参議院予算委員会は4日、公聴会を開き、民主党推薦の神野直彦・東大大学院経済研究学科教授など6名の公述人が「財政・税制」「景気・経済」「外交・防衛」「環境」「国際金融経済」各分野の立場から意見を述べた。民主党からは内藤正光、郡司彰、福山哲郎の各議員が質問した。
* * *
神野教授は、日本における予算のあり方について「他の先進国と比べ変わった特徴がある。つまり個人所得税はかなり低めの『小さな政府』。一方で『大きな借金』体質。その政府予算案をみると、解熱剤を多用して副作用を招いている患者に似ている。今こそ外科手術が必要だ」と比喩的に表現。その上で、「国と地方の関係を見直し、税の基礎的部分を地方へ委譲し、法人税を外形標準化、そして地方消費税の充実、この3つによる地方の財政力強化しかない」と指摘した。
セーフティーネットについては「敗者に対する分配がうまくいっていない。社会保障制度を維持して敗者にも安心感を与えられれば、そこに新分野の産業も生まれてくる」と見解を述べた。
* * *
内藤正光議員は、神野教授に「勝者も敗者も皆救われる制度は可能か。モラルハザードの問題もある」と質問。教授は「経済活動では競争原理でよいが、一方で勝者も敗者もひっくるめた部分も必要。社会保障負担については、基本的に所得比例とし、40年かけて現行制度から移行すべき」と私案を披瀝した。
郡司彰議員は『新ガイドラインの読み方』の著者である森本敏・野村総合研究所主任研究員に対し、「ガイドライン改定の結果としての日米安保同盟強化で、反作用の動きは出てこないか」と質問。森本氏は「冷戦後の同盟関係は、自由、民主主義、アジア・太平洋の安定といった価値感を共有し増進するものに変容した。中国についてもこれらの価値観で対立しない限り問題は起きない」との認識を示した。
福山哲郎議員はダイオキシン問題について、青山貞一・環境総合研究所所長に見解を求めた。青山氏は「食物以外に空気・土壌・水からも体内に吸収される。4ピコグラムか10ピコグラムかの議論でなく、明らかに異常な数値を示している特定地域が存在することこそ問題にされるべき」と論点を指摘。日本ではダイオキシン調査が一般化しないことについては「技術が未熟、試薬が高い、調査機関が特定される、などで費用がかかる」ことを理由に挙げた。
|