衆議院の郵政民営化に関する特別委員会で9日も審議が行われ、民主党・無所属クラブから一川保夫・川内博史両衆院議員が質問に立ち、竹中郵政民営化担当相らの見解を質した。
一川議員は、小泉内閣が「改革の本丸」と位置づけ審議を重ねている郵政民営化法案について、国民の関心は高まりを見せず、政治家自身でさえ理解できない法案であるとの見方を示し、地方議会からも慎重審査を求め、民営化は実施すべきでないとの意見が相次いでいる点を指摘。そうした国民の声をどう認識しているかについて、また、その上でもなお推し進めようとする郵政民営化に向けたビジョンを示すよう、関係大臣に求めた。
麻生総務相は、「国民の個人金融財産の4分の1にあたる郵便貯金・簡易保険の約340兆円の資金が、国有であるが故に、安易に財務省所管の銀行・特殊法人等々に流れるのはいかがなものか」と述べた上で、何らかの形で民間に使われる道を開いていくのが郵政民営化だとする認識を示した。谷垣財務相も、「民間につなげていくことで活性化していく。株式売却収入が国民全体の資産として活用される道が開ける」と答弁。竹中担当相は、「国民の優先課題としては(郵政民営化を求める声は)高くはない」と述べつつも、賛成の意見が広がりつつあると強弁。その上で「地方議会で反対の声が強いのは、郵政がもっている地方での公的機能が維持されるかということに対する国民の不安が大きいものと思われる」と述べた。こうした答弁を受けて一川議員は、「郵政民営化という政策課題を緊急的に実行してほしいという関心は低い」と改めて指摘し、政府の方向性の誤りに言及した。
一川議員はまた、過疎地域における郵便局、金融機関の役割について取り上げ、機能の重要性を指摘し、「安心のネットワークとして残しておくべき」として麻生総務相、竹中担当相らに機能を維持するよう求めた。更に一川議員は、「郵政民営化を進めようとすればするほど、国が関与する部分が大きくなり、何のために民営化するのかも分からなくなってくる。巨大な国営企業をなんとなくつくり、肥大化していくことになりかねない」と批判。民営化ではなく、郵政公社のネットワークを可能な限り残しつつスリム化することこそが求められる改革であることを指摘した。
一川議員に続いて質問に立った川内博史衆院議員は、民営化後の郵便局設置基準こそが、法律で唯一できることで、数量的に明らかにするよう求め、また、全ての郵便局と貯金会社・保険会社が代理店契約を結ぶのかのどうかの二点を中心に質した。
川内議員は、「民営化には絶対反対であるとの立場」を明確にして政府の民営化論を「全てが希望的観測、後は野となれ山となれで、法律では何も書いてない」と指摘し、国民の利便性確保の観点から、郵便局の設置基準を定性的な言葉でなく、定量的な言葉で示すよう求めた。これに対して竹中担当相は、「省令で定める。現行の水準を維持することを旨とする」として過疎地については過疎を規定する4つの法律に基づけば、現在対象となる郵便局は約7220局であることを明らかにした。川内議員は納得せず、何キロに1局など、定量的に示すよう重ねて答弁を求めた。これに対しても竹中担当相は、「法施行時は現行を維持する。地域住民の需要に適切に対応することが省令に盛り込まれる」とし、具体的な数字は示さなかった。
川内議員は「郵便局が今後どうなるのか、抽象的な表現ではなく法律の議論として示すべき。これでは国民に説明責任を果たすことならない」と迫り、「7220の数字がなるべく減らないように、省令に書くよう提案している」と設置基準を重ねて示すよう求めた。これに対して麻生総務相は「ごもっともと思う」と賛意を示した。
続いて川内議員は、貯金会社・保険会社の代理店契約に関して全ての郵便局と結ぶのかを質した。麻生総務相は、「一括して本社同士で契約。出来高払いなので残すのではないか」と答弁。川内議員は更に、「法的に安定的代理店契約をするのか」と明確な答弁を求めた。竹中担当大臣は、「全てではない」と答えたため、川内議員は答弁が不一致ではないかと追及。これに対して麻生大臣は、「一括と全てとは違う。1局たりとも減らないことはない」とし、また、現在でも貯金・簡保を扱っていない郵便局があることも明らかにした。
川内議員は「国民に民営化がどういうメリット、デメリットをもたらすかを示し、国民に理解していただかないといけない。今後も国民の利便が守れるかしっかり議論をしていきたい」と締めくくった。
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