衆議院郵政民営化特別委員会で29日、民主党・無所属クラブの松野頼久・山花郁夫・古本伸一郎各衆院議員が質問に立ち、歴代郵政相の国会答弁をめぐる問題や政府広報の随意契約問題はじめ、郵政民営化法案の諸問題をめぐり、竹中郵政民営化担当相らの見解を厳しく質した。
松野議員は冒頭、自民党が28日に総務会を開いて郵政民営化関連法案の修正案を了承したとの報道に関して、「国会法で定めた当委員会で全く修正といった議論が出ていないにもかかわらず、そうした報道がなされていることに疑問を感じる。当委員会が(郵政民営化法案を)議論する唯一の場であるはず」との見方を提示。本来であれば政府が法案提出に至った4月27日以前に修正はなされるべきだとして、委員会を無視して自民党独自で修正がなされることに疑問を呈し、修正案提出の有無に関して竹中担当相の見解を質した。竹中担当相は「閣法としては今のものがベスト」と述べ、政府としては修正案を提出しない意向を示した。
松野議員は続いて、「新たな公社とすることにより民営化等の見直しは行わない」とする中央省庁等改革基本法33条1項6号を取り上げた。この文言は新型公社化が民営化への道筋になるのではないかとの懸念を払拭するために盛り込まれたものであり、当時の政府答弁等からもその点は明らかであることを松野議員は重ねて指摘した。その上で、松野議員はこうした当時の担当大臣らの国会答弁に関して、竹中担当相らが「条文の法制的な解釈について、政府の見解として述べたものではない。政治家の信条」などとした発言に言及。法的拘束力をめぐり松野議員は質したが、竹中担当相は「当時の郵政大臣としての将来的な見通し、政策のあり方についての考えを述べたもの」などと答弁。その答弁を受けて松野議員は、当時の大臣が政策のあり方を提示し、中央省庁等改革基本法33条1項6号において「民営化はしない」と定めているにもかかわらず、今回の郵政民営化関連法案によって全く違った方向性を目指そうとするからには、修正をあわせて提出するのが当然であるとする見解を示した。
次に山花郁夫衆院議員が、松野議員に続いて質問に立ち、郵政民営化法案の問題点および閣僚の問題意識について鋭く質問した。
山花議員は第一に、郵政民営化のための政府広報のプレゼンテーションの中でIQの低い人を対象にしているととれる点があることを取り上げ、南野法相に、「人権問題ではないか」と迫ったが、法相は当初、質問の意味が分からないと逃げた。その後、特定の人物のへの誹謗中傷にならない限りは差別とならないと答弁し、わが党理事の指摘により答弁内容が問題とされ、理事会で協議されることとなった。
第二に、公的出資を残しても銀行法上の民間銀行であることを山花議員は示した上で、貯金と保険に関する民営化会社の株式を完全放出する必要性は疑問であると質問したが、竹中担当相は国家の信用を切り離す必要があるためとの答弁に終始した。
第三に山花議員は、細田官房長官の政府法案の有権解釈権は内閣法制局にあるという答弁を問題とし、そのような法的根拠はどこにもないことを指摘したが、官房長官は曖昧な答弁に終始し、答弁について理事会で協議することとされた。
続いて質問に立った古本伸一郎衆院議員は、昨日行われた地方公聴会の公述人の声を紹介し、郵便局は公・パブリックを担っている、公務員だから信頼されている、公務員でなければならない、として民営化に反対する声が多かったことを質問の冒頭に示し、さまざまな観点から、民営化にメリットがないことを明らかにした。
古本議員は、「佐賀の離島では郵便さんがいないと暮らしが成り立たない。振り込め詐欺まで防いでいる。また、地震に遭った玄界島での避難所で顔を見て、地震の翌日から全国の志や励ましが配達された」とし、これは「公務員だからできること」として、なぜ民営化するのかの基本を質した。竹中担当相は公的な部分は民営化後も果たせるようにしていると答えるだけで、公務員として郵便局員が果たしている役割には触れなかった。
また、古本議員は公正取引委員会から告発されて、強制捜査となった道路公団の橋梁談合事件を取り上げ、いま政府が取り組むべき課題は、公務員の意識改革であり、天下り禁止であると鋭く指摘。「33万人の改革こそ本丸。一人当たり2億円超の事業費をこれらの公務員は持っている。使い切ることが優秀なのではなく、残すことが優秀である。減額した人が評価されるようにならないといけない」として、ここにメスを入れるべきだと迫った。麻生総務相は公務員の純減を約束したものの、意識改革には触れなかった。
古本議員は最後に、都会の郵便局も切り捨てられる、今度は都会で公聴会を開くべきとして質問を締めくくった。
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