18日午前、参議院本会議において会社法案の趣旨説明に対する質疑が行われ、富岡参院議員が民主党・新緑風会を代表して質問を行い、株主総会の形骸化や投資環境をめぐる問題などを鋭く指摘した。
最初に富岡議員は、会社法制の大前提として株式の公開による資本市場からの資金調達の有無によって公開会社と非公開会社を区別すべきであり、この資本調達形態の違いによって会社への規制も変わるべきであるとの観点から、会社法案における会社への規制の区分について質問した。これに対して南野法相は、会社法案では株式の譲渡制限の有無によって会社を区分していると答えるにとどまり、会社法制の大前提についての本質的な答弁は行わなかった。
次に富岡議員は、わが国においては安定株主の比率が高いことなどから、一般株主が経営者をチェックするための株主総会の形骸化がすすんでいる実態を示し、この問題の解決なくしては会社法は絵に描いた餅となると指摘した。これに対して法相は、安定株主の存在は直ちに株主総会の形骸化にはつながらないとの認識を示しつつも、今後とも必要な検討を行うと答弁した。また、富岡議員はこの問題点に関連して、株主総会が形骸化している現状ではコーポレートガバナンスのための取締役などの選任に対するチェック機能が働かないとの指摘を行ったが、法相は情報提供の強化などによって株主総会での判断材料を提供することで解決可能であるとの見解を示すのみで、問題の本質にかかわる答弁は行われなかった。
富岡議員は、現行法制の下では持株会社の株主が子会社の役員に対して多重的代表訴訟が起こせないことによる問題点を示して、企業結合法制の必要性について質問した。これに対して法相は、検討に値すると述べつつも、現時点では国際的にもまだ定着していない制度なので拙速な規制は避けたいとの消極的な答弁を行った。
富岡議員は、M&A(合併・買収)について、M&Aには企業価値を高める良いものとそうでない悪いものがあり、悪いM&Aに対しては防衛策を取れるようにすべきだとした上で、会社法案による防衛手段の導入条件緩和が一般株主軽視につながらないかおよび合併対価の柔軟化を1年延期するのは無意味ではないかと経産相に質問した。これに対して、前者については防衛策は平時に導入しておきその内容を公開しておくこと、後者については敵対的なM&Aにおいても用いられる可能性があるので防衛策導入のための猶予期間とするため、との答弁が行われるにとどまった。
富岡議員は、貯蓄から投資へとの政府の誘導方針にもかかわらず、投資環境の複雑さと情報の閉鎖性が続いている現状を取り上げ、金融担当相に質問したが、デスクロージャーの充実と金融改革プログラムの実施により対応するとの答弁であった。
富岡議員は、非公開会社における会計参与人に対して取引銀行などが連帯保証を要求すると十分に機能しなくなると指摘したが、個別の問題であるとの紋切り型の答弁が行われた。
制定資本金制度廃止および休眠会社の整理対象期間の12年間への延長によって、休眠会社が急増するとの富岡議員の指摘に対して、法相は役員に対する責任追及や法人格の否認で対応可能であると強弁した。
富岡議員は最後に、決算広告義務が履行されていない現状を改めるため罰則を厳格化するべきではと質問したが、法相は自主的に広告する環境づくりが必要と危機感のない認識を示した。
なお、富岡議員の参議院本会議における代表質問の際の議長席には角田副議長が座り、民主党選出の議員同士の珍しい組み合わせとなった。
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