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1998/08/25
金融安定化関連6法案、衆院本会議で趣旨説明
大手は破綻が表面化しないよう税金投入で救済――長銀救済など政府の銀行優遇策を指弾
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 今国会の焦点である金融安定化関連6法案が25日の衆議院本会議で趣旨説明され、民主党からは畑英次郎副代表が6法案のうち内閣提出の「金融機能安定化緊急措置法案及び預金保険法改正案」について代表質問し、仙谷由人企画委員長が内閣提出の不動産権利関係調整法案と自民党議員提出の関連4法案について代表質問した。

 本会議終了後、衆議院の金融安定化に関する特別委員会が開催され、法案の趣旨説明を行った。民主党など野党が法案審議に先立って日本長期信用銀行(長銀)への公的資金投入問題を集中審議するよう要求した結果、26日は集中審議が行われることとなった。野党は長銀問題で最低3日間の審議を要求している。

◎畑英次郎副代表:ブリッジバンクは大手行に適用できない

 畑英次郎副代表は日本長期信用銀行(長銀)への公的資金投入問題について「長銀は今年3月、金融危機管理審査委員会により健全であるとのお墨付きを得て1766億円もの税金を投入されたばかり。政府は長銀が破綻したとは言わず、『事情は言えないけど、とにかく税金で長銀を救済しましょう』と、すべてを国民に押しつけようとしている」と批判。「国民を犠牲にしてまで長銀を救わねばならないのは、今まで自民党が銀行業界から多額の政治献金を受けてきたからか」と難詰した。

 小渕総理は「今回の措置は金融システム安定のため」と答えるのみで、なぜ銀行を優遇するのか明確な説明はなかった。

 畑議員は「不良債権の抜本処理には徹底した情報開示、責任者を明確にし問題を先送りしないこと」としたうえで、「政府は今回の長銀のように、実質的に経営破綻状態にある大手銀行に対しては、破綻が表面化しないように税金を投入して救済する。そうすれば誰も責任をとらなくて済む」と指摘。不透明な税金による銀行救済に反対する立場から、現行の金融機能安定化緊急措置法の廃止を主張した。

 小渕総理は「(同法は)金融システム安定のため、銀行の優先株などを引き取り、自己資本充実を図るもので、引き続き重要」との見解を示した。

 また、畑議員は不良債権や破綻の認定について、「長銀に対する姿勢をはじめ、検査結果の公表について言を左右にする金融監督庁や大蔵省に任せておけない」として、金融再生委員会を新設する民主党案をアピール。

 ブリッジバンク法案について畑議員は「政府は大手銀行は税金を投入して救済するのだからナンセンスな質問ではあるが」と前置きし、「政府案では第一段階で金融管理人が破綻銀行を管理することになっているが、この時点で預金者や優良な債務者は他の金融機関に取引を移す。第二段階としてブリッジバンクを設立しても、不良債権や要注意債権ばかりが残った銀行をどこに営業譲渡しようというのか」として、政府案を大手銀行に適用することは困難と指摘した。宮沢蔵相は「ブリッジバンクがあれば預金者が保護され、2年間の間に合併相手も出てくる」と、質問内容にはまともに答えなかった。

◎仙谷由人企画委員長:借りたものを返さない「権利調整法」

 仙谷由人企画委員長は不動産権利関係調整法案について、「債権の回収にかかわる紛争の解決機能を裁判所からもぎとって行政の権限内で行おうという、司法の独立を打ち砕くような法案をなぜ提案したのか、8月21日の長銀と住友信託銀行(住信)との合併に向けた総理などの談話を見て、その恥知らずな企図を感得した」と切り出した。

 日本リース、日本ランディック、NEDに有する債権計5200億円の放棄を含む長銀のリストラ案について、仙谷議員は「長銀の日本リースなどへの貸付金債権は3月期決算で何分類の債権だったのか(不良債権とされていたのか)」と質問したが、小渕総理は「個別行の貸出先に関する分類などは開示できない」と答えた。

 また、現行の税法上、子会社などの合理的な再建策と認められればこうした債権放棄は損金算入が認められることから、仙谷議員は今回の法案について長銀の例から「国民の税金投入という裏打ちのもと、権利調整委員会の『調停(仲裁)』というお墨付きを得れば、銀行・債務者・株主も何の咎めも受けず、銀行は税を減免され、債務者は銀行からの借金を支払わなくてもいいという制度が創設される」ものと指摘。「結局、バブルの陶酔のなかで、自らの代役として踊らせた系列ノンバンクに溜まった不良債務の支払いを免除するもの」と指弾した。

 また、仙谷議員は「このような特典を受ける債務者は、サラリーマンであろうと個人営業者であろうと、株式会社であろうと有限会社であろうと差別されないのか」として、差別されないとしたら「まずは阪神淡路大震災によって住宅ローンの残った家が壊れた方々の残債務を一斉免除すべき。次にバブルの渦中に住宅ローンを借りて苦しむサラリーマンの残債務をすべて免除する調停に銀行等が応ずるべき」と述べ、差別規定があるとしたら憲法に違反すると指摘した。小渕総理は「調停は関係者の合意に基づくもので、事業の種類、規模には関係しない。債務者の事業の再建を目的とした法案なので、個人は対象とならない」と答えた。仙谷議員は「貸し手側である銀行が、バブルの共犯者である得意先がすすめた不動産や株、ゴルフ会員権、絵画購入のための融資を、銀行の好みでカットすることになる」「極めて恣意的裁量の制度」と批判した。

 さらに「主にゼネコン、ノンバンク、不動産業を対象に債権放棄されることが予測されるが、借りたものは返すということはコモンセンス」として、「この権利調整法によって、日本人と日本の経済社会がコモンセンスさえ否定し去ることになる」と憂慮を表明。「司法権の独立を犯し、人に対する差別そのもので、日本中をモラルハザード(道徳の危機)の大波に巻き込む法案」として、直ちに撤回するよう要求した。

関連URL
  代表質問1
 http://www.dpj.or.jp/news/?num=11607
  代表質問2
 http://www.dpj.or.jp/news/?num=11606
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