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2004/10/13
衆議院本会議代表質問(岡田 克也)
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岡田 克也

 民主党代表の岡田克也です。
 私は、民主党・無所属クラブを代表し、昨日の総理の所信表明に対して、私自身の見解を明らかにしつつ質問をいたします。
 質問に入る前に、豪雨や台風による被害に遭われた皆様に対し心からお見舞い申し上げます。私は、福井、三重、香川などの被災地を訪れ、関係者の皆さんの切実な声を聞いてきました。政府に対して被災地域の実情に即した早期復旧のための対策を要望します。

 さて、昨日の総理の所信表明演説は、各省庁の政策を羅列しただけで、重要な政策課題について具体性に乏しく総理のやる気が伝わってこない官僚の作文にすぎないというのが私の第一印象です。具体的に重点を四点に絞って質問します。

 まず第一に小泉総理の基本的な政治姿勢について質問します。
 昨日の総理の所信表明演説は、本来特別の意味を持つものであったはずです。即ち、小泉総理が内閣改造を終え、新たなスタートにあたって、日本国総理大臣として取り組む国政の基本方針を国民に対し明らかにし、理解を求めるべき重要な機会でした。しかし、総理が残された任期2年間で何をやり遂げようとしているのかが伝わってきません。小泉総理は内閣改造後の記者会見で「郵政民営化実現内閣と名付けてもいいのではないか」と述べられました。私はこの発言に強い違和感を覚えました。内閣や内閣総理大臣がなすべきことは、国民が将来にわたり平和で安定した生活ができるよう国家の運営を行うことであり、国際社会の中で日本がその責任を果たしていくことです。郵政改革は重要な政治課題ですが、いまの日本が直面している課題の一つにすぎません。内政外交上の重要課題が山積しています。外交上の課題として、戦後世界の平和の創造に重要な役割を果たしてきた国際連合が重大な危機を迎えています。日米同盟のあり方も問われています。総理自らが二度訪朝したにもかかわらず、その後の日朝関係は完全に行き詰まっています。日本にとって米国と並ぶ貿易相手国であり、北朝鮮の核問題解決に重要な役割を果たすことが期待される中国との関係も大きな懸案を抱えています。悪化するイラク情勢への対応も重要な課題です。これらについての具体策が何も語られていません。内政面では国民の老後の不安を解決するための年金制度の抜本改革の方向性、地方分権の推進のための大胆なビジョン、地方経済の再生と雇用の安定のための具体策、そして歳出構造の見直しと税制改革の方向性を明らかにした財政構造改革など、いずれも内閣が全力を挙げて取り組まなければならない課題ばかりです。これらの問題に対して、総理はいかなる優先順位を付けて具体的にどう取り組もうとしているのでしょうか。そして残された2年間の任期で少なくとも何を実現しようとしているのでしょうか。小泉総理が郵政改革を重視していることはよくわかりました。しかし、それ以外に今後2年間で特に優先して取り組むべき課題は何なのか、改めて総理が国民に対して明らかにすることを求めます。
 昨年秋の総選挙、そして今年の参議院議員選挙を経て、日本も本格的な政権選択の時代を迎えました。次の総選挙において政権交代することが私、そして民主党の使命です。小泉総理の内閣改造に先立って、私は民主党の『次の内閣』を新たにスタートさせました。いつでも政権交代できる準備はできています。私は小泉政権に対し、批判のための批判に終わることなく、国民に選択肢を示すための前向きの国会論議を行います。この本会議で『次の内閣』の鳩山ネクスト外務大臣、横路ネクスト厚生労働大臣が質問に立つのをスタートに、予算委員会や各委員会において、『次の内閣』のメンバーを先頭に、堂々たる国会論議を開始します。もちろん、私も小泉総理と党首討論を重ねたいと考えています。国民の立場に立って率直で正直な議論を心がけていきます。小泉総理が逃げることなく党首討論を開催し、私の質問に対し正面から答弁されることを求めます。

