前原誠司代表は6日、オーストリア大使館で行われたEU議長国主催のEU各国大使との昼食懇談会に出席。末松義規国際局長が同席し、民主党の政策等に関して意見交換した。
冒頭、前原代表は民主党と自民党の政策の違いに言及し、小泉政権下の5年間で対中国・対韓国関係が疎遠になっている要因として「その根っこには靖国問題がある」と語り、民主党政権実現後は首相の靖国神社参拝は行わずに隣国との関係改善に努めていくとした。
同時に、日米関係をめぐっては「自民党は米国に依存し過ぎる、米国だけという関係になっている」と指摘。日米関係を基軸としながらもイスラム圏、ヨーロッパ圏などと幅広く交流していく外交が必要との認識を示し、ヨーロッパに学んでいかなければならないとした。「昨今の小泉・竹中路線は、徹底した弱肉強食の政策をとってきている」とも語り、市場主義経済・自由競争は不可欠としながらも、ある一定の調和と秩序が必要であると指摘。環境問題や人間の安全保障、教育環境整備、女性の社会進出のあり方などに関して、ヨーロッパの先進事例に学んで行きたいとの意向も示した。
大使との質疑応答では、パレスチナの問題に関してハマス政権とどう対処するか問われたのに対して、前原代表は「ある一定の条件をつけて支援していくのが適当ではないか」との考えを表明。米国一辺倒の依存体制はとるべきでないとの考えも明らかにした。
イラク問題については「3月くらいから自衛隊の正式な撤退時期に入るのではないか」との見解を示し、13年間に及んだベトナム戦争の初期段階と同じ様相を呈しているとの印象をもっていることも紹介しながら、特に米国中心の今の占領体制に対しては、一端支援を打ち切り、新たに何が必要か検討することが重要だとした。
イランへの制裁についてどう見るか問われたのに対しては、「米国と同一歩調を取る必要はない」との基本認識を前原代表は示しながら、英仏独露の努力に敬意を払うと表明しつつ、「イランの核開発には極めて憂慮している」と語った。一方で、強行的な措置では解決できないとの見方を示し、イランの核開発抑止に向け国連やEU等とが連携した国際的なしくみをつくるべきだとも問題提起した。
経済問題ではインフレターゲットや増税をどう見るか問われ、インフレターゲットに関しては、「デフレの国がインフレターゲットの議論をしている例は少ない。可能かどうかの問題がある」と前置きしたうえで、中央銀行である日銀の独立が侵される形で行われるのであれば、自らは賛同できないとの認識を前原代表は明示した。
増税については、「70%が歳出カットで、30%が増税というイメージを持っている」として、歳出カットの道筋が示されることなしに行われる増税には国民の理解は得られないと指摘。「行革なくして増税なし」の民主党の従来からの主張を改めて強調し、公共事業カット、公務員改革、特別会計改革、地方分権実施の重要性を重ねて指摘した。
米軍再編の問題に関しては、基地負担を求める地域に対して、国がどう説得するかにかかっているとの認識を示し、「汗をかく、泥をかぶるといった努力が政府に欠けている。説得できるかどうか憂慮している」とも語った。
女性の社会進出については「総論は各党とも賛成だが、それをサポートする政策が行われていない」と述べるとともに、企業にワークシェアなど女性を受け入れる文化が根付いていない点も問題だと指摘。国会議員に女性が占める割合が極端に低い現状等を打破するためにもガイドライン等を整備する必要性があるとして、「民主党はこれを改善する法律案をたくさん持っている。政権がとれずにそれが実施できずに残念だ」と語ると、政権交代を期待する声が相次いだ。
中国脅威論についても話題に上り、軍事力や環境汚染については懸念しているとの認識を前原代表は示したが、「懸念はあるがだからと言って敵対国になるわけではない」とする見方を強調。民主党として協力関係強化を進めていることも明らかにし、12月の訪中時にも定期協議を行っていこうということで同意し、実際に中国側からハイレベルの交流のオファーが寄せられていることを明らかにした。
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