衆議院を通過し、参議院で9日から審議が始まる通信傍受(盗聴)法案の廃案をめざす緊急集会が8日午後、国会近くのホールで行われ、党所属の国会議員や市民など約400人が集まった。
円より子参議院議員の司会で、まず、実行委員長の角田義一参議院議員(民主党参議院幹事長)が、「参議院ではこの法案を絶対に通さないと腹をくくって闘っていきたい」とあいさつ。
続いて96年から、通信傍受法を含む組織犯罪対策法の問題を追及してきた日本弁護士連合会(日弁連)事務局次長の神洋明弁護士が法案の問題点を説明。「この3法案が組織犯罪だけを対象にしていないことが一番の問題。憲法のみならず刑法や刑事訴訟法の基本原則を変える危険性もある。人権保障上の歯止めも十分ではない」と指摘した。
また連合の笹森事務局長は「組織犯罪対策法では、労働組合の正当な争議権が監禁罪や威力業務妨害罪に拡大解釈される危険性が高い。国会外からも国民世論を巻き起こす運動をしていく」と反対姿勢を鮮明にした。
● 猪瀬直樹さんも
「ジャーナリズムの危機」訴える
続いて作家の猪瀬直樹さん(日本ペンクラブ・言論表現委員長)が、言論活動の自由を守る立場から「通信傍受法の第15条の傍受対象除外規定になぜジャーナリズムが入らないのか。取材源の秘匿はジャーナリストの最高の倫理。取材のやり取りが一捜査官の範囲から流失すれば、人権や国家機密に影響が広がる危険がある」と指摘。さらにこの問題を積極的に取り上げない日本の報道機関は「大いに責任を感じるべき」と、批判の目を向けた。
また猪瀬さんは「先進国では通信傍受の規定があっても、個人のプライバシー保護法制とのバランスがとれている」と述べ、プライバシー法制が整備されていない日本での拙速な盗聴法審議に警鐘を鳴らすと共に、「本気でがんばってほしい。ペンクラブとしてもひとりの物書きとしても力になりたい」と民主党へエールを送った。
●「ありとあらゆる知恵と経験を使って闘う」
菅直人代表
次にあいさつに立った菅直人代表は、「人権や民主主義にかかわる問題が自民・自由・公明3党の枠組みの中で議論無しに進められている。廃案に向け全力を挙げ、ありとあらゆる知恵と経験を使って闘っていきたい」と、法案の成立阻止に全力を挙げると決意表明した。
会場に詰めかけた参加者からも多くのメッセージが寄せられた。日本消費者連盟の富山洋子さんは「このような市民社会を管理する法律が着々と進められていることは、異議申し立てをする市民の動きを封殺するもの」、日本放送労働組合の今野徳男さんは「盗聴法によって私たちの自由な取材・制作が損なわれ、ジャーナリズム機能を十分に果たせなくなることを強く危惧する」と訴えた。インターネットのプロバイダーを運営するJCAネット事務局長の印鑰(いんやく)智哉さんは「盗聴法によってネットワークに対する不信が生まれれば、市民社会にも企業社会にも大きな影響を与える」、NTT労組の加藤さんは「法案の議論の中で、通信設備の管理・保全を行う私たちの精神的な負担、設備的影響、立会人としての責任や義務が論じられておらず、不安が大きい」と述べて、それぞれ法案への反対を表明した。
続いてあいさつした鳩山由紀夫幹事長代理は「なぜ今あえて窒息するような社会を国民に提示をするのか、不思議でならない。国家と市民とどちらにより重きをおくか、日本の社会をどのように導くかの自民党など与党側とと民主党との理念の違いがある。基本的スタンスを同じくする皆さんとうねりを作って盗聴法案を廃案に導いていく」と力強く宣言した。
最後に北澤俊美参議院国会対策委員長が、「官僚のいうことを何でも飲み込む小渕内閣ほど危険な内閣はない。そのことを終盤国会で天下に明らかにしていきたい」と会を締めくくった。
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