 第二に外交の基本課題、特に日米関係について質問します。日中関係、日朝交渉などその他の具体的な問題は、鳩山ネクスト外務大臣に委ねます。
 小泉総理は内閣改造後の記者会見で「日米同盟と国際協調を両立させていくのが日本外交の基本である」と述べられました。しかし、いままでの小泉外交の最大の問題は、日米同盟と国際協調が両立できていないことです。
 世界の平和と安定の確保のための最後の手段としての武力行使は、国連の安全保障理事会の決定に基づき行われるべきであり、各国の判断に基づく武力の行使は安保理決議がなされるまでの間の自衛権の行使に限定されるというのが、国連憲章の最も重要な理念です。他方で、米国のブッシュ政権は単独行動主義を強調し、先制攻撃を正当化しています。このことは国連憲章の理念に対する挑戦であり、戦後の世界平和創造のための枠組みを根底から揺るがす可能性を持つものです。世界の中の日米同盟の名のもとに、この米国の単独行動主義を補完し、助長してきたのが小泉総理です。そのことがいかに重いことであるかとの認識は総理にあるのでしょうか。総理は国連憲章の理念と先制攻撃・単独行動主義との本質的な矛盾に対し、どのように考え、今後その矛盾解決に向けてどのような努力を行おうとしているのでしょうか。私は、テロや大量破壊兵器の拡散という世界の直面する問題を解決するためにも国連の果たすべき役割は極めて重要で、米国を国際協調路線へと引き戻すことこそが同盟国としての日本の役割であると考えます。総理の答弁を求めます。
 イラク戦争は、その米国ブッシュ政権の先制攻撃の不幸な失敗例です。まずイラク攻撃先にありきの中で、大量破壊兵器の存在を理由に多くの国々の反対の中、戦争が開始されました。大量破壊兵器はありませんでした。国家が自らの判断で戦争を開始することを容認することが、いかに危険であり、問題があるかということを改めて認識させることになりました。小泉総理も大量破壊兵器があることを根拠にイラク戦争を支持しました。総理は、この戦争が国連決議に基づくものであったことを強調し、自らの誤りを決して認めようとしません。仮に政府の見解に立ち、国連決議に基づく武力行使であったとしても、そのことが事実誤認に基づき戦争を支持したことを正当化するものではありません。小泉総理、あなたはあまりにも軽率だったのです。罪のない数多くの命を奪った戦争を支持したことは重大です。そして、リーダーにとって重要なことは、自らの誤りを率直に認めることです。イラク戦争を支持したことは重大な過ちであったことをはっきりと認め、国民及びイラク国民に対して謝罪すべきです。答弁を求めます。
 次に日米同盟の将来について質問します。米国からは、1996年の橋本・クリントン両首脳による共同宣言で確認したアジア太平洋地域を超えて、インド洋や中東をも含む日米同盟への拡大が求められています。米軍の再編成・トランスフォーメーションもその流れの中で行われています。しかし、このことは日本の安全保障政策にとって大きな政策転換を意味します。単独行動主義・先制攻撃を主張する米国との同盟関係をいま拡大することが日本の国益にかなうことなのか、日米安保条約との整合性はどうなるのか、これらの根本的な問題点について総理の明快な答弁を求めます。
 そして、日本の安全を確保するためだけの日米同盟でない以上、日本の過重な基地負担や日米地位協定の不平等性の見直しは必ず実現しなければなりません。私も沖縄で米軍ヘリコプターの墜落現場を見て、普天間基地問題の解決は時間との競争であると、改めて認識しました。先の戦争で言葉に表せない犠牲を受けた沖縄県民が、その占領時代と実質的に変わらない過大な基地の負担を強いられている現状は放置できません。沖縄基地の国内外への移転を実現しなければなりません。同時に日本の米軍基地の規模を縮小しなければなりません。困難な問題ですが、国民の理解を得て乗り越えなければなりません。その覚悟と具体的プランが総理にあるのでしょうか。総理の答弁を求めます。

