06年度予算案の審議に入った衆議院予算委員会で6日、民主党の一番バッターとして質問に立った前原誠司代表は、防衛施設庁の官製談合事件を取り上げ、予算審議の前提として談合による無駄遣いの是正こそ重要として首相はじめ関係大臣に真相究明を迫った。
前原代表は冒頭、「大前提として予算案はベストと考えるか、考え直す余地があるか」と首相に質問。「無修正で年度内成立を期すのが私の責任」との答弁を受けて前原代表は、見直す必要がないかどうかは審議内容を十分に理解した上で判断するよう首相に予め求め、防衛施設庁の談合事件をめぐり額賀防衛庁長官に、談合は立件された3件のみかを質した。
額賀長官は「その他については捜査が進んでいくなかで知る。われわれが知る由はない。全容解明を望む」などと、所轄大臣にあるまじき答弁。前原代表は「体質改善をはかり、解体的出直しを行う」などとしながらも、平成10年に発覚した防衛庁調達本部の事件の反省がまったく活かされなかったことが今回の事件の背景にあるとの認識に立って、防衛施設庁から出された資料に基づき、平成10年以降の防衛施設庁が一般競争入札で発注した建設土木工事の平均落札率が97・99%であることを明らかにした。
平均落札率が約98%にのぼるというこの実態を踏まえれば他にも談合がないかを疑うのが妥当だと指摘したうえで前原代表は、「防衛施設庁の発注工事のすべてが談合である」との防衛施設庁幹部の発言や「防衛施設庁の関連の工事では談合が行われていた」とのゼネコン関係者からの証言があることにも言及。現状に目を向けない額賀長官の対応を批判するとともに、「恒常的に談合が行われていたと認めるところから、本来の解体的な出直しがスタートされるべき」と指摘した。
そうした指摘を受けて額賀長官は「背景には落札率の問題がある。予定価格と落札率が一致していたり、極めて高いということには競争原理が働いていない。積算根拠をはじき出す能力がないから業界からストレートに情報を得た上で落札価格を決めるので僅差になっている。そのほかにも自分の保身と将来のこと、業界の話し合いによる様々な談合要因のなかで、われわれが解明していかなければならない要因がある」などと、まさに談合があると認めたと見て取れる答弁。前原代表は「談合があると認めたと思っていいか」と詰め寄ったが、長官は「調査した上で明らかにしたい」と明言を避けた。
前原代表は、「談合していなければ落札率は70%だ」と述べている談合していた大手空調メーカーの営業マンの発言と、実際の落札率が98・9%であることを踏まえ、「まさに税金が余分に使われている」と分析。防衛施設庁の建設工事予算額は約2000億円だが、その指摘どおりに競争原理が働けば建設工事費は7割に抑えられるという業者の発言を重く受け止めるべきだと主張した。
続いて、防衛施設庁の天下り先で事件の舞台となった財団法人防衛施設技術協会に関して、役員14人中12人が国家公務員の天下りであり、職員数99人中65人が防衛施設庁のOB等で占めている実態を指摘。「(その背景には)いくつもの問題がある」と語った。
問題の第一として、役員のほとんどが2年間在籍したあと建設業界へ再度天下りしている状況について「この防衛施設技術協会はトンネル機関になっている」と分析。国の行政機関の職員がゼネコンなど関係企業への天下りする場合、2年間は禁止するという天下り規制法があるため、その規制がなくなる間の2年間、「羽を休める場所」となっている実態を前原代表は明らかにした。「絵に描いたような脱法行為が行われている。だからこそ、天下りを受け入れてもらうための配分表まで作られており、OBをどれだけ受け入れるかによって受注額を調整していた」とも指摘し、事件の背景にある構造を浮き彫りにした。
前原代表はまた、会計法では一般競争入札によることが基本とされているにもかかわらず、防衛施設庁から防衛施設技術協会への発注の約9割に当たる12億円が随意契約となっている点を指摘し、会計法違反の実態も明らかにした。
さらに前原代表は、天下り規制の実効性を高めるために制度の見直しを竹中総務大臣に強く求めるとともに、小泉首相に対し、防衛庁長官の監督責任、首相自身の責任をどうみるか質した。首相は「逮捕者が出たことは誠に遺憾」としながらも、額賀防衛庁長官には引き続き長官としての責任を果たしてもらうとの趣旨の答弁をするにとどまった。
前原代表はこうした談合体質は防衛庁だけでなく、国土交通省等でも同様に見られることをデータを示して明らかにした上で、談合体質によって無駄遣いされている予算を深刻に受け止めるべきとの認識に立って首相に「この予算を出しなおすつもりはないか」と再び質問。実態調査に基づき談合によって生み出される無駄を精査した上で予算を出し直して予算審議を行うのが本来の筋だと迫った。
しかし首相は「それは違う問題。談合は防止する。18年度予算は談合がないようにする」「予算の執行においては不正がないように各担当者がしっかり対応するのがわれわれの責務」などと答弁するだけだった。
前原代表はこの発注状況を見て首相自身も談合体質があることを認めているはずと前置きした上で、「40兆円もあろうかという公共調達のなかで、発注官庁がすべて同じ構図をもっている。ちゃんと予算執行は行うから大丈夫だということを誰が信用できるか」と首相の発言の軽さを批判。予算審議の前提として、公益法人、株式会社等でどういう天下りの構図になっているかを内閣の責任として明らかにするよう要請。「それが前提でないと議論できない」と厳しい口調で詰め寄った。同時に、民主党が3日に参議院に提出した天下り規制法案に盛り込んだように、公務員の談合関与を処罰対象とするなど、現行法の不備是正に向けた法改正を行うよう強く求め、首相から「民主党案を参考にする」との答弁を引き出した。
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