衆議院郵政民営化に関する特別委員会は16日、郵政民営化関連法案に関する参考人質疑を行い、民主党推薦の田尻嗣夫・東京国際大学経済学部長と菰田義憲・日本郵政公社労働組合中央執行委員長が、それぞれの立場から意見陳述し、質疑では民主党・無所属クラブの川内博史議員が質問に立った。
川内議員は、「改革すると言うと誰も反対できないが、誰のための改革か、何のための改革か、中身がしっかり検証されなければならない」と前置きした上で、「この部分はマイナスが出る、ということを正直に国民の皆さんの前に提示をして、国民の皆さんに選択肢を与えることが、民主主義の大原則」だと指摘。その上で川内議員は、郵便局がコンビニをやればいいといった政府の想定について、「机上の空論、まさしく紙芝居だ」と断じた上で、菰田参考人の意見を求めた。菰田参考人は、「単純にコンビニをやれと言われても、大安売りをして大赤字になるのが関の山」だとし、「もう少し慎重な議論をお願いしたいというのが本音だ」などと述べた。
更に田尻参考人も、諸外国の例を引き、「郵政三事業をコンビニに委託されるなら分かるが、自らコンビニ化するというのは、全く間違った考えだ」と指摘した上で、商品の入れ替えや店舗のスクラップ・アンド・ビルドをするコンビニの経営の実態を紹介し、「郵便局のコンビニ化で数百億円を稼ぐというのは、完全な絵空事だ」と言い切った。また、ドイツ・ポストの実態も詳しく紹介し、「民営化路線のドイツというイメージは全く間違い」だと指摘した。
川内議員はこのほか、いわゆるあり方懇の議論や民営化後に生ずる痛みなどの問題について田中直毅参考人(21世紀政策研究所理事長)や北城恪太郎参考人(経済同友会代表幹事)に質した。この中で川内議員は、例えば「社会・地域貢献基金が、しっかりサービスを維持できるだけの資金量をもっているか」についても、「具体的なデータは一切、本委員会に示されていない」として政府側の姿勢を批判。最後には、「郵政民営化情報システム検討会議報告」を手に、「適切な配慮をすれば、情報システムの観点からは暫定的に対応することが可能である」との記述を引き、「全くどうなるか分からないと言っているに等しい」と断じるとともに、「高い理想を持って取り組みを進めることが、何よりもリスク回避の方策になる」との部分も引いて、「こんな情緒的な行政文書などあり得ない」と批判。政府が進めようとする郵政民営化のずさんさを明らかにし、質問を終えた。
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