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1998/09/19
初の地方議員フォーラムを開催/約500人が参加
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上)会場風景、下)大森教授



上)高橋教授、下)北村助教授
 民主党は9月19日から21日にかけて、初めての全国規模の2つの研修会を開いた。19日には約500人が参加しての地方議員フォーラムが、ホテルニューオータニ(東京・千代田区)で行われた。

 会議の冒頭で、羽田孜幹事長、中野寛成代表代行、鳩山邦夫副代表が「参院選での皆さんの献身的な努力に感謝する」とそれぞれあいさつ。菅直人代表は「先の参院選では国民が自民党にレッドカードを突き付けた。次の衆院選で政権交代をめざしていくが、来年4月には統一自治体選がある」として、「地方を中心とした新しい日本の姿をつくるために、難しいがやりがいのある時代を迎えている」と地方議員、候補者の奮起を促した。つづいて基調講演、本部からの提起が行われた。


【講演の要旨】


●基調講演「分権改革と地方議会」
大森彌・東京大学大学院総合文化研究科教授
「地方議会は国会の真似やめ、活性化を」

 自治体運営の主人公は首長と地方議会のはずだが、議会は脇役だと思われている。
まず、国会モデルから解放されてほしい。国会議員の猿真似である議員バッチをはずしてはどうか。議事堂の作り方も、議院内閣制の国会とは違って、皆さん(地方議員)と首長は別々に選ばれているのだから、雛壇が前にあって全員が首長の方を向いている必要はない。円形の議会で、必要な時だけ執行機関を呼び、傍聴席は議員の正面にするという議会を是非つくってほしい。

 議会は首長とは別に住民から独自に選ばれているのだから、本当は地方議会で与野党関係があるはずがない。しかし国会の政党モデルをそのまま持ってきているから、執行機関をチェックするという議会の機能を発揮できなくしている。

 議会運営規則は戦後、標準的な規則が作られたが、今でもワンパターンだ。質疑とは、討論とは何か。議員は一方的に質問するだけで、相手からの質問を受け付けないというのは、世間一般の考えとは違うが、そうしないと議会の運営がうまくいかないと議会事務局が考えているので、そうなっている。ルールは必要だが、細かい点まで自分たちを縛ってしまっては議会人としての自殺行為だ。

 条例制定権の拡充が議会を活性化する。議会が独自に条例を作る機能を持つため、例えば首長の調査機関や企画室を議会も使えるようにしてはどうか。
 地方議会が多様な姿で活性化すれば、中央の誰かにコントロールされることはない。


●課題別講演(1)「市町村での介護保険事業計画・条例づくりの課題」
高橋紘士・立教大学コミュニティ福祉学部教授
「地域経済の核に福祉サービス位置づけよ」

 21世紀へ向けて、日本は世界のどの国も経験したことのない未踏の高齢社会に突入する。

 福祉サービス(ヒューマンサービス)は、土木事業なみに雇用を生みだす。福祉を地域づくりのコアにおくことが重要だ。介護保険制度は普遍的な枠組みで社会的な介護をつくりだした。また、少子高齢対応型社会経済システムへの組み替えの緩やかなスタートであると言える。

 これからの市町村は、地域の介護ニーズに相応しい介護保険事業計画の基盤整備をすること、そして多様な質の高いサービス、地域ケアをマネージメントすることが課題だ。

 また、介護に関心のある市民が育っていることを受けとめるべきだ。サービスの評価、苦情処理などを行政OBではなく、アマチュア(市民)が評価していくことで、介護が地域の共通の課題として認められていく。
 少子高齢化社会にむけ、地域で福祉を内部化しないかぎり、地域経済を支えていくことはできない。


●課題別講演(2)「地方自治体の環境政策と環境基本条例」
北村喜宣・横浜国立大学経済学部助教授
「総論段階からの市民参画が必要」

 法律は社会の意識の変化に伴っておらず、縦割り行政を反映した縦割り立法となっている。現行の法体系では環境配慮は十分行われていない。

 環境アセスメントについては、他の法律での環境配慮が欠如していたり、情報公開の不十分さ、差し止め訴訟の困難さなどから、アセスメントへの期待が大きすぎる。出てきた結果を何に照らして判断するのか、根拠が明らかではない。自治体レベルで強制力のあるローカルルールを条例として作ることが必要だ。

 また、「環境基本条例」を定めても、計画のほとんどは「環境サイドの作文」という意識が事業部局にある。この意識を変えないかぎりだめだ。滋賀県が知事直属の環境監制度を創設した。環境優先の理念づくりや情報公開・市民参加のあり方を示すことは政治的なことがら。行政の政策をチェックして市民に提示することが議会の役割だ。

 産業廃棄物処理場建設の是非をめぐって各地で行われている住民投票は、土俵際での住民参加になっており、効果をあげにくい。よく「総論賛成・各論反対」というが、総論段階で住民を参画させる努力をすべきではないか。


●活動提案・質疑討論
「統一地方選を機に全国ネットワーク作ろう」

 地方議員フォーラムの最後には活動提案と討論が行われた。前川忠夫組織委員長が「党籍を持つ人だけでなく、賛同してくれる人を仲間に、47都道府県ごとや300小選挙区単位で幅広いネットワークをつくってほしい」と要請。来年の統一地方選挙後を目途に、全国的なネットワークを形成できるように準備を進めたいと述べた。

 具体的な取り組みとしては、1.地方議員への情報提供、情報交換の場として「地方自治通信」(仮称)の発行 2.各県・各ブロック単位での「地方政策セミナー」の開催 3.統一地方選にむけて、政調の協力を得て「政策集」等の発行 4.各県の組織と連携して、統一地方選挙候補者の擁立とバックアップを推進したい――などの方針が示された。

 質疑応答では、「特に新人・女性の候補への支援を手厚く」「自治体単位での党組織も認めてほしい」などの要望や、「市民と同じ高さの視線をもつために、『先生』と呼び合うのはやめよう」「民主党ホームページの中に自治体議員コーナーを設けて、情報提供を」などの意見が出された。

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