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2004/06/15
小泉内閣不信任決議案提案理由説明
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衆議院代表質問

小泉内閣不信任決議案提案理由説明

民主党代表 岡田 克也

私は、日本共産党、社会民主党・市民連合、そして民主党・無所属クラブを代表し、ただいま議題となりました小泉内閣に対する不信任決議案について、提案理由を説明します。
まず、決議案文を朗読します。

 本院は、小泉内閣を信任せず。
右決議する。

 以上であります。

小泉内閣が発足して、三年二ヶ月が経過しました。当時、いままでの自民党出身の総理には見られない、小泉総理のユニークな言動に国民からも期待が寄せられました。しかし、その期待は大きく裏切られました。私自身もかつて小泉総理に多少の期待をしたものとして、いま自らの不明を恥じています。
日本国総理大臣の地位は極めて重いものです。過去の歴史を振り返っても、総理大臣の間違った決断によって日本が戦争への道を歩み始めたこともありました。国民一人一人がどんなに一生懸命頑張ったとしても、その国民の生活や生命さえも大きく左右しかねないのが総理大臣の決断です。最近の小泉総理は内閣総理大臣の職責の重さというものを、どれほど自覚されているのでしょうか。小泉総理の言動を見ていると、小泉総理には日本国総理大臣としての二つの点の資質が決定的に欠如しています。

以下二点指摘します。

まず第一は実行力の欠如です。小泉総理の約束したことがほとんど実現していません。その決定的原因は小泉総理のリーダーシップのなさにあります。自民党に対する指導力の欠如は目を覆わんばかりであり、昨年の二度目の自民党総裁選挙後、決定的になりました。いまの総理は自民党族議員と談合しつつ、政策決定しているに過ぎず、国民の期待からはかけ離れています。自民党によって総理の発言が公然と無視されることも、いまや当たり前のことになりました。「今国会中に国会議員年金を廃止する」「国民年金を含めた年金一元化が必要だ」などの総理の発言も自民党内で全くかえりみられることはありませんでした。「あれは総理が言っていることですから」との自民党幹部の突き放した発言は、総理のおかれた状況をよく表しています。官僚との関係も当初の期待を全く裏切っています。いままでの総理以上に官僚主導で政策決定されているいまの姿は、心ある官僚からも総理は政治のリーダーシップを発揮してほしいとの声が挙がるほどひどいものです。私は小泉総理にいまこの国が置かれた状況に対する危機感、未来世代に対する責任感、いま何をなすべきかという明確なビジョン、いずれも欠けているようにしか見えません。総理として何をなすべきか、ということが自らわからなくなっている小泉総理にこの国を任せておく訳にはいきません。

小泉総理の第二の問題は国民に対して、説明責任を果たしていないということです。その姿が典型的に表れるのが国会質疑です。先日も決算行政監視委員会における私の質問に対し、正面からお答えになることはありませんでした。かわし答弁、はぐらかし答弁、開き直り答弁を繰り返す総理は質疑を聞いている国民に対し、まじめでないと思います。単に質問者をやり込めたり、かわしたりすればよしとするのではなく、国会での質疑を通じて国民が理解し、納得できるよう答弁すべきです。総理大臣の決断は日本の将来や国民生活そのものに直結しています。総理大臣の座は極めて重いものです。だからこそ、きちんと説明責任を果たすことが求められているのです。国民に対し、率直に語り、国民の納得と共感を得ようと努力する姿勢が小泉総理にはあまりにも不足しています。小泉総理にとって国民とは、メディアを使って操作すべき対象にすぎないのではないかとさえ思ってしまいます。私が内閣総理大臣であれば、例えば短期的には国民にとって厳しいことであっても、正直に率直に国民に対し語りかける総理でありたいと思います。自らに誤りがあれば率直に認める総理でありたいと思います。国民に対して説明責任を果たそうとしない小泉総理にこの国を任せておく訳にはいきません。

