●銀行に不良債権一括処理させる民主党の修正案提出
民主党は13日、「金融機能の早期健全化のための緊急措置法案」修正案を衆議院に提出した。前日の小渕総理と各党党首の会談などを通じ、自民党提出の早期健全化法案に対して、平和・改革、自由党は共同修正に合意。民主党は「あいかわらず自民党案は寄らしむべし、知らしむるべからずという姿勢。自分たちや役所が知っていれば国民は知らなくても良いという内容」(菅直人代表)と判断し、民主党の修正案を単独提出した。13日の衆議院本会議で民主党案は民主、無所属などの賛成少数で否決、自民、平和、自由の3党修正案が可決され、参議院に送られた。
前日の12日は、菅代表と小渕総理の党首会談などが行われ、民主党の池田元久衆院金融特理事は「自民党案は厳格な資産査定が法案に盛り込まれていない」など問題点を指摘。また、自民党が「明日(13日)中の衆議院議了」を強く求めたのに対して、石井一国対委員長は「自民党もわが党も修正案を示しており、しかも50兆円もの予算措置が必要な法案」として十分な国会論議を求めた。菅代表は「国民に理解されなければ(法成立を)急いでも結果的に機能しない」として、従来の主張どおり「国民が納得できる明確な基準、十分な情報開示」を資本注入の前提とすることを求めた。
●菅代表 自民党案には3つの問題点
民主党は13日の衆院本会議に先立ち、両院議員総会を開いた。菅代表は「自民党案には大きく言って3つの問題点がある」として、「第一に、この法案は機能するのか。経営者は責任を問われたくないので資本注入の申請をしないだろう。より厳しい貸し渋りが進行するのではないか」と、同法案が現在の金融機関のあり方を温存し、不良債権処理や金融界の再編につながらない点を指摘。
「第二に、銀行の実態が国民に明らかにされない。わが党はきちんと自己資本を算定すべきと主張しているが、財界には『一括して投入すれば良い』という声がある。3月の(大手行に横並び資本注入した)間違いをより大規模にやろうということだ」と、同法案が金融機関の資産査定、第・分類債権(回収に注意を要する債権)への引き当て、有価証券評価の厳格実施を含んでいないため、不良債権処理を先送りし、情報開示を骨抜きにする点も批判した。
さらに「第三に、金融再生委員会の権限の多くを金融監督庁に移すとしている。佐々波委員会(3月の資本注入を決めた預金保険機構の金融危機管理審査委員会)の焼き直しになってしまう」として、金融再生法の成立によって廃止が決まった金融機能安定化法の焼き直しで、存続が可能でない金融機関も救済し、金融機関のモラルハザードを招き、財金分離と金融行政の一元化に逆行すると指摘した。
●民主党は国民の立場で経済に必要なことをやる
両院議員総会では「民主党は理論的には正しいが考えがキツ過ぎるという声がある」との指摘、「民主党は国民のためにやっている。健全野党なのだから、孤立しても良い」といった意見が出された。
菅代表は「私たちのスタンスはあくまでも国民の立場で、今の経済にとって何が必要かということだ。金融を立て直すためにはある程度のモラルハザードには目をつむる必要があるという主張もあるが、どちらを取るかではなくて、モラルハザードを防ぐことが、金融を立て直すことだ」と述べ、長銀や日本リースを救済しようとしたこれまでの自民党のやり方を批判。民主党が金融機関も自己責任が問われるべきだという姿勢を貫いたことで、金融界の再編が進んでいることを指摘した。
羽田孜幹事長は「わが党は先週(9日)、早期健全化勘定30兆円と金融再生勘定20兆円の予算措置を政府・自民党に申し入れたが、この前提である厳格な資産査定、引き当ての義務づけ、不良債権の償却がなされないということなので、予算総則書き換えには賛成できない」として、同日夕の衆院予算委員会では反対することを提起。了承された。
|