参議院予算委員会で20日、民主党・新緑風会の若林秀樹・辻泰弘両議員が質問に立ち、郵政民営化、外交、イラク等の諸問題について、小泉首相をはじめ、関係大臣を質した。
最初に質問に立った若林議員は、まず郵政民営化関連法案に関して、中央省庁等改革基本法33条1項6号の問題に言及した。本法では、「民営化等の見直しは行わないものとする」と定めており、民営化を行うならば本法の修正法案をあわせて提出するのが筋である点を若林議員は指摘し、小泉首相の認識を質した。
小泉首相は、「公社化以後のことまで規定したものではない。法制的にも問題ない」と答弁。若林議員が、「法律で規定している以上、削除するなり、修正するなりしてから、(郵政民営化関連法案を)出すべきだ」との姿勢を示し、重ねて質したのに対しても小泉首相は、「見直さないということでは、改革は永遠にできないではないか。この条文をたてに見直してはいけないという感覚を疑問に思う」などと開き直った。さらに小泉首相は、「法律解釈においては、そうした解釈もあろうかと思うが、政治的にそうした解釈はとっていない」などと、法治国家の首相にあるまじき答弁を重ねた。
続いて若林議員は、外交の基本方針に関して質問。近隣諸国との関係悪化が危ぶまれる小泉首相の政治姿勢に懸念を示し、国連の常任理事国入り実現に向けても、対中・対韓との関係改善に向け、靖国参拝を取り止めるなど、近隣諸国に配慮した行動を行うよう求めた。小泉首相は、「日米同盟と国際協調体制が大切であるとの観点からの外交方針を継続していく」などと述べたが、「大局的な見地に立って、日中関係を友好・発展させてきた。実績が証明している」と全く見当違いの答弁に終始。
若林議員はまた、国民保護法制にも言及し、民間防衛組織の必要性を指摘。有事に備えて、政治主導で国民保護の体制を整えるよう要請した。
若林議員に続いて辻泰弘議員が質問に立ち、JR福知山線脱線事故などの事故災害に関する政府の対応について追及を行ったほか、小泉首相の靖国神社参拝などを取り上げて質問を行った。
辻議員は冒頭、小泉首相の靖国神社参拝について「公的か私的か」と参拝の性格を問うとともに、内閣の見解を質した。細田内閣官房長官は、過去の参拝について「いずれも個人としての立場でなされたものと理解している」と答弁したが、小泉首相は参拝の性格について、「私的とか公的とかいうことにはこだわっていない」と述べ、「内閣総理大臣である小泉純一郎が参拝しているが、内閣総理大臣の職務として参拝しているものではない」と強調した。辻議員は、個人としての行動であるとの認識をしっかり持ち、その考え方の下で行動するように首相に求めた。
次に辻議員は、社会保険庁改革における年金運営組織について、政府内検討で結論を得るにあたり、衆参両院合同会議などの協議も参考にするように要求した。方針を問われた小泉首相が「意見が分かれている点もあるが、今後よく調整して判断する」と答弁したのに対し、国会の議論の結果を踏まえるべきと辻議員は指摘した。
辻議員は続いて、JR西日本の福知山線列車事故に話を進め、平成13年4月の小泉内閣発足以来、最も大きな死傷事故であることを指摘し、「第一義的にはJR西日本の問題だが、国土交通省あるいは政府の取り組みも(事故の)背景としてあり得る」との見解を示した。
政府の取り組みの例として、辻議員は、JR西日本の福知山線の運行計画と、ATS(自動列車停止装置)の設置義務を取り上げた。辻議員はまず、国交省はダイヤ改正の届出時に、運行可能か確認して計画の変更も命じることができると指摘し、JR福知山線について運行が可能と判断した理由を質した。北側国交相は、「制限速度内で運行して遵守できると判断したが、運転手にとって運行ダイヤの余裕が十分あったかと検証する必要がある」ため、現在、総点検を求めていると答弁した。検証後に「ダイヤが変更されれば、無理があったと認めることになる」と辻議員は述べ、「検証を待ちつつ、他に無理なダイヤがないか、調査対応に努めるべき」だと政府に要請した。
辻議員はまた、ATSの設置の義務化について質問し、北側国交相は、運転手の赤信号見落としを防止する目的で義務化されている現行のATSは、運転手の制限速度内走行を前提にしており、通常の速度を超過してカーブに進入することは想定していなかったと説明したうえで、ATSの改良について取り組みを進める考えを示した。
これらの答弁を受けた辻議員は、「人間存在に関わるような、安全などの社会的規制は、単なる規制緩和だけではない」と発言。規制緩和を追求するあまり、安全規制、健康規制、環境規制などの社会的規制をないがしろにしてはならないとして、小泉首相に見解を求めた。首相は「自由な活動を個人においても企業においても促す面で、規制は最小限に留めるべき。しかし安全は大事」などと、規制緩和のあり方についての基本的な姿勢を示すに留まった。
辻議員はこのほか、医療情報システムの反省点、救急車などの緊急車両のETC利用、救助活動に対する労災認定を含めた、災害への対応について関係大臣に質問した。
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