衆院議長の裁定で年金改革関連法案が差し戻しになった衆院厚生委員会で1日、菅直人政調会長が質問に立ち、丹羽厚相を追及した。
委員会では、冒頭江口一雄委員長が採決強行で審議が空転したことについて「円滑な委員会運営ができなかったことは誠に遺憾」と陳謝した。
元厚相の菅政調会長が厚生委に臨むのは厚相退任以来初めて。約140兆円の年金積立金の自主運用問題を取り上げ、「年金資金の自主運用は加入者にとって、どんなメリットがあるのか。運用収益が上がる見通しがあるのか」と厳しく責め立てた。
丹羽厚相は「従来は財投の運用部資金から借りて利息を払って運用していた。今度直接やれば、約2%の借入利息がなくなり、それだけで間違いなく健全な運用ができる」と答えたが、菅政調会長は「積立金は資金運用部に預け入れて預託金利を受け取っている。利息を払わないから得をするという認識は間違い」と指摘。「ちゃんとした答弁を」と、その根拠を執拗に求めたが、丹羽厚相の同じ答弁の繰り返しに納得せず、「質問できない」と何度も質疑を止めた。
途中、江口委員長が「中央省庁改革基本法で、年金基金の資金運用部預託を廃止するとある」と助け船を出したり、「財投預託がなくなるので比較できない」「運用は市場に左右されるもの」などと、丹羽厚相も最後には開き直り、議論は平行線のままだった。
菅政調会長が再三、厚生省が全額自主運用することに懸念を示したのに対し、丹羽厚相は「それならどこでやればいいのか。対案はあるのか」などと逆質問。これに対し、菅政調会長は「大いに議論しよう。座る場所を交代しても結構だが」と応酬。「厚生大臣が責任者でこんな巨額の資金を自主運用するのはやめたほうがいい。政治的な配慮が働くのではとの思惑だけでマーケットが動く」と説明し、「私の意見は言いましたからそろそろ自分の意見を述べたらどうか」とさらに逆襲した。
また菅政調会長は、年金積立金を年金福祉事業団が運用委託している金融機関に、厚生省OB計4人が天下りしていることを取り上げ、会社名や役職などを明らかにするように迫った。これに対し、丹羽厚相は「個人名は明らかにできない」「厚生省では把握していない」「昨夜ご指摘があってから調査中」「情報公開の認識が違う」などと再三言い逃れ、委員会はしばし中断した。
結局、大野厚生政務次官が「住友信託銀行常勤顧問1人、日本生命非常勤顧問1人、安田生命顧問1人、住友生命顧問1人。それぞれ元児童家庭局長、大臣官房付、九州地方医務局長、社会保険大学校長」と説明。丹羽厚相は「癒着がなければ問題ない」と開き直ったが、これに対して菅政調会長は「結局、厚生省が総額2000億円の手数料をばらまいて、自主運用によって権益拡大することが目的ではないか」と攻撃した。
菅政調会長は質疑後、代議士会で報告にたち、「丹羽厚相は加入者にどうプラスになるのか、その根拠を全く説明できなかった。今日の議論は富士山の入り口に過ぎない。厚生省の省益のために毎年2000億円の手数料が使われる疑問などを解消するまで議論は続けるべきで、解消できなければ廃案にすべきだ」と強調した。
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