午前中に引き続き、衆議院総務委員会において、NHKの2005年度予算案・事業計画に関する集中審議が開催された。民主党・無所属クラブからは、大出彰・山花郁夫・西村智奈美各衆院議員が質問に立ち、NHKをめぐる様々な問題についてNHK側の姿勢などを質した。
大出議員はまず、番組内容の事前説明について、これを行うべきか否か、NHKの橋本会長を質した。橋本会長は、外部からの介入の余地があってはならないとし、伺いを立てるような姿勢は望ましくない、などとした。大出議員は更に、問題となった2001年1月30日に放送された「ETV2001」が放送に至る経緯について追及。特に、事前に説明を行ったか否か、編集に至る経緯などについて、詳しく質問を行った。大出議員は、事前説明は止めるべきであると主張するとともに、「真実を報道するのが報道の役目だ」と指摘して質問を締めくくった。
続いて山花議員が質問に立ち、昨年12月にNHK副会長が会長会見の場で、受信料の未払いについて、これくらいの額なら吸収できるとの発言があったことを指摘し、懸念を表明した。NHKの和崎理事は、誤解を与えたが申し訳ない、などとした。山花議員は続いて、商業主義との距離感をどう考えるかをテーマに質問。特別協賛金を集めてまで開催されたプロジェクトX展などの例も取り上げ、「イベントをやるのにあたって、NHKが主催者になるのは好ましくない」などとした。出田理事は、「NHKのイベントはあくまで文化事業だ」などと答弁。山花議員はさらに、ラグビー日本選手権の中継をめぐり、公正中立であるべき審判のジャージに広告が入っていたことなどを理由として、生中継を一時録画放送にしようとしたNHKの動きを例に挙げ、公共放送と広告をめぐる論点を挙げて見解を質した。
次に質問に立った西村議員は、まずNHKの「番組基準ハンドブック」について、英国のBBCではプロデューサーズガイドラインが全てホームページ上で公開されていることを挙げて、その公開を迫ったが、出田理事は、「あくまで部内用の資料として編集している」などとして公開を拒否した。西村議員は、視聴者の目に番組制作のガイドラインを明らかにするべきだ、と更に指摘した。西村議員はさらに、番組の事前説明については報告を義務づけるようルール化すべきと提案。宮下理事は、「事前説明は視聴者の皆さんにもやっていること」などとし、西村議員は、「NHKが視聴者の皆さんから信頼を得られるかどうか、今、本当に重要な岐路に立っている」として、「本当にやる気があるのか。NHKが視聴者の方を見ているのかどうか、皆さんは見ている。その数字が受信料の拒否に表れている」と厳しく指摘した。
質疑終了後に討論が行われ、民主党・無所属クラブから高井美穂衆院議員が、NHKの2005年度予算案・事業計画を不承認とする立場から発言。高井議員は、「視聴者からの信頼を、一連の不祥事と、それに対する経営陣の不誠実な対応により、NHKが自ら裏切ってしまった」と指摘するとともに、「番組改編問題においても、NHKは政治家への番組内容の事前説明を、通常業務の範囲内であると繰り返し述べ、公正中立な公共放送の存在に疑問符が付くような対応を行った」と断じた。そして民主党が、「NHKの信頼回復への取り組み姿勢をみきわめるため、賛否を白紙のまま本日の審議に臨んだ」ことを明らかにし、「しかし審議を振り返れば、経営改革への動きは全く鈍く曖昧であると言わざるを得ず、これで国民の信頼を勝ち得るとは到底思えない」と厳しく指摘。「民主党は、日本放送協会に対して、国民の立場に立ち、警鐘を鳴らすためにも、「放送法第37条第2項の規定に基づき、承認を求めるの件」に対して、敢えて不承認の立場をとる」と明言した。
討論後の採決では、与党の賛成多数でNHK予算案・事業計画は承認された。
|