6日午後、衆議院郵政民営化に関する特別委員会において、伊藤忠治・山花郁夫両衆院議員が質問に立ち、郵政民営化法案提出にいたる手続違反などについて鋭く追及した。
審議の冒頭、伊藤議員は、特別委員会での審議が始まるまでに、民主党等から委員の名簿が提出されないままで委員会審議が開始されるという異常な事態があったことを指摘した。そして、郵政民営化法案は民営化を否定している中央省庁改革基本法第33条に違反する点について決着をつける必要があるとして、細田官房長官に質問を行うとともに、橋本元首相および自見・野田・八代という歴代の郵政相が、この条項から郵政民営化はあり得ないと国会で発言しており、郵政特別委に呼ぶことを要請した。細田官房長官は、この条項は公社化までのことを規定しているとの従来の答弁を繰り返すのみであった。また、二階委員長は、元首相などの招致は理事会で協議するとのみ発言した。
次に伊藤議員は、民営化法案では230箇所以上の政省令への委任があり、国会審議を無視した立法であることを指摘した上で、公社法24条で中期経営計画を立てて改革を進めている時に、その結果を検討することなく、民営化法案を提出するのは手続違反であると迫った。これに対して麻生総務相は、経営計画は経営として着実に遂行してもらうが、民営化するかどうかは政治の話であり、業績の如何に関係ないと言い切った。竹中担当相は、中期計画が進んでいることは承知しているが、それでも公社を取り巻く環境は厳しいと一般論を述べるにとどまった。
更に伊藤議員は、国民の主たる関心は景気問題や外交問題であり、そのことはほとんどの都道府県議会および市町村議会からの郵政民営化反対決議案を見れば明らかであり、改革は「民の声を聞きながら、実態を見ながら」進めるものだと追及したが、細田官房長官は、今が民営化を行うべきときであるとの答弁をするのみであった。
伊藤議員は、民営化で金融を分離して失敗したニュージーランドの例を挙げ、三事業を一体として運営することが望ましいとした上で、公社改革の中で高齢化社会に対応したリバースモーゲージを公社として事業化すべきだと提言した。これについて、竹中担当相はあくまで民営として考えるべきだと答弁した。
続いて質問に立った山花郁夫衆院議員は冒頭、「郵政民営化法案を最重要課題とするのは、優先順位として間違っている」と指摘。その上で、中央省庁等改革基本法33条1項6号の修正を、郵政民営化法案の審議よりも先に行うことが筋だと述べ、竹中担当相に、これまでの同法案に対する政府答弁への見解を改めて求めた。
竹中担当相は、「それぞれの立場で、政治家としての信条で話をしたものだと思っている」と答弁。山花議員は、担当大臣としての答弁であるとして、答弁の誤りを鋭く指摘し、再答弁を求めた。これに対して竹中担当相が、「小泉内閣以前に、その当時の郵政大臣は国会で様々な答弁をしているが、条文の法制的な解釈について、政府の見解として述べたものではないと理解している」などと強弁を繰り返したため、民主党は、都合よく解釈を変える態度に抗議。二階委員長が会議の休憩と理事会の開催を宣言して、審議は一時中断した。
再開後、竹中担当相は、「政治家としての心情で話をしたもの」との先の答弁については、「不適切であったので撤回する」とし、中央省庁等改革基本法33条の問題については、「政府統一見解は、後刻改めて提出する」と述べた。
続いて山花議員は、総務省の鈴木郵政行政局長の、2日の衆院予算委員会での答弁に言及。電気通信事業部長の職にあった平成13年の夏から秋に、利害関係者であるNTTコミュニケーションズ株式会社の総務部長らと会食をし、タクシーチケットを受け取った経緯などを改めて確認するとともに、相手方の役職についての答弁が客観的事実とは違っていると鋭く指摘し、麻生総務大臣に徹底した調査を要請した。
さらに山花議員は、日本郵政公社の生田総裁に、決算報告について質問。報告書のキャッシュフローに関する数字を質したところ、事前ヒアリングを受けた際に記載されていた数字が、本日配られているペーパーで訂正されていることが発覚。山花議員は、訂正する場合には前もって伝えられるべきと鋭く追及した。
結局、数々の問題点を指摘し、政府側が十分な答弁を行えなかった山花議員の残余の質問と、中村哲治議員の質問は、後日行われることとなった。
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