岡田克也代表は25日昼、東京・有楽町の日本外国特派員協会で講演し、参加した約100人の特派員、記者を前に、民主党政権実現に向けた抱負を熱く語った。
岡田代表は冒頭、自民党へ党首同士の1対1の公開討論を申し入れたことに触れ、「選挙戦で本来重要である政策議論が行われていないことは国民にとって不幸だ。堂々と受けてもらいたい」と述べ、実現への期待感を示した。
そして「小泉首相は、郵政民営化法案の是非という極めて小さく限定された争点で選挙を戦おうとしているが、間違っている。重要な争点について、各党が政策を出し合い、正面から議論しあうべき」とし、現在の状況を「日本の民主主義の危機」という激しい言葉で表現した。
岡田代表は、これまでの小泉政権の実績を、骨抜きになった道路公団民営化や財政再建を例に出し「4年4カ月でいったいどこが改革されたのか」とし、「だからこそ郵政に争点を絞り、過去の実績に議論が及ばないようにしている」と指摘した。
民主党がマニフェストの重点項目として掲げている「年金改革」については、与党の姿勢を「楽観的な前提の数字合わせに終始し、根本的な問題は解決されていない」と批判。民主党の主張する最低保障年金制度の導入とその財源としての消費税率3%アップ、年金制度の一元化について解説した。「子育て支援制度」に関しては、「人口問題も重要だが、それよりも産みたい、育てたい人たちに対して政治はあまりにも無責任だった」と、重点化の理由を説明した。
財政再建については、マニフェストに掲げた「国家公務員人件費2割削減」を行うために、「国の財政がこれだけ厳しく、国民や民間も苦しんでいる。国を良くするために公務員になったのなら、ぜひ協力してほしい」とし、「手直しではなく、国の予算の抜本的な組み替えだ。これをやらない限り、この国は絶対に良くならない」と財政再建への決意の強さを表明した。
郵政民営化法案については、「これだけが争点ではない」と再度述べた上で、「郵政民営化は一般国民に当面の痛みはない。だから政治家としては言いやすい面がある」と指摘し、痛みの伴う改革には口を濁す小泉首相の姿勢を批判した。
また、岡田代表は外交政策を取り上げ、国連常任理事国入りの行き詰まりを例に、「今の外交は八方ふさがり。全面的な建て直しが必要」との認識を示し、イラクからの自衛隊撤退、そのために首相就任後ただちに日米首脳会談を実現すると語った。さらに中国、韓国との領土問題についても、「率直に議論する。先送りしてはいけない。しかしお互いがお互いを必要としている信頼関係がない中で、このような議論をしても溝が深まる」とし、まず首脳間の信頼関係づくりが重要との認識を示した。
最後に、「今の状況は楽ではないが、日本国民の良識を信じている」と述べ、民主党政権実現へ全力を尽くすと語り、講演を終えた。
主な質疑応答は次の通り。
Q.民主党は有権者の関心を引くことに後れをとっているのでは?
岡田「各選挙区では非常に関心が高まっている。昨日もある選挙区で握手攻めにあったが、左手が勝手に誰かに握手されてしまっているほど熱狂的な歓迎だった。選挙戦はすでに加熱している」
Q.イラクからの撤退を公約すると、テロを誘発するのではないか?
岡田「議論は逆だ。日本は本当に無防備だ。いつ起きるかという状況だ。現実の危険性が高い以上、決断すべきだ」
Q.衆議院で過半数をとっても参院では少数だ。どう政策実現するのか。
岡田「まず法案を必要としない改革から手をつける。それは予算と外交だ。われわれも与党法案の7割には賛成してきた。野党の賛同を得られるように説得するが、もし必要な法案にすべて反対するようなら、野党は次の選挙で厳しい審判を受けるだろう」
Q.6カ国協議の見通しと北朝鮮への経済制裁について
岡田「拉致と核はどちらも深刻な問題。これ以上6カ国で進展しないのなら国連安保理に提案する。本格的な経済制裁をするなら、安保理の議決は避けて通れない」
Q.小泉首相のやり方をヒットラーと比較する向きがあるが、彼を歴史上の人物となぞられるなら誰が適当か。
岡田「反対者を公認せず対抗馬を立てることは厳しいが、間違っていないと思う。しかし、私が首相なら事前に警告する。どう処分するかを明確に述べた上で、チャンスを与える。ただ、厳しいことをやるのなら一貫性がなければ。否決した参議院の反対者には何の処分も行われていない。これを見ると、信念でやったというよりも、選挙向けのジェスチャーに過ぎないのは明白だ。歴史上の人物に小泉首相を当てはめるのは、歴史上のヒーローに失礼だ。もしこれからも小泉政権が続くなら、彼は日本の衰退をとめられなかった首相として歴史に名を残すだろう」
Q.有権者は政権交代という変化が怖いのでは?
岡田「民主党には自民党よりも人材がそろっていると自負している。政策も自分たちでつくっている。いつでも政権交代ができるし、われわれが政権をとることが日本をよくすると信じている。国民の皆さんには、勇気を持ってほしい。今のままでは絶対によくならないのだから」
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