「就学前の子どもに関する教育、保育等の総合的な提供の推進に関する法律案」いわゆる「認定こども園法案」を議題に衆議院本会議が6日開かれ、民主党・無所属クラブの高井美穂議員が質問に立ち、安倍官房長官はじめ関係大臣に答弁を求めた。
高井議員は冒頭、子育て中の親の一人としてお願いしたいとして、子どもの目線に立って法案を自らのものとして慎重に審議してほしいと前置き。同時に、「夫は仕事、妻は家事」という性役割が実現できなくなっている現在、従来の「男性稼ぎ主型」の生活保障システムから脱却して、「両立支援型」「ワーク・ライフ・バランス型」に転換していくべきだと問題提起し、保育サービス、児童手当、育児休業、高齢者介護サービスなど家族支援制度の充実が不可欠だとの見方を示した。
「こども園」は、一番に子どもたちのために、そして、若い世代の両親が安心して社会に出るために、さらに働く職員が誇りと自信を持って仕事ができるような制度にすべきだとの考えも高井議員は表明し、猪口少子化・男女共同参画担当相に見解を質した。猪口大臣は「働き方の見直しや仕事と家庭や育児の両立支援、男女共同参画の推進等を通じて、男性も女性も共に能力を発揮できる環境を整備するなかで、子育ての喜びを感じながら働き続けることができる社会の実現が重要と考える」などと答弁するだけで、具体的な姿勢は示さなかった。
高井議員はまた、今回の「こども園」は、いわゆる「骨太方針第3弾」に突如として盛り込まれたもので、省の縦割り支配をそのまま残した「政治的妥協」の産物だと批判。昨年から実施してきた「子ども園」型の総合施設モデル事業の最終報告がとりまとめられる前に、中途半端な法案を出す理由は何か、安倍官房長官に質したが、長官は「文部科学省と厚生労働省の両省が閣議決定の方針に従い、総理のリーダーシップのもと、人事交流も含めて検討し、提案に至ったもの」などと答弁するだけだった。
続いて、文部科学省所管の幼稚園、厚生労働省所管の保育所が「子ども園」となって併存することは、縦割り行政の弊害であり、利用者の利便軽視の典型だと分析して、民主党がかねてから提案してきた「こども家庭省」を創設し、将来的に幼稚園及び保育所の制度や機能を統合し、「こども園」に統一していくべきであると主張。そのうえで高井議員は、「こども園」の将来像について、小坂文科相及び川崎厚労相に質問した。
小坂文科相は将来像について、「既存の幼稚園・保育所制度の運用では対応困難な多用なニーズに対応するため、地域の実情に応じ、利用者のために新たな選択肢を提供しようとするもの」などと答弁。今後、本制度の積極的な活用によって就学前の教育・保育機能の充実が図られるなどとし、厚労相も同様の認識を示した。
同時に高井議員は、幼保連携型、幼稚園型、保育所型、地方裁量型など、多様な形態の施設がこども園として認定されるにあたり、質の保証は担保できるのか、文科相及び厚労相に答弁を求めた。同時に、幼稚園教諭や保育士さらにはカウンセラーなどの専門家を含む人材確保のあり方を質した。
文科相は、「認定基準は地域の実情に応じた認定を可能にするため都道府県が定めるものとして、国は質の保証の観点から認定基準に関する指針を示す。この国の指針においては、現在の保育所・幼稚園の基準を基本とし、質の保証に配慮したうえで一定の弾力的な取り扱いを規定する」と答弁した。職員育成について文科相と厚労相は、教育・保育の質の保証の観点から、0〜2歳児については保育士資格、3〜5歳児については保育士資格と幼稚園教諭免許を併用させることになると答弁。カウンセラー等の人材確保については、地域の多用な人材の活用や専門機関等との連携・協力を促して行くと答弁した。
高井議員はさらに、待機児童の問題について厚労省のデータをもとに高井議員は、「2004年が2・4万人、05年は2・3万人と、依然として解消されていない」と指摘し、待機児童の解消への政府の取り組みが無意味だったのではないかとの見方を示した。
最後に高井議員は、文科省と厚労省の省益争いや幼稚園、保育所の既得権争いに翻弄されることなく、子どもにとって良い環境を提供するという視点に立った条件整備を行っていくことが不可欠だと改めて主張。また政府に対して、場当たり的な対策ではなく、子どもへの優しい視線を持って、日本の未来を担う人間への投資を惜しむことなく、政府としての最低限の責務をきちんと果たしてほしいと強く求め、質問を締めくくった。
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