米国産牛肉輸入再開問題についての閣議決定を守らなかったとの事実を認めた中川農水相の答弁をめぐり、中断していた衆議院予算委員会は、30日夜に再開された。補正予算の締めくくりの質疑にまず立った長浜博行衆院議員(『次の内閣』ネクスト環境大臣)は、アスベスト問題とともに、中川農水相の問題を取り上げ、鋭く追及を展開した。
中川農水相は問題となった自らの答弁に関して特に冒頭に発言し、昨年11月に閣議決定されたわが党の川内博史衆院議員の質問主意書に対する答弁書に、必ずしも「反しているわけではないと理解している」としつつ、「閣議決定は重いものと考えている」、「閣議決定を経た答弁書通りにしなかったことについて、委員に対する十分な説明が足りず、結果として重く責任を感じている」などと述べた。
長浜議員は、2500人ものアスベスト被害者の皆さん、遺族の皆さん、環境暴露をされた皆さん、支援者の皆さんが、この日の14時に予定されていた質問のために集まっていたことに冒頭触れた上で、中川農水相の問題を取り上げた。
長浜議員は、質問主意書は、内閣に対し、「衆議院議長を通じて行われ、衆議院議長に対して戻されるもの」だとして、その重みをまず指摘。川内議員の質問に対する答弁書では、「厚生労働省及び農林水産省においては、米国産牛肉等の輸入を再開することとなった場合には、輸入再開以前に、また、輸入再開後も定期的に、担当官を派遣して米国における我が国向け牛肉等に係る食肉処理施設に対する現地調査を実施することが必要と考えている」と書かれており、質問書から「わざわざ敢えて繰り返して、『輸入再開以前に』という文言が入れてある」事実を指摘した。
そして、これについてのわが党の松野頼久衆院議員の質問に対して中川農水相が、「閣議決定通りにしなかったということでございます」と答え、問題になっている点について、(冒頭の)「今の答えでは、答えになっていない」と厳しい口調で中川農水相を質した。
中川農水相は、現地調査についての判断を変えたことを改めて認め、答弁書の「文言自体が本当に事実と違っていた」、「再開前にやるということをやらなかった」ことも改めて認めた。しかし、「ある意味では、やる必要が実態としてなかった」などとも述べる一方、「結果において事実関係が違っていた、それを委員に対して正確に丁寧に説明をしなかったことについて、大変申し訳なく、責任を感じている」などと答弁した。
長浜議員は、こうした答弁を受けて、質問主意書は内閣に転送した後に撤回するためには「議長の許可を得なければならない」ことに触れて、その重みを更に強調。阪田内閣法制局長官には、閣議決定の重みについても問い質した。ところが阪田法制局長官は、「決定『当時』の内閣の認識・考え方を示したものだ」などと、きわめて「政治的」な発言を繰り返したため、審議はたびたび紛糾。内閣が代わっても依然として効力を持ち続けるとの、かつての法制局長官の答弁を長浜議員は引用し、「後で謝ればそれで済むという悪しき前例になる」と厳しく指摘するとともに、閣議決定は閣議決定でしか取り消せないことも過去の議事録から確認して、改めてのその重みを強調した。
長浜議員は更に、こうした答弁を踏まえれば、中川農水相の行為は、「閣議違反をしたということではないか」と鋭く迫った。中川農水相は、答弁書の「文言通りにやらなかったというのは事実」だが、「質問の趣旨、答弁の趣旨、食の安全の観点からは反するものではない」と述べたため、長浜議員は、閣議違反を認めたということか、閣内不一致か、と更に詰め寄った。中川農水相は、「質問の趣旨、答弁の趣旨とはいささかも違っていない」などと突っぱねたため、大島予算委員長から、「どういう点において趣旨に反していないのか」などと質問が出る一幕もあった。
長浜議員は、中川農水相が「自身の言葉で閣議決定に反していると言っている」と改めて指摘した上で、郵政の問題を見るまでもなく、「閣議に違反をするとどういうことになるのか、責任の取り方は分かるはずだ」と断じた。また、川崎厚労相も中川農水相と同様の不誠実な答弁を繰り返した上、「食の安全という全体の趣旨に添って私どもは行動、判断をしてきた」などと開き直ったため、議場は騒然。審議は再び中断し、休憩に入った。
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