通常国会後半の最大の焦点である中央省庁等改革関連法案と地方分権一括法案の審議が25日から衆議院行政改革特別委員会で始まった。全閣僚が出席しての総括質疑第1日目は、民主党から鳩山由紀夫幹事長代理と田中慶秋・同特別委筆頭理事の2人が質問に立ち、政府の基本姿勢などをただした。
●「政策評価」は省庁から独立した内閣府で
鳩山由紀夫幹事長代理
まず鳩山議員は、冒頭に「大所高所からの議論をしたい」と持ちかけ、小渕首相に国をリードする上での理念を尋ねた上で、「日本中が依存心の固まりになってしまったことが問題。国も地方も国民一人ひとりも自立する心をもって行動できる、自分の頭で判断できるようになるか、まさに尊厳のある国をどうつくるかが一番の問題」と持論を展開した。
鳩山議員が「法案を見ると地方に対する国の関与が強くなっているところも見受けられる。地方に任せると危ないという国のおごりがあるのでは?」と疑問を呈したのに対し、野田自治相は「非常時や緊急時に国が助言や勧告をする道があることは事実。自治体が自らの責任で自主的に判断していただく体制を強化し、国の関与のあり方をルール化し、基準を明確にしたのは大きな前進だ」と述べた。
また鳩山議員は、事業評価制度で2年間の2割の事務を削減した三重県の例を示し、「まず政策の評価を行い、それに基づいて事務削減していくべき」と指摘。野田自治相も「行政の機構はどういう形に仕組んでいくかと同時に、動かす人間の意識もいっしょに変わらないと実効はあがらない」と応じた。
さらに政策評価する部局が総務省内に設けられる政府案に対し、鳩山議員は「郵政省、自治省も入っている省内で自分たちを裁くことはできるのか」と問いただし、「むしろ首相の補佐機能としての内閣府に設けるほうがよい」と提案したが、太田総務庁長官は「総務大臣に与えられる首相への勧告権は他にはないもので、充分に役割は果たせる」と反論した。
さらに鳩山議員が「今回の地方分権一括法案は地方の財政危機の解決に資するものか?」と質したのに対し、小渕首相は「今回の法案には地方の財政を手当てする内容は含まれていない。地方分権を推進することに伴って、地方の財政を裏打ちできるような財源を強化すべきであり、政府としてできる限り早く国会に新たな法案を提案しなければならない」と検討を急ぐ考えを示した。
最後に鳩山議員は、財政・金融の完全分離と金融行政の一元化が今回の中央省庁改革法案にもりこまれなかったことに触れ、「公党間の合意がそんなに簡単にやぶられていいのか」と小渕首相に迫った。しかし「政党間協議が合意にいたらなかったことは残念。状況をご理解いただきたい」と繰り返すばかりだった。鳩山議員は「金融パニック回避のために、民主党は総理の責任を敢えて追及せずに、政府に協力した。総理自身が会議の中でおっしゃったことがなぜできなくなったのか。別な圧力が働いたとしか考えられない」とこれに反発。「公明党が示した妥協案に合意をしておきながら、それすらあいまいにされている。官僚にズルズルと押し戻される政府の姿勢を憂慮する」と述べ、質問を終えた。
●まず特殊法人の改革から
田中慶秋議員が追及
「これからの少子高齢化の解決策として増税はダメ。行政改革こそが今の議題。かつ行政スリム化にはスピードが求められている」。質問の2番手に立った特別委員会筆頭理事の田中慶秋議員は質疑の冒頭、行政改革の焦点をこのように整理、論戦をスタートさせた。
田中議員はまず「経済不況の現状で民間部門は、自ら身を削ってスリム化している。一方中央省庁はいまだに30万人をかかえ、どこがスリム化か」と批判、単なる機構いじりに終わる可能性はないか、追及した。太田総務庁長官は「30万の内29万は5年後に公社化する郵政職員。実質的には7千人だ。また省庁だけでなく部局の数も削減される」と弁明した。
また歴代政府が10年間の国家公務員削減数目標を当初の10%から20%、25%とたびたび変更してきた点を指摘し、具体的な方策についても問いただした。小渕首相は「当面減量化をめざすとのことで、まずは目標をかかげた。厳しい数字だが実現方努力する」と述べ、具体的に説明できなかった。
続いて田中議員は特殊法人の問題について、「公務員定数削減の隠れみのになっている。天下りで給料がアップし、多額の退職金まで出している」「25%削減職員の受け皿にしないよう、まず特殊法人改革を」と迫った。太田総務庁長官は「われわれも問題意識はある」としたが、その実施については中央省庁再編以降の課題であることを強調。田中議員は「一方で今度成立した情報公開法では、対象に特殊法人を入れなかったではないか」と反論した。
また田中議員は、特殊法人のひとつ「本州四国連絡橋公団」の赤字決算について総務庁行政監察局が指摘していることにも言及し「100円の利益をあげるために211円かかる計算だ。また借金の償還に271年かかるという。こういうことで本当に行政改革を行う気があるのか」と政府の改革に対する熱意をただした。これに対し野中官房長官が「問題なのは定年まで役所に残れない、肩たたきのシステム。その受け皿のために特殊法人を作り、肥大化させていった。小渕内閣から、給与の高い特殊法人役員は、事務次官以下に下げるよう指示を出した。これまでのことは政治家を含めて反省しなければならない」と同調し、自己批判。
田中議員は最後に「今すぐの特殊法人改革は無理だろうが、それ位の気持ちで対処してもらいたい」と強く要請した。
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