民主党は28日、犯罪を実行しなくても話し合っただけで罪に問われる「共謀罪」の新設を盛り込んだ組織犯罪処罰法などの改正案に反対する「監視社会にNO!4・28共謀罪反対集会」を国会内で開いた。集会には菅直人代表代行はじめ民主党議員のほか、市民約250人が詰めかけ、政府案、与党修正案を廃案に追い込もうと気勢を上げた。
「将来に禍根を残すことがないよう、この共謀罪法案は廃案に追い込まなければならない。そんな気持ちで集会をもたせていただいた。それぞれが自由に物をいい、批判をしっかりとできる社会をつくっていかなければいけない」と訴える千葉景子『次の内閣』ネクスト法務担当の司会のもと、まず経済評論家の森永卓郎氏が問題提起を行った。
森永氏は共謀罪の新設に反対する理由に関して、「政府は一般国民の心情までしばるものではないといい続けている。実際に、仮にこれができたとしても(法案成立)当時はそうなのだと思う。ただ、絶対もって(成立させては)いけないのは、小泉内閣の後に大きな禍根を残す可能性が極めて高いからだ」と語った。
続いて、小泉内閣は1920年代の日本と類似しているとの見方を森永氏は示し、激烈なデフレに襲われた浜口雄幸内閣が「明日伸びんがために今日縮む」というキャッチフレーズを掲げて総選挙に打って出て、国民は生活に困窮していたにもかかわらず圧倒的な支持を浜口雄幸に寄せ、勝利をもたらしたことに言及した。それは「小泉政権下で生活は悪くなった」と国民の大半が答えるにも関わらず、「しかし、それは小泉総理のせいではない」との答えも大半を占める現在に類似するとした。「この状況は、実はものすごく危険」「こうした国家総動員体制といった空気は残る」「空気が残るとき国は暴走する」とも森永氏は指摘。浜口首相亡き後、日本はすぐに満州事変に突入していったことを明らかにした。
そうした歴史観を踏まえ、小泉内閣後に戦争を是認する内閣ができたときに共謀罪がどう使われるか、規定があいまいなまま、拡大解釈の余地を残したまま成立してしまうのは危険だとする考えを森永氏は重ねて提示。「裁量を残したまま法律が通ると、戦争に反対する勢力は軒並みつぶそうと考える政権ができたとき、この法律は強力な武器になってしまう。一般市民がこれによって取り締まられる可能性が残されている限り、こういう法律は通してはいけない」と強調。「国民の最も大切な権利である心情、思想、発言、言論の自由を破壊しかねないこの法律を、国会で通過させないよう頑張ろう」と訴えた。
菅直人代表代行は「日本は監視社会に近づいている。その内容の怖さは政府案、あるいは与党案が通ると600にも及ぶ犯罪について共謀罪が成立してしまうことにある」と指摘し、「無限の拡大解釈が可能な法律になっている。この形で通すわけにはいかない」と強調した。同時に共謀罪を適用する対象について「組織犯罪集団」とはっきり明記した民主党修正案を提出していることを報告し、「この修正された中身であれば、極めて限定的だ」と分析してみせた。そのうえで「政府案、与党修正案は廃案に追い込む」と強い口調で訴え、「どうぞいっしょに頑張りましょう」と呼びかけた。
衆議院法務委員会筆頭理事として共謀罪の強行採決を阻止するため、終日政府・与党との厳しい戦いを展開してきた平岡秀夫衆議院議員も駆けつけ、委員会報告を行った。国会対策委員会同士の話し合いによって「強行採決はしない」という確認を得て質疑入りしたことを報告するとともに、「強行採決されたという報告をしないで澄んだことはうれしく思う」とも語った。同時に、連休明けの5月9日には参考人質疑が行われことになるとして、「連休中の戦いが大事。連休後には法案の問題点を審議から追及していきたい。政府案・与党修正案を廃案に追い込むよう頑張っていく」と力強く訴えると、大きな拍手が沸いた。
なお、集会には枝野幸男憲法調査会長、江田五月参議院議員会長、簗瀬進参議院法務委員会理事、松岡徹、那谷屋正義、前川清成各参議院議員、篠原孝、三谷光男両衆議院議員も参加した。また、ジャーナリストの櫻井よし子氏からも共謀罪成立に反対するメッセージが寄せられた。
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