 第三に内政上の重要課題について質問します。
 まず年金制度改革です。10月1日から改正年金法が実施になりました。先の参議院議員選挙を通じて示された、本当の意味での年金制度の抜本改革を望むという国民の気持ちは無視されたままです。民主党はいま全国各地で年金問題を議論するための集会を開催していますが、国民は明らかに政府の説明に納得していません。私も各地の集会に出席し、持続可能な年金制度を何とか確立してほしいという国民の切実な思いを強く感じています。年金制度改革を先送りせず、しっかりと議論することが政治の責任です。
 総理は年金の抜本改革について、三党合意を持ち出して早急に協議を開始することが必要だと言われますが、抜本改革案について責任を持って自民党内をまとめようとの姿勢は見られません。所信表明演説の中でも単に課題を列挙して「難しい問題に一つひとつ答えを出していかなければなりません」と他人事のように述べるだけです。それでは単なる先送りにすぎません。私は、改めて小泉総理に提案します。第一に基礎年金相当部分について全額税方式により一元化し、その財源に年金目的消費税を活用すること、第二にいわゆる二階建て部分については一元化を前提に国民年金対象者を含めた負担と給付のあり方について検討すること、第三に納税者番号制の導入を行うことの三点を小泉総理が約束するのであれば、与野党間の協議は意味あるものとなります。以上の提案について小泉総理はどう考えるのか、誠意ある答弁を求めます。
 次に地方分権について質問します。総理、私はいま民主党代表として、なるべく地方を訪れ、一人でも多くの人々に会い、話を聞くことを心がけています。いま地方は公共事業依存型経済から自立型の経済への転換期にあり、構造変化の中で苦しんでいます。しかし同時に、国には見られない新しい動きの胎動を感じることができます。消費者の求める安心・安全な農作物作りに取り組む地域、キノコやサツマイモなどをブランド化して国に頼らない自立的な農業を目指す地域、中国市場や高齢者市場への対応など時代の変化に即した取り組みを行う中小企業など、地方には本来、底力があります。地方のエネルギーを閉じ込めてきたのが中央集権体制であり、官僚支配の構造です。地方に権限と税源を思い切って移譲して、自立型の地方経済モデル構築を競わせることが日本再生のカギです。大きな構想を持ち、本当の意味での地方分権を進めることが重要です。
 小泉総理の地方分権の進め方の特徴は、その場しのぎの将来展望のない改革だということです。平成16年度の三位一体改革は、税源移譲が先送りされたままに国庫補助負担金の削減や地方交付税の総額抑制が行われ、地方財政は大混乱しました。平成18年度までの改革については、補助金改革案の取りまとめを全国知事会に丸投げし、知事会はじめ地方六団体がこれを激論の末まとめたにもかかわらず、各省庁が大臣を先頭に反対している有様です。総理は「中央省庁の圧力に地方がおびえちゃだめですよ。しっかりしてもらいたい」と述べたと伝えられています。冗談にも程があります。しっかりしてもらいたいのは総理自身です。総理にはこのような各省庁の公務員、そして総理が任命した各大臣の動きに対して、これをやめさせる責任があると考えますが、その意思があるのか答弁を求めます。
 そもそも、大きな混乱の原因は総理にあります。地方六団体も明確に述べているように、三位一体改革の全体像が示されていないことが、無用の混乱を招くことになりました。最終的にどれだけの税源移譲と国庫補助負担金等の廃止を行うのか、そして税源移譲を行った結果発生する自治体間格差についてどこまで地方交付税によって措置するのかが明らかでなければなりません。全体像を示さない理念なき部分的手直しにとどまっているために、理念なき抵抗が行われています。総理は平成18年度までの全体像を年内に決定すると言うだけですが、18年度以降を含めた三位一体改革の全体像を早急に示すことこそが必要です。この点について総理はどう考えているのでしょうか。答弁を求めます。
 次に郵政改革について質問します。総理は郵政民営化を改革の本丸と位置付けています。私は、ユニバーサルサービスが求められる郵便事業を別とすれば、郵貯・簡保事業については民間でできることですから本来は民営化するのが筋であると考えています。もちろん、民営化は手段であって目的ではありません。国民の立場に立ってプラスになる民営化でなければ意味がありません。民営化を行うにあたって、総理は少なくとも次の疑問にきちんと答える責任があります。第一の問題は、現在規模で350兆円の資金を民営化法人が自らのリスクで運用し、利益を出すことが現実に可能かということです。大手の金融機関ですら貸出先の開拓に苦労するなかで、新規参入する郵便貯金会社、郵便保険会社がどのようにしてメガバンクの10倍規模という巨大な資金の運用を行い、かつ利益を出すことができるのか、誰もが疑問に思っています。第二の問題は、結果的には民営化に失敗し、残ったのは形を変えた官業の肥大化だったということになりかねないことです。民間が株式を保有するという意味での、本当の意味での民営化がなされるまで新規分野への進出を制限するとともに、まず事業規模の縮小を行うべきではないでしょうか。そして第三の問題は、郵便貯金会社、郵便保険会社が財投債を買い続けることで特殊法人の整理・合理化が進まない懸念があることです。これでは財投資金が特殊法人の肥大化を招いたこれまでと、何ら事態は変わらないことになります。以上の基本的問題点について総理はどう考えておられるのか、明確な答弁を求めます。
 以上、いくつかの基本的な問題についての質問を行いました。しかし、郵政民営化の問題が今後どのような法案となるかは、政府と自民党との調整を待たなければなりません。無駄な高速道路を造らないということでスタートした道路公団民営化論議が、いつの間にかほとんどすべての高速道路を税金を使ってでも建設することに見事に変わったのは、記憶に新しいところです。郵政民営化法案がどのような内容をもって次期通常国会に提出されるか注目しています。かえって日本経済に混乱をもたらし、国民にとってプラスにならないような見せかけだけの改革案であれば、小泉総理は厳しく責任を問われることになることを最後に付言しておきます。

