民主党憲法調査会会長
枝野 幸男
私は、憲法記念日にあたって、日本国憲法の持つ意義を改めて深く噛みしめるとともに、新しい時代に向けて建設的な憲法論議を進めていくことの重要性を強く感じています。現行憲法は、半世紀以上の年月を経る中で日本国民の間に強く定着し、国民生活の社会的・政治的・精神的な共通の基盤となっています。私は、戦後日本の平和と安全、経済的繁栄と民主主義を創り出してきた日本国民の計り知れないエネルギーもまた、この憲法を一つの土台として生まれてきたと受けとめています。
さきごろ、衆参両院の憲法調査会の最終報告書が作成され、公表されました。この五年間の熱心な憲法論議の成果です。報告自体は、何かを決定したというものではなく、今後の本格的な憲法議論のための素材を提供したというものにとどまります。しかし、与野党を超えて論点を明確にし、報告としてまとめることができたのは、まさに画期的なことです。とりわけ、日本国憲法の根本規範たる「国民主権」「基本的人権の尊重」「平和主義」の3つについて、今後とも大切にしていくとの合意を得たことは、わが国における憲法論議の足場が定まったという点で、きわめて大きな意義があると考えます。
しかしその一方で、わが国では最近、憲法の形骸化・空洞化を推し進めようとする動きが目立っています。時の政府の都合に合わせて解釈変更を繰り返し、既成事実を積み重ねていくやり方は、国民の憲法不信を招き、国際社会からの信頼を損ねるものともなっています。憲法をないがしろにするこの政治の現状は、早急に改めねばなりません。
民主党はすでに党内に憲法調査会を設けて、幾つかの報告を公表しています。そして、本年は国民の皆さんと憲法対話を推し進めていくための「憲法提言」に向けた議論を進めています。憲法を改正するとしても、国会議員の3分の2以上と、国民の過半数の賛同がなければ実現し得ません。独りよがりの意見を発表することではなく、国民の多数が納得でき、国会議員の大多数が合意できる道を模索しなくてはいけないのです。
憲法をめぐる本格的な議論はまさにこれからです。私たちはいま、この国の憲法についての国民的な議論のスタート地点に立ったばかりです。幸い、憲法について自由に議論することをよしとする新しい風が生まれつつあります。その自由闊達な憲法論議を経て、私たちの憲法が日本国民と世界の人々の幸福につながるものとなることを心から念願し、そのための役割をしっかり果たしていくことを、憲法記念日にあたって改めて決意します。
以 上
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