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1998/09/20
民主党全国研修会ひらく
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 民主党の各地方組織からの代表者や国会議員、自治体議員が一堂に会して、20、21両日、初の全国研修会がホテルニューオータニ(東京都千代田区)で開かれ、約700人が集まった。
 3つの基調講演、2つの本部提起、分科会討論などが行われ、今後の選挙対策や政権構想について活発な意見が交換された。

●基調講演I「参院選挙結果と今後の政治」
橋本晃和・国立政策研究大学院大学教授
「新無党派層はイデオロギーを持たない」

 新無党派層とは、日頃特定の政党を支持していないが、投票する段になってどこに投票するかを決める。もはや「有権者は普段から政党支持がある」という考えは捨てなければいけない。今回の参院選では、自民党を支持している人が他の政党に投票した「浮気率」も6割あった。組織がたくさんあるから票がたくさん入るという時代は終わった。

 アメリカについていけば良いという体制イデオロギー、経済は右肩上がりに成長するという生活イデオロギー、この2つの神話が崩壊し、特定の政党を支持する日本人はもはや例外的になった。2つのイデオロギーにしがみついているのは官庁の人だ。
 金融再生法案のこの間の経過で、1つの政党が官庁と組んで法律を作るという構造を終わらせた民主党の功績は非常に大きい。アメリカに対して小渕さんがきちんと説明できるとは思えない。アメリカと日本の関係も新しいルートを作らなければいけないが、民主党は政権を狙うからには外交政策をきちっと詰める必要がある。
 消費税を3%に下げろという世論はいまだにあるが、3%に下げろという人は前回の衆院選、参院選でほとんど投票に行かなかった。民主党が3%を公約にしたら得票は半分になるだろう。

 政党という回路を通じないで、その時その場になって誰に投票するかを決める人々には、日頃からこういうことをきっちりやっていると見せていなければならない。地方で組織を作るのはたいへんなことだが、イデオロギーがない中、信じるものはお互いの関係しかない。民主党本部行きの改札口を作るつもりで、地方組織を作ってはどうか。


●本部提起〈参院選挙総括と総選挙体制の構築〉
戦(いくさ)に勝てる組織、候補者を

 熊谷弘選挙対策本部事務総長は「新無党派層が多数派となったとの橋本さんの講演だったが、基本的に選挙は戦(いくさ)である。きちっとした勝てる体制を整えることが必要だ」として、統一地方選挙に向けて、(1)地方組織の体制をつくること(2)他党との選挙協力を組み立て選挙戦に備えること――の2点を課題として挙げた。

 次に山花貞夫選対委員長が、衆院選および統一地方選挙に臨む基本方針を発表。中でも、(1)衆議院候補者は全員、小選挙区で立候補することを原則とする(2)自民党に勝利するため、野党間の選挙協力をすすめること――を強調。小選挙区立候補予定者の調査・発掘・調整・検討をし、9月末日までに党本部選対委員会まで報告することを要請し、「次期総選挙は政権を争う選挙である。9月以降、みなさんのご意見を基に本格的な活動をしていく」と述べた。

 質疑・討論では、先に講演を行った橋本教授が、「参院選挙後のわれわれの調査で、参加意識の強い人ほど民主党に投票したという結果がでた。地域で小さな輪を作る。そこに参加する人が民主党に投票するということは確かだ」と述べた。


●本部提起〈当面する重点政策課題について〉
「党首会談合意守られなければ「政局」に

 まず中野寛成代表代行が、衆議院金融安定化特別委員会の野党筆頭理事として、この間の金融再生法案をめぐる攻防、民主党の主張を解説した。
 中野代行は「今回は主客逆転していて、野党に対して自民党が修正要求し、我々がどこまで飲むのかという立場だ。自民党の政調会長が『等』の1文字で未練たらしく長銀に公的資金を入れようとしても、我々が気に入らないことはやれないのだ」と強調。「民主党の政権担当能力を如実に示したのがこの金融再生法案だ」と胸を張った。

 つづいて伊藤英成政調会長が「公平・公正なルールづくり、安心・安全な社会、官主導から市民、市場、地方へ、という党の基本理念の下、今回の金融システム改革にも取り組んでいる」と語った。また、情報公開法案、祝日月曜化法案など、民主党が今国会の重点課題として取り組んでいる法案審議の進捗状況を報告した。

 質疑討論では「民主党の省庁再編プランを提示してほしい」などの要望の他、「長銀について小渕首相は政府方針どおり処理すると言っているが」との質問が出され、中野代表代行は「住信との合併を公的資金を投入してでも支援するという方針どおりやるという意味なら、党首会談は何のためにやったのか、金融特は何のためにやっているのかという話になる。そうであれば我々は解散総選挙を求めざるを得なくなる」と、政局に影響するとの認識を示した。


●基調講演II〈当面の政局と政権のあり方〉
矢野絢也氏(政治評論家)
「政権担当能力とは統合力」

 いまの金融問題の議論はさっぱり国民に理解できない。公的資金というカネを出すのか出さないのかだと思うが、民主党はカネの出し方について、政府・与党よりもマシな出し方を主張している。

 民主党はいままでの野党にはないパワー、交渉力を持っている。国民から見て良いことをやっていると思われるように、パワーを見せてつけてほしい。そうしなければ民主党は、風が止めばストーンと落ちるタコのような政党になるだろう。

