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2004/12/01
「今後の障害保健福祉施策について(改革のグランドデザイン案)」についての意見(中間まとめ)
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民主党 厚生労働部門会議 障害者政策ワーキングチーム

1)  身体・知的・精神、三障害に共通する総合的なサービス体系を構築しようとする今回の「改革のグランドデザイン案」の基本的な考え方は、1993年の障害者基本法の制定以降、私たちのこれまでの考え方と軌を一にするものであり、また多くの関係者が求めてきた方向と一致するものであると受け止めたい。

2)  しかし、今回の提案については、提案の仕方がいささか唐突でもあり、また当初示された案があまりにも荒削りなものであったこと等により、関係者とりわけ当事者の立場の人たちには、ある種の戸惑いと不安を生じさせていることも事実である。とりわけ2000年に施行された社会福祉基礎構造改革の一環として、障害者福祉が措置制度から利用・契約主義を基本とする支援費制度へと大きく転換したこととの関連について、未だ十分には明らかにされていないため、歴史の歯車を逆回転させるのでは、との危惧も示されている。

3)  この間、厚生労働省においては、これら一連の審議過程において、とりわけ利用者本人やその家族に対する情報提供・説明、および意見交換の場の設定等について極めて不十分であったことを指摘せざるを得ない。改めて、今後の検討作業の中では拙速を避け、可能な限り丁寧な対応に努めるよう、強く求めておきたい。
  
4)  以下、主な疑問点および問題点を列挙し、これらの点についての解明と問題の克服を求めるものである;
・ どのような制度改正であっても、障害者福祉サービスの基盤整備が大前提である。従って、国は自らの責任において、基盤整備に係る具体的な計画を策定・実行すべきである。
  その際、現状における地域格差の存在等を踏まえ、地域特性に充分、配慮するとともに、利用者自身のニーズを受け止め、より在宅サービス(地域における自立支援)に重きを置くべきである。
・ 利用者負担は他制度との均衡を図るため、従来の応能負担から応益負担への転換を図ることとされているが、画一的に応益負担を強要することには問題が多い。例えば、24時間常時介助を必要とする者への配慮や、低所得者に対するきめ細かな手立てが講じられるべきである。
  同時に、家族・親族の扶養義務の在り方についても、障害者自身の自立支援を基本に考え、原則として扶養義務の押し付けにならない支援方策を講ずるべきである。
・ 福祉サービスの利用決定に当たっては、何よりも個々の障害者のニーズと求めに応じたサービスが提供されねばならない。そのため、障害の認定およびケアマネジメントの在り方については、それぞれの障害、一人ひとりの生活をどのように支援するかという視点で組み立てられなければならない。
  また、福祉サービスの利用状況が、実際にどのように実践されているのか、利用実態を評価するための仕組みや、利用者の権利擁護(アドヴォカシー)のための制度が検討される必要がある。
・ 個別給付としてのサービス、あるいは地域支援事業としてのサービス等について、必ずしも的確な区分がなされていない。例えば、ガイドヘルプサービスについては、当然、障害者の自立支援のための個別給付として提供される必要がある。
  従って、それぞれのサービスの位置づけ・区分の仕方については、今後さらに、詳細な検討を求める。
・ 障害者のための保健・福祉施策の実施主体を市町村と位置づけることには、それなりの理由があると思われるが、実態としては、そのために必要な人員確保、とりわけ専門スタッフの配置などきわめて不十分な状況と言わざるを得ない。
  市町村における実施体制の確立を図るためにも、都道府県の協力・支援・補完および国の制度的・予算的支援が必須条件である。
・ 障害の種別や個々のライフステージにあわせて、地域生活支援から就労移行支援、さらには障害者雇用事業等、それぞれのサービスが適切に利用できる体制の構築とマネジメントの仕組みの確立が求められている。その際、定型的なサービスに固定させるのではなく、やり直し(再チャレンジ)ができる仕組みの構築が必要である。
・ これまで、措置制度から利用・契約制度への発展過程において、子ども=障害児に関する施策については経過的に一部、措置制度が残されてきていた。
  今回の新たな障害福祉サービスの体系化の中では、様々な障害を持つ子どもに関する多様な支援方策をも組み入れた体系を目指すべきであり、その具体化に当たっては段階的な実施をも含んで、引き続き検討すべきである。
・ 新たに制定される予定の「障害福祉サービス法」(仮称)では、これまでの福祉法体系の中で、言わば“谷間”に置かれてきた子ども=障害児の問題や、いわゆる難病(特定疾患)対策の対象となっている患者等、こうした人々をも含みこんだ形での立法化が必要である。

5)  今回、提案されている「改革のグランドデザイン(案)」については、以上に挙げたいくつかの疑問点や問題点に留まらず、今回の改革の位置づけとその後の展望についても明らかとはなっていない。
   私たちは、今回の改正の先に、より包括的に障害者福祉の全体を体系化する、言わば障害者福祉を一本化する“総合福祉法”の制定を目指している。今回の改革の提案はそのための重要なステップと位置づけるべきと考える。

6)  障害者政策WTにおいては、以上の課題を中心に、今後とも引き続き慎重に、かつ積極的に検討作業を積み重ねていく。
   なお、当然のことながら、これらの課題は介護保険制度全体の見直しとも密接に関連することから、介護保険WTとも充分、連携を図りながら取り組んでいきたい。
   また、これら一連の改正と合わせて、今年9月に示された「精神保健医療福祉の改革ビジョン」を踏まえて、次期通常国会には「精神保健福祉法」の再改正も予定されているので、当WTとしては関連する課題でもあるので、今後、あわせて検討していくこととする。
以 上

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