について、まず先行して議論するとの意向を示した。
岡田代表は、政治倫理の問題についても言及し、政治資金規正法に、いわゆる指名献金・迂回献金を禁止する規定を置くことに異論はないはずだ、と指摘。関係の委員会、与野党で協議して国民の不振を取り除くべきだ、として首相の認識を質した。首相は、「政治の公正な活動のために建設的な議論を」などとした。政策活動費についても取り上げた岡田代表は、政治資金規正法の趣旨から逸脱しているとして、一定の規制をかけるべきとした。これに対して、「どの程度の許容範囲を与えるかについても、よく議論する必要がある」とした首相は、「寄附する人が非常に迷惑を受けている」として、規制に逆に苦言も呈した。
岡田代表は、国民の間に「今ある不信感を取り除くために、迂回献金の問題と政策調査費の問題に優先的に取り組むべきだ」として、政治資金規正法改正の必要性を改めて強く主張。その上で、旧橋本派の1億円ヤミ献金問題に絡み、元会計責任者や日歯連関係者の法廷での証言などを取り上げて、「ますます疑惑は深まってくる」とし、「私たちが求めている証人喚問が実現しないというのはどういうことか」「党の問題でないということで切り捨てて、総理が責任を逃れることはできない」と迫った。首相は、「各党の合意をどのように具体的な形で決着させるか、協議の結果を見守りたい」などとした。
岡田代表は、小泉首相の相変わらずの後ろ向きの姿勢に対し、「合意を実現するために重要なことは、自由民主党が前向きになること」だと断じ、「小泉総裁が、疑惑を解明するとはっきりこの場で言えば話は前に進む、それを言わないから話が止まっている」と指摘。「疑惑解明のために証人喚問をはじめ必要な措置をとると、はっきり国民の前で言っていただきたい」と厳しく迫った。首相は「お互い率直に意見を交換して、この問題に対して良い結論を出してもらいたい」として、消極的な姿勢を崩さなかった。岡田代表は最後に、「他人事ではなくて自民党総裁としての責任をもってやっていただきたい」と指摘して、質問を締めくくった。
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