衆議院の日米防衛協力指針特別委員会は、31日と1日の両日、総括質疑を行った。31日には土肥隆一、玄葉光一郎、桑原豊の3議員が質問した。
●首相が知らぬ間に計画進むことはないか
土肥隆一衆議院議員
この日のトップバッターとして質問に立った土肥隆一議員は、「私は60年安保の時に国会をデモで取り囲んだ一人。ガイドライン法案を見るとき、戦後の自分の人生を重ねてしまう」と心情を吐露して、質問に入った。
湾岸戦争時に日本が拠出した130億ドルについて、「小切手外交などと呼ばれ全く評価されていないのは、どのような考え方に基づいて出すのか、平和の理念が伝わっていないからでは」と述べ、小渕首相に見解を求めたが、首相はこれまでの答弁を棒読みするだけだった。
また「周辺事態には戦争状態もありうるのか」と迫ったのに対し、野呂田防衛庁長官らは「有事にならないようにこの法律を整備する」などとこれまでの答弁を繰り返すだけで、議論は深まらなかった。
土肥議員はさらに、「ガイドラインでは平時から日米が十分計画を練って、協力一致してあらゆる事態を想定して準備する。首相らが知らないうちにお膳立てされ、周辺事態と認定したとき、すぐに作戦行動に入る体制をつくるものではないか」との見方を示したが、野呂田長官は「首相や防衛庁長官の知らない間に計画が進められるようなことはない」と反論した。
●PKOとの法的均衡とるなら「国会承認」当然
玄葉光一郎衆議院議員
午後から質問に立った玄葉光一郎議員は、1950年の国連安保理決議に基づいて駐留する「朝鮮国連軍」への後方支援について、「米軍以外の軍隊に対しては何がどこまでできるのか」と問いかけた。
外務省の竹内北米局長は「米軍以外の軍隊には、周辺事態法での後方地域支援はできない」と答え、具体的には「認められるのは7つの在日米軍基地のみで、自治体の管理する空港は含まない」「傷病者医療、給油給水は国連軍地域協定で可能」とした。
国会承認について、玄葉議員は「周辺事態がおきて、基本計画全体や自衛隊出動全体が国会で否決されたとき、そこに含まれた機雷掃海や邦人救出は不可能になるのか」と質問。
野呂田長官は、「基本計画が承認されなくても、自衛隊法で認められているこれらの事項ができなくなることはない」と見解を示し、玄葉議員は「今のことを踏まえて修正議論に臨む」と述べた。
また、政府が国会承認事項としない理由として「他の法律との均衡」を挙げていることに、玄葉議員は「PKOやPKFの本体業務への派遣は国会承認となっているのに、それより重い周辺事態が国会報告であるのはバランスが取れない」と指摘。これに対して、政府側はまったく反論できなかった。
●協力以来への自治体や働く人の意思守れ
桑原豊衆議院議員
桑原豊議員は、まず米軍に対する自治体・民間協力について取り上げ、「米軍からの協力依頼については、正当な理由による自治体の拒否は保障されなければならない」と主張。
民間協力については「例えば弾薬の輸送も考えられる。会社との契約であっても、実際にそこで働く個人が拒否する自由意志は守られるべきだ」と政府の考えをただした。
それに対し、伊藤・内閣安保危機管理室長は「本法案は事業者と従業員との関係についてまでは及ばない。それぞれの法律関係で対応すべきもの」と冷ややかな対応。
続いて桑原議員は、日米両国の自衛権に対する概念について、「日本は専守防衛を旨とし、集団的自衛権の行使を認めないとの考え方。一方で世界最強の軍事力をもち、諸問題に対し積極的に抑止力を働かそうとするアメリカ。つじつまが合わなくなるのではないかと危惧を感じる」と政府の認識をただした。
高村外相は「両国の活動はすべて国連憲章・国際法に合致する。自衛権の行使について基本的な差はない」と法理的判断にとどまり、実際の行動に対する判断は見られなかった。
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