衆議院でわずか5票差で可決された郵政民営化関連六法案の審議が参議院でも13日午前に始まった。この日開かれた参議院本会議において、民主党・新緑風会を代表して、伊藤基隆参院議員(参院郵政民営化に関する特別委員会筆頭理事)がトップバッターとして質問に立ち、郵政法案の問題点を次々に明らかにした上で、慎重な審議を強く求めた。
伊藤議員はまず、「国政の最優先課題を郵政民営化問題のみと位置づけ、他の問題を放り投げて平然としている」小泉首相の姿勢を厳しく批判。民主党の姿勢として、「じっくりと議論を行い、問題点を明らかにし、本法案を断固として廃案に追い込んでいく決意だ」と述べた。また、「総理が国民の信を問うというのであれば、私たちはこれを正々堂々、受けて立つ」との決意も披露した。
その上で伊藤議員は、「日本郵政公社が発足後わずか2年目で、4年間の第一期中期経営計画の途中であるにも関わらず、その結果も見ないうちに本法案を提出し、日本郵政公社を廃止しようとするのか理解できない」とし、生田総裁の努力と公社の成果をどのように評価しているかを質した。小泉首相は、「その努力は高く評価されるべきもの」とし、「厳しい環境変化に適宜・適切に対応していくことが必要」、「経営の自由度を高めるため、郵政事業を速やかに民営化することが必要」などとした。
また伊藤議員は、国民的な関心が郵政問題になく、年金や医療の社会保障などにあることを指摘。今国会での成立にこだわらず、議論を尽くすべき、との多くの国民の声にどう答えるのかも質問した。首相は、「国民の関心は必ずしも低いとは考えていない」などと、答えにならない答え。
法案の内容についても伊藤議員は、中央省庁等改革基本法33条改正の必要性や、「資金の流れを民間に変えることにならない」事実などを指摘。「郵便局のコンビニ化は、具体性が乏しく、あまりに現実離れした乱暴な説明ではないか」と疑義を呈し、「なぜ郵政事業の民営化が必要なのか、正確な事実を国民に提供することがなければ、議論が深まることも、その是非が正当に判断されることもない」とし、小泉首相に対して「誠意ある答弁」を強く求めた。
郵便局設置の問題についても伊藤議員は、地域貢献基金・社会貢献基金について、「算出根拠、対象となる郵便局の数、場所、金額が分かっていない」ことを指摘。「どうしてこれで、郵便局はなくならない、と言えるのか」として、丁寧な答弁、資料提出を求めた。伊藤議員はこうした本法案の問題点を挙げた上で、「ごまかしと決めつけの甚だしい法案だ」と郵政法案を切って捨て、「郵便局ネットワークも貯金・保険のユニバーサルサービスも、国からは一切保証されるものではない」として、小泉首相の認識を問うた。首相は、「必要な郵便局ネットワークは維持される」、「基金の問題を含め丁寧な答弁に努める」などとした。
小泉首相の政治姿勢についても伊藤議員は指摘。「解散権行使の可能性について触れる発言を行ってきたが、こうした強権的な政治手法が大きな反発を招いたとは考えないか」として、「総理はこれまでの姿勢を改め、謙虚な気持ちで国民の声を代表する国会の議論に耳を傾けるべき」と厳しい指摘を行った。小泉首相は、「賛否両論ある難しい問題だ。こういうことから反対者・欠席者が出た」などと他人事のような答弁。
最後に伊藤議員は、「政治課題の選択を誤り、地方議会の声を無視」していると小泉首相を批判した上で、郵政法案について、「最大の問題は、郵政事業の持つ公的な役割と、民営化による自由経営という、相反する問題について長所と短所の調整が全く行われていないこと」であり、「政令・省令や経営判断への委任部分があまりに多く、具体的な将来像が見えないこと」だと改めて指摘。「仮に本法案が成立すれば、郵政事業の現場に多大な混乱が持ち込まれ、取り返しのつかない結果となることは必至だ」と厳しく警告し、「本法案は、慎重の上にも慎重に審議すべきものであることを、所属会派を問わず、本院の同僚議員の皆さんに訴える」と改めて強調して質問を終えた。
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