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2006/03/17
【衆院本会議】農業生産者への直接支払い法案をめぐり論戦
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 農業政策の根本的な転換となる農業生産者への直接支払いを導入する法案が政府と民主党からそれぞれ提出され、3月17日の衆院本会議において両法案の提案理由説明と質疑が行われ、民主党は独自の法案をもとに政府案の問題点を明らかにした。

 本日の本会議に提案された政府案は「農業の担い手に対する経営安定のための交付金の交付に関する法律案」であり、その内容は生産者への直接交付金の交付を行うが、その対象を作物では米・麦等に、農業者では一定規模以上の認定農業者等に限定するものである。これに対して民主党案は「食料の国内生産及び安全性の確保等のための農政等の改革に関する基本法案」であり、その内容は第一に食料自給率の引き上げを明示し、そのために幅広い主要農産物を生産している全ての農業者に1兆円の直接支払いを行うとともに、米の生産調整を廃止して棚上げ備蓄をおこなうこと、第二に水産業については漁獲限度割り当てを導入し、漁業集落に対しても直接支払いを行うこと、第三に食料の安全のために輸入検疫体制の強化を行うことである。

 まず中川農林水産大臣より政府案の提案理由説明があり、続いて山田正彦衆院議員(『次の内閣』ネクスト農林水産大臣)より民主党案の提案理由説明が行われた。山田議員は、輸入農産物が増加していることを指摘して食の安全に注意を喚起し、日本の食料自給率がきわめて低いことを指摘して食料安全保障の重要性を訴えた。その上で山田議員は、政府案が農業者への直接支払い制度を導入したことを評価しつつも、その前提である基本計画がまやかしであり、支払い対象農業者も限定されており、予算額も1700億円程度と言われていることなどから、期待外れのものであると批判した。そして山田議員は、民主党案の内容を説明し、民主党案による農政および水産行政の改革によってこそ、食料の自給率目標は達成され、食の安全・安心も確保されると訴えた。

 次いで代表質問に移り、自民党の原田令嗣衆院議員は政府案に対してのみ質問を行い、民主党案に対しては批判を行うのみであった。続いて代表質問を行った松木謙公衆院議員は、まず日本書紀の崇神天皇の詔を引用して、農業こそは日本人の魂とかかわる尊い存在であるにもかかわらず、時代の推移の中で農村が荒廃していく現状を憂い、今こそ農業を根本的に見直して施策を打ち出すべきときだと訴えた。

 松木議員は、農水省が課題としてきた大規模農家の育成は失敗を繰り返してきたと指摘し、政府案および民主案の両案における直接支払いの対象となる担い手の数、政府案における対象農業者の限定は地域社会の崩壊につながる懸念、対象作物に政府案では入っていない菜種が民主党案では入っている理由、政府案における直接支払い対象の限定はWTOの緑の補助金の特典を受けられない可能性、備蓄の方法や食料安全保障などについて質問した。松木議員はまた、自民党の原田議員が行った一方的な批判についても、民主党案の提案者から答弁するように促した。

 松木議員の質問に対して中川農水大臣は、規模拡大が進行中なので対象農業者の数は明確に出来ない、生産構造の脆弱化が進むとかえって集落が崩壊する、対象品目は国民全体にとって必要なものに限った、生産にリンクしない交付なので緑の協定に該当する、食料自給率は食育ややる気のある担い手育成で実現するなどと答弁した。

 民主党案の提案者からの答弁に移り、まず仲野博子衆院議員が菜種を交付対象にした理由として、土地利用型作物、栽培が容易、文化的価値などを挙げ、循環型社会を象徴する作物として例示したと答弁した。また、仲野議員は漁業に関する直接支払いの必要性について、水産自給率の低下、漁村の疲弊を挙げて説明するとともに、漁獲限度割り当て制度を進める意義を説明した。

 次に岡本充功衆院議員が答弁を行い、米について一時的に生じる余剰を備蓄し、一定期間保有後に資料やバイオマスに利活用すること、食料自給率の算定に当たっては過去の最大作付け面積と再大単収から60パーセントとしたが、単収の増加の可能性からも十分に達成可能であることを述べ、猫の目農政の転換を訴えた。

 次に篠原孝衆院議員が答弁を行い、政府案が担い手とする経営規模が4ヘクタール以上の農業者は10万戸程度であり、これだけを直接支払いの対象にしても今までの農政の失敗を繰り返すのみであると述べ、民主党案では広く全農業者を対象とすることにより、農業が良くなることによって担い手が増えるという考え方を示し、対象農業者数は200万戸程度とした。さらに篠原議員は、松木議員からの要請に応えて、自民党の原田議員の批判に対して答弁を行った。第一の、民主党案は零細な経営の固定化になるという批判については、経営規模や品質に応じた加算などを弾力的に行うことによって、究極的には規模拡大をすすめると反論した。第二の、米の生産調整廃止に対する批判については、他の作物に有利な交付によって調整可能であると反論した。第三の、1兆円のばら撒きであるとの批判については、3兆円の農業予算の中から支出する予定であり、失敗した場合にのみばら撒きと言うと反論した。篠原議員は最後に、自民党は代表質問で堂々と質問して最初から答弁の機会を与えるべきであったと指摘し、民主党からの反論を恐れた与党の姿勢を厳しく戒めた。

関連URL
  食料の国内生産及び安全性の確保等のための農政等の改革に関する基本法案について
 http://www.dpj.or.jp/news/?num=480
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