参議院本会議は18日、「国の補助金等の整理及び合理化等に伴う義務教育費国庫負担法等の一部を改正する法律案」に関する審議を行い、民主党・新緑風会の水岡俊一議員が質問に立った。
水岡議員は「質問に入る前に一言申し上げる」と前置きし、義務教育の根幹に関わる義務教育費国庫負担制度に関する衆議院文部科学委員会での審議で、参考人招致をめぐって民主党が推薦した参考人を拒否し、委員長が職権で参考人質疑を中止するという前代未聞の暴挙に出た自民党に対し、「あってはならないこと」と断じ、断固抗議する姿勢を示した。
続いて、2月14日に大阪府寝屋川市立中央小学校で起こった少年による教師殺傷事件に言及し、学校の安全確保に向け、文部科学省が多少の防犯装置・施設の補助は行っているものの、基本的には通達行政に止まっている現状を水岡議員は深刻に受け止め、「今や専門の保安職員を配置するなどして、不審な外来者に対し対応するといった方途がどうしても必要」と指摘。中山文部科学相に対し、「学校の保安要員等を配置するお考えはないのか」として、学校の総合的防犯安全対策として「学校安全法」を策定するか質した。中山文科相は「各学校の設置者において実情に踏まえて適切に対処していく必要がある」とする姿勢を示すだけで、法策定の姿勢は明確に示さなかった。
水岡議員はまた、OECD(経済協力開発機構)によるPISA(学習到達度調査)の結果、IEA(国際教育到達度評価学会)の調査結果で日本の子どもたちの順位が落ちた問題に言及。それを受け、「学力低下」を声高に叫び、「競い合う心、切磋琢磨する精神」を強調しながら、学力テストの実施や総合的な学習の見直し、土曜日の授業復活などの発言を繰り返す中山文科相に対して水岡議員は、今回の調査結果が示すものは、従来の暗記・詰め込み型から生きる力の習得への転換といった、思考力や判断力、問題解決能力を育てることが最も重要であり、まさにゆとりの中でじっくり考えさせる教育や総合的な学習を求めていくべきだという方向性に他ならないと指摘。ゆとり教育の成果が芽を出そうというこのときの「先祖がえり」とも言える方針転換は、愚の骨頂だと批判した。同時に、学習指導要領の見直し内容がまだ示されないうちに、ゆとり教育や総合的な学習の見直しを中山文科相が発言することで、学校現場は混乱を来している状況も問題視し、「目先にとらわれず、冷静で的確なメッセージを」と文科相に釘を刺した。さらに、教育費における公の財政支出のGDP比が世界最低の日本が3・5%なのに対し5・7%となっているフィンランドがPISAで総合一位となったことに言及し、「見習うべき」と指摘した。
そうした指摘を踏まえて水岡議員は地方自治体の財政状態の格差や保護者の経済力によって、教育の機会均等が失われている現状を指摘。その上で「今日の教育の格差問題はゆゆしき事態であることは誰の眼にも明らか」とする見方を示し、「義務教育費国庫負担」の考え方が現実的に機能しているのか再検討すべきだと指摘。同時に「改正法案によって、さらに義務教育費国庫負担の本来の意義がまた大きく揺らいでいる。地方分権の名のもと、財政再建の単なる数字合わせに巻き込まれ、教員の給与費の一部を負担金削減の中に盛り込むような、今次の改正案には、断じて賛成しかねる」と表明した。
水岡議員はさらに、中教審の見解を待つとされている暫定的に4250億円を一般財源化する案について、小泉首相は「中教審の意見を踏まえて協議していく」とし、麻生総務相は「地方の改革案が適切に生かされる形で中教審の結論が導かれる」とし、中山文科相は「暫定措置は中教審の今後の検討を制約するものでない」と述べるなど、内閣不一致に他ならない実情を指摘。統一見解を示すよう細田官房長官に求めた。それに対して官房長官は「政府一丸となって取り組む。バラバラとの指摘は当たらない」などとするだけで、明確な答弁を回避した。
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