 いま民主党が評価されているのは、自民党と対峙する野党の代表としてであり、政権担当能力ではない。民主党は公的資金投入に賛成したと国民は見ている。

 政権担当能力とは政策立案能力ではなく、統合力だ。私は長年野党第2党だったが、第2党、3党の野党第1党に対する屈折した感情が細川政権を短命に終わらせた原因の1つだったと思う。


基調講演III〈民主党の政権構想について〉
菅直人代表
政治参加の道具として国民に根をはろう

 金融再生に関する合意に触れるが、政権を担いうる政党として対案を出し、そのことを提案し議論すればするほど、いろんな批判があることも当然だ。
 今の金融危機は、日本にとっては事実上初めての経験。誰かが決めてくれたことに「おかしいじゃないか」と言って、責任を押しつければ「間違った判断をした政治家」という汚名は残さずにすむかもしれない。しかし、この10年間の日本政治で繰り返えされた「目の前のその場しのぎ」の対応が、結果的に経済危機や金融危機を深めてきた。そういった自民党政権に任せておいて批判だけをすることでは、私たちの責任は果たせない。

 今回の合意は私たちにとっても重たいものだ。ひとつの決着が図られたのではなく、むしろ民主党は新たな大きな問題の入り口に立った。自民党が、過去の権益を守り、過去の失敗を隠すことを目的に進めようとすれば、合意は壊れてしまう。10月初めにかけて、どう共同修正が進むのか。この2日間の経緯を見てもなかなか難しい状況だ。この問題を政局に絡めるつもりはないが、小渕政権が本当に責任ある形で政権運営できるのか、より危うい状況になっている。それに対応して、わが党もいつ解散・総選挙があっても対応できる体制は早い段階で準備をしていく必要がある。

 政党が社会のなかでどういう存在であるべきか。これまでは政党は、一部の変わった人たちが入るというイメージだ。これを民主党は、ちょうど野球のひいきチームと同じように選べる政党になっていきたい。政党は国民が政治に参加するための道具だ。ひとりひとりの問題を政党に持ち込むことで、政策化、法案化し、行政に反映させていく。そのことで、幅広い根を持った国民政党になっていく可能性を民主党はもっている。5年から10年の展望のなかでしっかり根を張っていく努力をしていきたい。


●分科会(A)〈選挙・組織対策〉
民主党の若さ強調し、無党派層に訴えよう

 はじめに鳩山邦夫副代表は「今を絶好のチャンスと受けとめ、民主党が本当の国民政党であるという実績をつくることが課題だ」とあいさつした。

 選挙対策について、「公認・推薦者の決定基準を設けるべき」「地方選挙の公認・推薦権を地方組織に委任すべき」などの意見が出された。山花選対委員長は「今後、議論していくが、地方への権限委譲は受け皿ができれば早くしたい」と答えた。

 規約検討に関して「地方組織の声を反映させるため、大会招集の範囲を小選挙区代表者までふくめてほしい」などの意見が出され、前川組織委員長は「大会の代議員や運営は党規約が承認された後、議論させていただく。地方組織の運営は、それぞれの地域で工夫してほしい」と述べた。

 国民運動本部の取り組みについては、「民主党の若さをもっと強調してほしい」と若手議員の積極的な登用と、また「これからも無党派層に訴える運動を」といった要請が出された。


●分科会(B)〈当面の重点政策〉
「再生、改革、対策の3つで景気回復へ」

 主に民主党の経済政策についての議論が行われた。海江田万里緊急金融経済対策プロジェクトチーム座長が参院選の公約である「“全治3年”日本経済再建プログラム」に、参院選後に設置された党税制調査会(中野寛成会長)の議論をつけ加え、提起した。

 海江田議員は「バブル崩壊後、政府は100兆円にもなる景気対策、減税を行ってきたが、金融機関が抱える不良債権がおもりとなって景気は浮揚しなかった。そのおもりを取り除こうというのが今回の金融再生法案だ」として、まず金融再生政策を解説。「2番目には日本経済の構造改革、3番目には減税などの景気対策が必要だ。再生、改革、対策、この3つのどれが欠けても景気は回復しない」と述べた。

 質疑応答では活発な意見交換が行われ、特に税制に関する討議が多かったため、峰崎直樹参院政審会長は「党税調が地方に出かけていって皆さんの意見を聞く必要があると痛感した」と感想を述べた。

 民主党の6兆円減税政策について、海江田議員は「所得税の3兆円恒久減税などを提起しているが、地方財政がパンク寸前の中、住民税減税は主張していない」と強調した。これに加えて「地方自治体が高い金利で借りている財投資金の繰り上げ償還にまで踏み込んでほしい」などの意見が出された。


分科会(C)〈政局政権構想〉
「政権構想を10〜11月にはまとめたい」

 まず鹿野道彦政治改革本部長が、「政権交代を目指すには、政権運営のあり方も示さなければならない」と、政権運営検討委員会の議論を紹介。菅代表は「今のまま守るよりも思い切って現状を変えていくべき勇気を」と訴え、鳩山幹事長代理は「自立と共生のバランスをいかにとって発展させていくかが、今日的問題解決の糸口だ」と、友愛社会建設の持論を述べた。

 参加者からは、国家像からライフスタイル、価値観から、最近の政局に至るまで幅広い質問が出され、幹部がひとつひとつに応答。鹿野本部長が「皆さんの提起をしっかり受け止め、10月末から11月初めには構想をまとめたい」と結んだ。

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