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1999/11/29
議長裁定で年金法案を厚生委へ差し戻し 野党側の固い結束で与党側が大幅譲歩
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年金制度改正関連法案の衆院厚生委員会での強行採決に民主党など野党が反発し、空転していた国会は、29日深夜、伊藤宗一郎衆院議長による「裁定」を与野党が受け入れ、30日から正常化した。

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 民主、共産、社民の野党3党は29日、衆院厚生委員会の採決の白紙撤回を求め、衆参の本会議、委員会審議の開催を拒否することで足並みをそろえた。

 民主党の川端達夫国対委員長ら3野党の国会対策責任者は、29日午前、伊藤宗一郎衆議院議長と渡部恒三副議長を訪ね、「公聴会前に採決日程を決めたのは戦後国会史上初めての暴挙」と指摘し、「いったん厚生委に差し戻し、改めて審議するよう取りはからってほしい」と要請。また「採決を認めていない法案を処理することは新たな混乱を起こす」として、この日の衆院本会議を延期するよう申し入れた。

 これに対し、渡部副議長が「私も今日の本会議の(開会の)ベルは押すべきではないと思う」と述べ、伊藤議長も「趣旨を重く受け止める。副議長と一心同体で対応したい」と応じた。


 この後、民主党は午後12時30分から代議士会を開き、自自公三党の一連の暴挙に対し一歩も引かず、あくまでも採決の白紙撤回を迫っていくことを確認した。

 冒頭、同委員会理事の金田誠一議員が、議員団が一体となった前日の強行採決阻止行動に感謝するとともに、「与党内でさえ対立があるのに、たった3日間の日程で採決とは何ごとか。もう一度審議を戻させるため、引き続き全力を尽くす」と決意表明。

 続いて羽田孜幹事長は、「国会開設(1890年11月29日)から109周年の今日という日に、民主主義がなくなりかねない危機に直面しているのは残念。自自公の横暴を許せば、この先何が起きるかわからない」と、各議員の奮起を訴えた。

 さらに石井一副代表も、「議員生活約30年になるが、与党がこれほど横暴を極めたのは前例がない」と批判。

 最後に菅直人政調会長が、「厚生省は年金140兆円を自主運営しようとしているが、それを丸投げで任される銀行に官僚が天下っている。またもや国民の税金を食い物にする企みが始まった」と強調し、問題を抱えたまま、まともな答弁も審議も拒否して法案を強行した政府与党を糾弾した。


 同日夕方から夜にかけて、事態打開に向け与野党国対委員長会談が断続的に開かれ、与党側は年金関連法案について、「委員会での補充質問を行い、あらためて確認の採決を行う」などの妥協案を提示した。しかし、野党は「十分な審議時間が担保できる保証はない」と反論し、話し合いが平行線に終わったことから議長裁定を仰ぐことになった。

 伊藤議長は、(1)財政演説に対する質疑は12月1日に行う。WTO出席の閣僚の不在については国益を考え、理解するものとする。(2)厚生委員会の今後の対応については、補充質疑、参考人に対する質疑等、厚生委員会において今後の日程を誠意をもって明日(30日)から協議する。そのことをもって正常化とする。本会議の上程については、相互の信頼の上に立って、今後協議する――との裁定案を示し、「与野党とも互譲の精神をもって事態の収拾を図っていただきたい」と要請。与野党とも基本的にこれを受け入れた。

 川端国対委員長はこの後、国会内で共産党の穀田国対委員長、社民党の前島秀行院内総務会長とともに記者会見し、「厚生委に年金改革法案を戻すという野党の主張が通ったので、議長の裁定を受け入れた」と述べ、与党側から大幅な譲歩を引き出した野党共闘の成果を強調した。


★菅政調会長が1日の厚生委で質問★

 衆院議長の裁定を受けて30日に開かれた衆院厚生委理事懇談会は、明日1日に補充質疑を行うことを合意。民主党からは、菅直人政調会長が質問に立ち、丹羽厚相と対決する。質問時間は午前10時から11時23分までの83分間。

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