以下、具体的に不信任の理由を説明致します。









第一に平和の問題です。

総理は大義なきイラク戦争を支持したことについて、いまだに説明責任を果たしていないのみならず、開き直ったままです。攻撃の理由とされた大量破壊兵器は発見されていません。アメリカからの情報を鵜呑みにして、安易にイラク戦争を支持した小泉総理の判断力の欠如は厳しく指摘しなければなりません。また、武力行使は国連の決議に基づいた場合にのみ、正当化されるという国際ルールに対し、公然と異を唱え、先制攻撃を正当化するブッシュ大統領に安易に追随したこと。そして、戦争が多くの罪なき人の命を奪うという重い現実を直視することなく、戦争支持を行ったことなど、総理の責任は極めて重大です。
イラクの治安は悪化の一途を辿っています。今後改善される具体的見通しはありません。イラク特措法が規定する「非戦闘地域」は存在せず、自衛隊が活動できるだけの法律上の要件は満たされていません。それにもかかわらず、総理は新たに採択された国連決議1546号を契機に、イラク特措法を根拠に、初めて多国籍軍に参加することを表明しました。多国籍軍への参加という日本国憲法の根幹にかかわる問題を、新たな立法を行うどころか、国会における審議を何ら行うことなく決定しようとしていること、それも国民に対し説明する前に、ブッシュ大統領に約束したことは日本国総理大臣としての最低限の説明責任すら果たしていない暴挙であり、到底認めることはできません。なし崩し的に自衛隊を多国籍軍に参加させることに断固反対します。イラクからの自衛隊の速やかな撤退を求めます。
小泉総理の外交の特徴は「日米同盟あって国際協調なし」であり、このままでは日本は米国とともに国際的に孤立の道を歩むことになりかねません。国連憲章の理念と米国ブッシュ政権の単独主義の根本的対立という戦後60年間で最大の危機に世界が直面しています。小泉総理には、いま世界は大きな転換点にあるという認識も洞察力もありません。外交ビジョンを持たない小泉総理に、この国を任せておくわけにはいきません。


 第二に改革の決定的な遅れです。

 構造改革とは、右肩上がりの、高度成長を前提に成り立っている我が国の社会・経済の構造を、根本的に転換することによって、経済の再生を図り、国民生活に安心をもたらし、将来への展望や夢が持てる社会を構築していくことです。しかし、小泉内閣が誕生してから既に3年あまりを経過し、我が国の閉塞感が払拭できたでしょうか。国民が安心して生活できるようになったでしょうか。本当の改革は一歩も進んでいません。小泉総理は、「改革、改革」と叫び続けていますが、実際は「改革の遅れ」というよりも、「放置」にも近い状況です。その中で、国民は将来への展望も抱けないまま、日々の生活の中で不安を増大させているのです。いくつかの具体例を挙げます。

まず道路公団改革です。これは小泉構造改革の看板の一つとされていましたが、全くの期待はずれでした。今回成立した民営化法は、全く改革の体をなしていません。小泉総理は予算委員会での私の質問に答えて、道路公団民営化の最大の目的は「無駄な道路は造らないことだ」と答弁しましたが、その担保は全くありません。逆にいわゆる9,342kmの整備計画はおろか、予定路線の11,520kmまでつくりかねない内容となっています。いったい何のための民営化だったのでしょうか。小泉総理は、この法案の成立時に「画期的な改革」だと自画自賛していますが、同じ思いを共有する国民は皆無ではないでしょうか。今回の成立した民営化法では、野放図な道路建設を継続することは明らかであり、そのツケは結局国民にしわ寄せされるのです。看板だけの改革は、国民に世界一高い料金の高速道路と天文学的な借金を残すことになりました。

次に地方分権、いわゆる三位一体改革も全く進んでいません。小泉総理が行っているのは単なる地方切り捨てにすぎません。全国の知事、市町村長の声が小泉総理には聞こえないのでしょうか。わずか6,500億円の、しかも自由度の少ない項目に関しての税財源移譲と4兆円の財源削減では話になりません。知事会はじめ全国の地方議会、地方自治体の長が強く批判しているのも当然です。
私は地方には力があると確信しています。しかし、その力が発揮できないようにしているのがいまの中央集権の仕組みです。思い切った税財源の移譲による地方分権の実現は地域活性化の切り札です。しかし、小泉総理には地方分権を族議員や官僚の反対を押し切ってでもやりぬくという熱意、責任感を感じることはできません。