 第四に信頼される政治を実現するための具体論について質問します。
 日本では多くの国民が政党や政治家を信頼していません。政治に対する国民の信頼がないなかで、国民に理解を求め改革を成し遂げていくことは困難です。日本歯科医師連盟、いわゆる日歯連の問題は、かつてのリクルート事件を超える問題であり、小泉総理は自民党総裁として重大な決意を持って取り組まなければなりません。所信表明演説の中で、政治とカネの問題について総理はほとんど語っていません。「政治家一人ひとりが肝に銘じ、常に襟を正さなければなりません」と、まるで他人事です。自民党総裁として許しがたい責任逃れです。小泉総理が自民党総裁として、第一に国民に対し説明責任を果たし、第二に責任ある者が国民に対し謝罪するとともに法律上又は道義上の責任を取り、第三に二度と同じ事件が繰り返されないように制度改革を率先して成し遂げなければなりません。このような視点から小泉総理に質問します。
 まず、旧橋本派の1億円ヤミ献金問題について質問します。この事件に関し会計責任者が逮捕・起訴され、村岡前衆議院議員が起訴されました。他方で、橋本元総理はじめ他の関係者は起訴されることはありませんでした。なぜ事件の解明が進む前に起訴されないことになったのか、1億円は誰が受け取り、どう使われたのかなど大きな疑問が残っています。まずこれらの点について、事実関係を当事者が明らかにすることが大切です。総理が自民党総裁として、橋本氏はじめ関係者が国民が納得できるだけの場所と内容で説明責任を果たすよう説得する意思があるのか、改めて総理の説明を求めます。また、国会で説明したいとの意向であると伝えられる村岡氏の国会証言を実現することが事実解明の第一歩と考えますが、総理の見解はいかがでしょうか。答弁を求めます。
 日歯連の事件は1億円問題だけではありません。自民党の政治資金団体である国民政治協会や自民党本部を利用した迂回献金の問題が指摘されています。確かに日歯連の国民政治協会への献金直後、自民党の特定議員の関係団体に国民政治協会から自民党経由でほぼ同額の献金が不自然になされるなど、大きな疑問が残ります。このような迂回献金が認められるようでは、政治資金規正法の改正を行っても何の意味もありません。総理は自民党総裁として、この問題について徹底的に調査を行い、国民に説明する責任があります。この点について小泉総裁はどう考えているのか、自民党の組織ぐるみのヤミ献金疑惑であり、総裁自身の問題ですから逃げずに答弁するよう求めます。
 きちんとした説明責任が果たされ、責任ある者が法律上又は道義上の責任をきちんと取ることを前提に、事件の再発防止のための制度改革が必要です。迂回献金の禁止、政治団体間の寄附の量的制限、外部監査の義務化、収支報告書の不記載に対する罰則の強化、寄附の銀行振込の義務化などを内容とする政治資金規正法改正案を成立させなければなりません。民主党は法案の提出を準備しつつあります。伝えられる自民党改革案では、再発防止になりません。総理自身も所信表明演説の中で、「政治に対する国民の信頼なくして改革を進めることはできません」と述べられました。自らの発言の重みを自覚しながら強い覚悟と決意を持って責任ある対応をされることを強く望みます。小泉総理の答弁を求めます。
 総理、最後に一言申し上げます。総理は、昨日の所信表明演説のむすびの中で、高校野球の球児やオリンピックで活躍した選手を例に挙げ、「やればできる」というメッセージを繰り返されました。「やればできる」、素晴らしい言葉だと思います。しかし、誰にも負けない努力をしたものの、華やかな甲子園やオリンピックには出場できず、涙をのんだ数多くの高校球児やスポーツ選手がいることを忘れてはならないと思います。努力した人が報われる社会を実現するとともに、努力したけれども報われなかった人々がたくさんいることを決して忘れない政治を目指すこと誓い、私の代表質問とします。

(編集部注:本文は最終稿であり、実際に読み上げたものとは若干異なります)

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