参議院郵政民営化に関する特別委員会で3日、金融を中心とした郵政事業についての集中審議が行われ、民主党・新緑風会から、大塚耕平、峰崎直樹、尾立源幸、櫻井充議員が、それぞれ問題点を鋭く追及した。
冒頭大塚議員は、公正取引委員会委員長に対して、郵政公社の民営会社への移行期間中も移行後も、形式的にも実質的にも独占禁止法第9条に規定されている「事業支配力の過度集中の規制」に抵触するのではないかと質問した。公取委員長は、移行期間中も移行後も、持ち株会社や郵便局会社が貯金会社や保険会社の株式の25パーセント以上を持っていれば独禁法9条に該当し、それらの会社が民間会社と同様の活動を開始した時点から同条の対象となると答弁し、民営化された場合の郵政各会社が独禁法の規制を受け得ることが確認された。また、議員の質問によって、子会社を経由した株式の保有も対象となることが確認された。
次に大塚議員は、鶴保議員の質問を踏まえて、「公私・官民」の役割分担について竹中民営化担当相と議論を展開した。純粋な公共財も純粋な私的財もないとの認識を踏まえつつ、公社化は絶妙の選択であったと評価し、民営化された郵政各会社に多くの義務を課しつつ税制上の恩典を施すことと「民営化」との矛盾を指摘した。また、庶民が金融から排除される事態を起こさないようにする観点からも、民営化の問題を提起した。
大塚議員は、民間部門から政府部門へという資金の流れを変えることが民営化の目的であるとの担当相の答弁にもかかわらず、政府の資料からも政府部門への資金の流れが増えていることを指摘し、また民営化によって家計からの資金の入口が官から民に変わっても、出口は官であるという矛盾を指摘した。これに対して担当相は、財政赤字の問題がある限り抜本的な資金の流れの転換は困難であると答弁するのみであった。
大塚議員は再び金融排除の問題を取り上げ、年金の振込み手数料は被保険者ではなく社会保険庁が支払っているとの厚生労働相の答弁を捉え、社会保険庁の経費が保険料で払われている以上被保険者の負担であることを鋭く指摘した。
大塚議員は、郵便局へのATM(自動貯金受払機)の設置について、民営会社への承継計画では何も決まっておらず、民営化の骨格試算では窓口会社に設置することとしている矛盾を衝き、何も決まっていないことを明らかにした。さらに、民営化にあたって重要な資産の評価方法についても何も決まっていないことを指摘し、民営化計画の危うさを明らかにした。
大塚議員は、生田郵政公社総裁からの民営化の最大の実務的問題はシステム移行問題であるとの答弁を踏まえ、経済成長を支えてきたスーパーサラリーマンがスーパーイエスマンになってしまったことが日本を官民ともにおかしくしていると指摘して、来年4月までの移行の危うさを浮き彫りにした。
最後に大塚議員は、民営化の際に旧勘定の貯金者などの権利義務に変化がないという担当相の答弁を捉え、通常貯金の貯金者が間接的に全体の預金保険料を負担する問題点が存在することを指摘しつつ、次回の質問に留保して、質問を終了した。
続いて質問に立った峰崎議員は、簡保が従来から責任準備金として積み立てた8兆4000億円に関して、民営化して民間の生命保険会社とイコールフッティングとするならば、民間への移行時に有税としなければ真の意味でイコールフッティングにならないとして政府の見解を質した。峰崎議員はまず、旧勘定にこの準備金が移ることを確認し、約20年の間取り崩せることになり、この間はイコールフッティングにならない、有利な条件となるとして「40%の税金を払うべきではないか」と質問。竹中担当相は「一度に支払うのは負担能力を超える。現実的ではない」と答えた。これに対して峰崎議員は「(税の部分の)3兆数億円を毎年引き当てたらいいのではないか」と提案した。これにも竹中担当相は「10年間でイコールフッティングを実現したいと思っている」と答えたため、峰崎議員は「納得できない」と反論したうえで、次の質問に移った。
峰崎議員は、郵政公社が分かれた5つの会社間では消費税を減免するとしていることを取り上げ、民間からの委託手数料には税金がかかり、ここでも不公平になるとして、「本当か」と質問。竹中担当相は「与党で検討・議論があり、政府与党一体なので、政府として見守りたい」と答えた。これに対しても峰崎議員は「こうした特例取引が広がれば財政も持たなくなる。非課税となったら大問題だ」と批判した。
次に質問に立った尾立議員は、社会・地域貢献基金、株式売却益の見通しに関して質問し、政府の見通しの甘さを批判した。
冒頭、尾立議員は郵貯が行っている国際ボランティア貯金に関して民営化されて継続をと訴えた。麻生総務相は「法律では廃止されるが、現在の民間銀行でも同じような商品が扱われており、できるのではないか」と実態としては継続できるとの考えを示した。
続いて社会・地域貢献基金について1兆円から2兆円積み立てるとしているが、「これは有税で積み立てるのか」と質した。竹中担当相は「非課税ではない」と答えた。次に株式の売却益をどの程度見込んでいるのかを質し、この売却益が無駄な公共事業などに流れることのないよう求めた。谷垣財務相は「特別会計に入るので、財政健全化につながる」と答弁した。次に尾立議員はNTT、JRの例を挙げ、すべての株式の完全売却、そもそもすべての会社が上場できるのか、その利益を充てるとしている社会・地域貢献基金がきちんと確保できるのかの見通しを質した。竹中担当相は「10年間の時間がある。その間担当大臣も置かれる。総合的に対応する」との見通しを何の根拠もなく示した。このため尾立議員は「楽観主義だと思う」と批判したうえで、1兆円までは無税で積み立てるべきではないかと提案した。
次の質問に立った櫻井議員は、先日の質問で留保となった中央省庁等改革基本法の官房長官答弁をまず求めた。細田官房長官は「国営の公社を作る際の法律で、これは実現されており、規範として残っているものではない。33条1項の各号の規程は法規範としてはその役割としては終えている」と答弁した。櫻井議員は「公社法の条文は生きているのか」と質問、官房長官は「生きている」と答弁。櫻井議員はそうすると、郵政公社法の1条の「33条1項に基づき」となっている部分の解釈はどうなるのか、基本法の条文が効力を失っているとしながら、この部分では生きていることになる、矛盾しているとして、確認を再三にわたって求めたが、官房長官の答弁が納得の出来るものではなく、しばしば審議は中断した。結局、櫻井議員は質問を留保した。
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