参議院日米防衛協力指針特別委員会は12日、齋藤勁、伊藤基隆の両議員が質問。物議をかもしている「野呂田長官発言」を中心に、3会派による修正案に対しても追及した。
斉藤勁議員は冒頭、11日の審議で「ガイドライン成立の結果、沖縄の米軍基地が真っ先に影響を受けるのではないか」と質問した島袋宗康議員(二院クラブ)に対して、野呂田防衛庁長官が「そのような危惧もありうる」旨の答弁を行ったことにふれ、「沖縄の歴史の中で、過重な負担を心配しての質問に対して、きわめて問題な発言だ」と、発言をトップ記事で報じた沖縄の地元紙をかざして追及した。
野呂田長官は「真意は別の所にある。特定の自治体に過重な負担をかけることはない。舌足らずだった」と陳謝。小渕首相も「今の野呂田長官の取り消しで理解を願いたい」と述べた。
しかし齋藤議員は納得せず、「昨日と今日で発言が簡単に変わるような委員会審議や大臣の姿勢が続くようでは政府を信頼できない。審議を続けられない」とし、政府として改めて統一見解を出すよう求め、審議が一時中断した。
続けて「3会派」修正案で削除された「自衛隊による船舶検査」について、齋藤議員は特に「国連決議事項とすべきか」「威嚇(警告)射撃は憲法上許されるのか」について重点的に追及した。
大野功統議員(自民)は「国連決議により国連憲章に基づく旗国の義務が発生するので意義がある」、山中曄子議員(公明・改革)は「国連決議、(船舶が掲げる)旗国の了解、周辺事態に限ること、以上3つの要件が必要」としたのに対し、東祥三議員(自由)は「国連決議の下に行うのであれば、他国と同一の行動を取れるようにすべき」と日米安保下の「周辺事態」と国連下の「安保理決議」を厳密に分けるべきとの立場を強調した。
船舶検査時の「威嚇(警告)射撃」について、11日に「合憲」と発言した野呂田長官から釈明があり「数分間の記者会見の後、訂正のため官房長を派遣したが間に合わなかった。誤解を与えた」と再度陳謝し、小渕首相も「政府としては原案を出している立場。合憲とも違憲とも言えない。検討中だ」と弁明した。齋藤議員は「政府見解と異なることを言ったから、各紙が大きく取り上げているのではないか。連日真剣に議論している中で、このように軽々しく発言されるのでは、議論を続ける意味がない」と厳しい口調に。
最後に齋藤議員は「周辺事態」の具体例として「東南アジアのある国で内乱があり、米軍が出動した場合」を提示。西村眞悟議員(自由)は「周辺事態は地理的概念ではない。その時点で決めることが大きな抑止力、安全装置になる」とかわし、また大野議員は「あくまで赤信号(自衛隊法による防衛出動)と黄信号(周辺事態法による出動)を区別する」と従来の政府見解に基づくものであることを強調。
齋藤議員は「自自間で考えに相違があるようだ。憲法解釈を変えて、周辺事態を集団的自衛権とみなすのではないか」と疑念を拭い去ることができないまま質疑を終了した。
なお小渕首相と野呂田長官は、午後からの島袋議員の質問の前に発言を求め、「沖縄県民の皆さんに誤解を与え、心配をかけた」と再度陳謝した。
|