加えて政治改革も進んでいません。政治とカネの問題は、政党のトップがその気になれば、かなり改革することができます。私は民主党幹事長として、監査法人による外部監査の導入や収支報告書のホームページでの公開などを行ってきました。一方、自民党は政治とカネをめぐる疑惑事件が次々とおこりました。しかし、小泉総理は結局何の改革も行ってこなかったのです。政治に対する信頼を取り戻すための改革を行う意欲は全く感じられません。これでは政治不信が高まるばかりです。
第三に年金問題への不誠実な対応と抜本改革の先送りです。

 年金は老後の生活保障であり、生活の最後の支えです。国民にとって大きな関心事であることは当然です。その年金制度の根幹がゆらいでいます。少子高齢化の進展はいままでの若い世代の保険料で高齢者の年金をまかなうということを不可能にしつつあります。国民年金制度は4割の人々が保険料を支払わず、事実上破綻しています。そういう深刻な状況の中で100年安心プランとしてでてきた政府案はお粗末なものでした。
特に給付水準の下限を50%に固定するという政府の当初の説明は審議を進めるうちに、すべての人に保障されるのではなく、夫婦共働きや独身者の場合には当てはまらないこと。また、いつまでも保障されるのではなく、65歳では50%でも、その後75歳で45%、85歳で40%とその比率は落ちていくことも明らかになりました。小泉総理は我々が採決を急ぐ政府与党の動きを止めようとしたことを取り上げて、野党が審議拒否するから説明できなかったと開き直りました。しかし、本来は政府が国会審議を先立って国民に対し、説明すべきだったのです。小泉総理の発言は国民に対し、誠実さを欠いています。
法案が前提としていた出生率についても、法案成立後1.29という数値が発表になりました。わざと発表を遅らせたのではないかとの疑念すら指摘されています。また、数年すれば見直しは避けられず、これでは5年ごとの見直しと何ら変わりません。
 参議院厚生労働委員会では理事会で合意している野党の質問時間を打ち切ってまで、そして小泉総理が委員会出席中に採決を強行しました。7割の国民が政府案は成立させるべきでないとしている中での、いままでに先例のない暴挙でした。小泉総理が総裁をつとめる自民党は、とうとう最後まで国民年金の納付状況を発表しませんでした。国民の年金制度に対する信頼を回復しようとの努力は全くなされませんでした。
 参議院選挙に向けて、自民党や公明党のマニフェストには、年金制度の抜本的改革の方向性が示されていません。自営業者のための国民年金も含めた一元化は総理自らが発言したわけですから、責任を持って自民党を取りまとめるべきことは当然です。年金制度の安定性確保のための消費税投入については、どう考えているのでしょうか。これらの点について方向性すら示さずに参議院選挙を戦おうというのであれば、それは小泉総理が将来にわたり抜本改革に取り組む意思と能力がないことを表すものです。にもかかわらず、抜本改革の必要性や政党間協議に言及することは笑止千万、見え透いたアリバイ工作であり国民をあざむくものです。
 いま国民の間には、小泉総理のすすめた年金改革の中味、審議のやり方、国民への説明責任のいずれについても、大きな怒りが渦巻いています。今回の年金改革は撤回し、持続可能な抜本改革をなんとしてでもやり遂げなければなりません。小泉総理ではその実現はできません。

 以上、小泉総理の問題点を具体的に指摘してきました。改めてもう一度申し上げると、総理の資質という視点からは、第一に実行力が欠如していること、第二に国民に対し説明責任を果たしていないということ、そして具体的政策の視点からは、第一に平和の問題について大きな誤りをおかしたこと、第二に改革が決定的に進んでいないこと、そして第三に年金の抜本改革の先送りです。本来であれば小泉総理は即刻自らが辞任すべきところです。総理に辞任の意思がないのであれば、本院の名において不信任することが最善の手段と考えます。以上申し述べたことが本院が小泉内閣を不信任する理由です。議員の皆さんが良識に立ち返り、本決議案を採択されることを要請し、提案理由の説明を終わります。

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