参議院の郵政民営化に関する特別委員会は21日も審議を続行し、民主党・新緑風会を代表して、富岡由紀夫・大久保勉・広田一各参院議員が質問に立ち、郵政民営化法案をめぐる様々な問題について、関係閣僚に対し多岐にわたる論点から追及を行った。
富岡議員は、地域・社会貢献基金とその資金の流れの仕組みについて根本的な疑問点を提示し、民間に対する利益供与になる可能性や過疎地域の切り捨ての疑念が払拭されていない点などを追及。竹中郵政民営化担当相はこうした富岡議員の質問に対し、地域貢献基金の仕組みは、「地域貢献という政策目的のためにこれを行う」のであり、「銀行や保険会社が不当に利益を受けるということではない」などと答弁した。富岡議員はこうした答弁に対して、「交付金があってもコスト的にあわないと判断すれば、(銀行や保険会社が)代理店契約を結ばないという可能性が十分にあり得る」ことなどを指摘した。
午後に再開された質疑でも富岡議員は改めて、「私が民間の銀行員であれば」、「よほどの採算が見込めない限り、委託手数料がゼロであっても出店しない」などと指摘し、「地域・社会貢献基金が交付される所であっても、金融サービスが維持されるとは限らない」とした。また富岡議員は、代理店制度の見直しを含めた銀行法改正の必要性にも言及。伊藤金融担当相は、「郵政民営化の問題とは別」などと突っぱねた。
富岡議員が更に、郵便貯金銀行や郵便保険会社の売却代金が、「なぜ国庫に入らずに基金に回ったり内部留保に回ったりすることが許されるのか」を質したのに対し、竹中担当相は、「資産を然るべく有効に稼働させていただき、それによって役割を果たしていただく」、「基金に活用される部分もある」などとした。富岡議員は、郵政公社の資産や人の分割手順についても触れ、単なる報告ではなく国会承認の必要性を説くとともに、「分割手続きは実務上、非常に大変」だとして、強い懸念を表明して質問を終えた。
富岡議員に続いて質問に立った大久保勉参院議員は、銀行マンとしての自らの経験を活かし、具体的に民営化法案の計画や制度設計の問題点を指摘した。
大久保議員は今回の民営化法案を例えて、「和食は健康に良いという話で、後は料理人が何を出してくるか分からない。料理の材料は一切出てこない。もしかすると毒まんじゅうかもしれない」と述べ、具体的な内容を明らかにするように求めた。竹中担当相は、「経営は経営者の話になる。仕組みをつくるのが私たちの仕事だ」などと答え、相変わらず、具体的なことはこれからの承継計画で、とした。
これに対して大久保議員は、「35兆円の貸出、信用リスクビジネスで、1%の利益を上げるとしている。こんなに楽なら、銀行は一つも潰れない」と厳しく批判を加えた。そして批判の根拠の一つとして大久保議員は、地方銀行・農林系金庫などの職員数を挙げ、いずれも数万単位であることを示し、「郵便貯金銀行は8000人、どうして1%の利益を上げ得るのか」と再度問いかけ、骨格経営試算の杜撰さを指摘した。
次に大久保議員は、金利上昇によるリスクに関して質問。金融機関で採用されているリスク回避策は、国債の売却によるものだとした上で、「国債保有額が200兆の郵便貯金銀行が、自らのリスク回避のために国債の1割でも売却した場合、何が発生するのか。合成の誤謬が発生する。事前にこうしたことを検証しなくていいのか」と竹中担当相に対し、その認識を鋭く質した。竹中担当相は、「金利上昇に耐え得るように、資産・負債管理をすると承知している」と無責任に回答した。これに対して大久保議員は、「預金サイドを丁寧に見ていない。160兆円が定額貯金、これは金利上昇によって他の商品に変わり得る。金利変動リスクをあまり受けない定期預金は13兆円しかない。一つひとつのバランスシートを分析し、民営化しようとしているのか。このような試算では、M&Aでは全く相手にされない。非常に危険だ」と批判し、再考を求めて質問を終えた。
続いて質問に立った広田議員は、まず、法案中の「業務の健全、適切かつ安定的な運営を維持する」との語句を引いて、過疎地の郵便局ネットワークの維持について、竹中担当相に見解を質した。竹中担当相は「全国津々浦々へのサービスが続く、実効性のある仕組みにしている」「基本的に今のような形を前提にみなし免許が出される」などと明確な答弁を避けた。これに対して広田議員は、地上デジタル放送開始に際しての議論を彷彿とさせると指摘し、地方の不安感を払拭する明確な答弁を今後も求めると表明した。
広田議員はまた、地域貢献資金について、地方の「郵便局を守るため機能するか、甚だ疑問である」と指摘。竹中担当相に基金の積立内容などの説明を求め、「民間会社ではなく、国が本来行うべき住民へのサービスではないか」と地域振興のあり方に疑問を呈した。
広田議員は、民間企業とのイコールフッティングの実現という観点から、特別預金のスキームについても質問を行い、郵便貯金を特別預金化して担保権を設定するという「通常考えられない」仕組みを民営化後の民間企業に対して導入する理由や、スキームが経済活性化や自由な経営という民営化の趣旨に反しないかなどと質した。竹中担当相は、政府保証のついた資産の運用を民間企業に任せ、いざという時のリスクは政府が払うというのでは一種のモラルハザードにもなりかねないため、旧勘定などを切り分けて、運用にも厳しいしばりをかけ、移行期間の工夫をしたなどと答弁。広田議員は「他の民間会社に託して契約をされた方が、より安全な運用が行われる」こともあるなどと述べ、民間企業と競合する巨大な会社の誕生に伴う問題点を指摘して質問を締めくくった。
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