25日午後、参院本会議で、平成16年度決算に関する質疑が行われ、民主党・新緑風会から、簗瀬進議員が質問に立った。
簗瀬議員は冒頭「5年間の小泉政治が、国民にとってどうであったか」と提起し、「効率優先の経済指向は、社会から優しさを奪い、虐待の連鎖反応を蔓延させている」との考えを述べた。耐震偽装・ライブドア・BSE問題については、小泉改革の致命的欠陥を雄弁に語っている事件だと指摘し、意識しているからこそ、あえて施政方針演説で触れなかったのではないかとの見解を示した。
簗瀬議員は続いて、1993年以来継続している日米双方の年次改革要望書を取り上げ、米国側の要望の中心にある考え方は「国有企業の民営化」「市場の自由化」「小さな政府」であると指摘。「年次改革要望書はまるで、日本の心臓に埋め込まれたペースメーカーのようだ」と評し、「年次改革要望書を介しての日米双方の相互改革システムを今後とも継続していくつもりなのか」「継続するならば、毎年の報告文書を、米国政府に提出する前に国会にきちんと報告すべきでないか」と追及した。小泉首相は、今後も対話を継続する考えであり、報告書については「提出公表に先立って国会に諮る性格のものではない」と答弁。竹中総務大臣は「将来の国民負担の最小化、経済活力の維持のため、簡素で合理的な政府を実現することが必要」と述べ、今後とも小泉改革を維持しなければならないと強調した。
簗瀬議員は、耐震強度偽装事件について「民営化政策がはらむ本質的な危うさを教えてくれた」と述べ、安心・安全を確保するための対策を用意した上で、民営化に臨むべきだと主張。小泉改革は「まず民営化ありき」だとして、準備不足で民営化を強行すれば我が国の経済社会を危機に陥れると警鐘を鳴らした。小泉首相は答弁で、耐震強度偽装事件については民営化や準備不足が原因ではなく、建築確認制度そのものの見直しが必要と考えているとした。
ライブドア事件については、「民営化と一体の『市場の自由化政策』とこの事件の関連性」に関心があると表明し、「民営化によって、「官」が管理していた巨大な国民の資産が不完全な市場に流れ込んでゆく」と指摘。小泉首相は「経済活動の重要な基盤である証券市場は公正透明で信頼されるものであることが必要」と応じた。与謝野金融担当大臣も、今国会で金融サービスに関する横断的包括的な枠組みを整備すると説明した。
また、東京証券取引所の株式会社化に言及し、「不完全な市場」の一方に、証券取引所の問題があることが、ライブドア事件で明らかになったと指摘。「政官財の癒着構造を温存したままでの民営化は、偽りの改革でしかない」と述べ、東証に厳しい経営感覚や機動的な対応力そして果断な決断力がつちかわれているか見解を質した。首相は「株式会社となった証券取引所の役員は、国際的にも信頼される市場の実現に務めるべきものと考える」と答弁し、与謝野金融担当相は「システム障害事例等を深く反省し、株主総会で選出された役員の下で、安定的かつ円滑な運営を確保し、国際的にも信頼される市場を実現するためシステム整備をはじめ早急に対応する必要がある」との考えを示した。
平成16年度決算に関しては、自衛隊の海外活動ごとの予算と決算を取り上げ、「規模がきわめて分かりづらい」と、財政民主主義の原則から問題があると指摘。現時点でのイラク戦争関係の自衛隊の作戦行動で使用された国費を支出目的ごとに明らかにするよう求めた。また、今後の予算・決算の作成についても「海外活動については、内閣の派遣命令ごとに区分し、民主的コントロールを徹底すべきではないか」と質した。額賀防衛庁長官は答弁で、平成15年12月の派遣以降、平成17年9月までに自衛隊部隊が支出した経費である約609億円の内訳を報告。防衛庁全体の経費が車両購入など目的に従って区分されていること、予算案の審議に関して参考資料を提出して、可能な限り分かりやすく努力していることなどを説明した。
簗瀬議員はこのほか、電子政府の制度、社会保険庁のオンラインシステムや有料道路事業、都市交通機関の需要予測について首相および関係大臣を追及。厳しい財政状況を踏まえた上で、国民の利便性を向上し、高コスト構造にメスを加えるように求めた。
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