参議院予算委員会で15日、公聴会が開催された。午前中、公述人として三菱証券理事・チーフエコノミストの水野和夫氏らが、「財政・税制、財政・経済」をテーマに、特に景気の現状と見通しについて、詳細な資料をもとにした分析を踏まえて発言した。
続いての質疑では、民主党・新緑風会から大塚耕平参院議員が質問に立った。大塚議員は冒頭、プライマリー・バランスがどの時点で均衡するかの問題に触れ、金利と成長率の関係に言及。2008年から09年に、成長率より金利が高くなるという内閣府の見通しに対して感想を求められた水野公述人は、「非常に難しいと思っている」とした。大塚議員も、人為的にではなく、「自立的にそういう状況が起きると(政府が)言っているところに問題がある」と指摘した。また、大塚議員の歳出に関する指摘に対して水野公述人は、「マクロ経済政策、総合経済対策は、従来に比べると非常に効果がなくなっている」と大塚議員の見方にほぼ同意する見解を示した。最後に大塚議員は、定率減税縮減と低金利政策に整合性がないことを指摘して質問を締めくくった。
午後、続行された公聴会では、村田晃嗣同志社大学法学部助教授らが「外交・防衛」をテーマに見解を述べた。村田公述人は、主に日米外交について見解を述べ、従来から指摘されている経済力と軍事力のギャップよりも、経済力と文化・情報発信力の間のギャップが大きいのではないかという考え方を示した。
村田公述人らへの質疑には、民主党・新緑風会からは、榛葉賀津也参院議員が立った。榛葉議員は質疑の冒頭、村田公述人が米外交のキーワードとしてあげた「おごりと不安」について、「日米同盟ということばが多用されるが、おごりをいましめ不安を取り除く、それが真の同盟国」だとコメントし、主としてイラク情勢について、公述人に見解を質した。
イラク戦争について、米国との関連で、20世紀冒頭の米西戦争を思い起こすとした村田公述人は、フィリピンでの反乱鎮圧に、米国は14年を要したと説明。イラクの安定・復興には、まだ日を要するとの見解を示した。榛葉議員が更に「米国がイラクについて政策の柔軟性を取り戻すにはどうすればよいか」などと、イラク問題への対応を質問したのに対し、村田公述人は、「米国外交は時として大きく変わる可能性を秘めるが、日本外交は過去、対応しきれないことがあった」と指摘。ソフトパワー(文化・情報発信力、魅力)を高めることは長期的に外交にとって大事だとして、地域専門家を日本で育成し、文化外交に配慮する重要性を語った。
続いて、「教育・子育て・青少年問題、環境」をテーマに質疑が行われ、杉並区和田中学校長の藤原和博氏らが公述人として発言した。
藤原氏はまず、公立中学校を活性化する二つの策として自らが和田中学校で実践してきた「世の中科」と「地域本部」の二つの取り組みを提示。「世の中科」ではハンバーガーショップの店長、市長の立場での街づくり計画、少年犯罪裁判での弁護士といったロールプレイを繰り返すなかで、学校で学んだ知識をどう活かせば世の中で役立つ知恵と技術になるかを習得する機会となっている。また、区長や区議会議員を呼んで「自転車放置問題」等を議論する機会も設定。藤原氏は「身近な経済、身近な政治、身近な現代社会の諸問題を学ぶことになる」と述べ、それによって知識を活かす方法を習得すると同時に、世の中に積極的に関わる子どもたちの育成につながるとの見方を示した。
また、藤原氏は「地域に学校を開いて地域の人のエネルギーを学校に入れてくれば、いろんな問題が解決する」として、「地域本部」の取り組みを紹介した。元PTAの役員が司書代わりをつとめる図書室、地域の若手を中心とするコンピュータ指導、教職員になりたい大学生が先生をつとめる土曜寺子屋などが実践されている。
こうした発言に対し、民主党・新緑風会から鈴木寛参院議員が質問に立ち、「中学生とはどこまで伸びうるものか」として、世の中科を通じた和田中学校の学生の変化について質した。藤原氏は「人間の社会ではなぜ差別が起こるかといった卒論がてらに出す質問にも、45人のうち3分の2以上が自分の考えを書けるようになる。リアルなことを教え、大人といっしょに考えさせるなかで一皮向ける」と述べ、4年間の実績がそれを証明していると発言した。
また、藤原氏が重視する情報編集力の育成を通じての成果として「学力を含めて生きる力がついているか」と鈴木議員が質問したのに対して藤原氏は基礎学力の底割れを防ぐことに繋がっている現状を示すと同時に、「情報編集力に関するチャレンジを通じて、学力的にきびしい子どもたちにも自己肯定感を持たせる機会となっている」とした。
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