10日から始まった参議院日米防衛協力指針特別委の総括審議。2日目の11日は、柳田稔議員が民主党・新緑風会の2番手として立った。
柳田議員は法案の質疑に先立って、新たな展開をみせているコソボ問題への政府の対応について質問した。高村外相が「政府として、ユーゴ政府による民族浄化をやめさせるためのNATO軍の行動を理解している」と述べたが、柳田議員は「大使館が誤爆を受けた中国はピリピリしている。空爆の即時停止を主張している」と、中国など各国の反応も考慮すべきと強調した。
続いてガイドライン法案への質問に移り、まず柳田議員は「この法律に基づいて、自衛隊が日本の領土・領海外に出て行くことになる。だから慎重に議論すべき」と立場を表明。そして法案について「あまりに不備が多い。自衛隊活動の3本柱の1つを削除するなど、やっつけ仕事で出してきた印象」と批評した。
柳田議員は「世界における軍事活動」を一覧にしたパネルを示しながら、国連軍、他国籍軍、PKOなどの定義を再確認。続いて「集団的自衛権」について「国連憲章には自然発生的権利としてうたわれて」おり、「新ガイドラインに基づく自衛隊出動は、当然国際的には『集団的自衛権』と見なされるはずだ」と、諸外国と日本間の認識の差を強調。
柳田議員はさらに「米軍が北朝鮮のミサイル施設を攻撃した場合は周辺事態にあたるのか」と「周辺事態」の想定ケースを具体的に提示し政府を追及。しかし小渕首相は「仮定の話には答えられない」、野呂田防衛庁長官は「北を攻撃したか否か、アメリカから要請を受けたか否かに関わらず、あくまでもわが国の平和と安全に影響を与える事態かどうかで判断する」などと従来の答弁を繰り返した。
これに対し、柳田議員は「政府は、周辺事態は地理的概念ではないとし、特定のケースには答えられないと逃げる。さらに自衛隊活動の位置づけに、国際基準にない新たな概念を持ち込もうとする。周辺事態か否か、実際に起こってみないとわからないのでは、一体何のための法案審議なのか」と憤った口調でこれに反論した。
また政府が認定するとしている「後方地域」の概念についても「戦闘行為が行われないことを、何をもって具体的基準とするのか。例えば北朝鮮の潜水艦が活動している地域はどうなのか」と迫った。
野呂田長官は「ミサイルや潜水艦の不安があるような地域では、後方支援は行わない」と安全性を強調したが、柳田議員は「孫子の兵法」を例に上げ、「相手側は弱い所を狙って叩いてくる。安全地域と言い切ることは、どうぞ攻撃してくれと言っているようなもの」と論理の弱さを突き、議論は最後まですれ違いのままだった。
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