●委員会審議を無視した修正案は政治的妥協の思惑の条文
国民の住民票に通し番号をつける住民基本台帳法改正案を審議している衆院地方行政委員会で8日、「個人情報保護に万全を期するため、速やかに所要の措置を講じる」との付則を追加した修正案を自自公3会派が提出された。これに対して、民主党から古賀一成、葉山峻、土肥隆一各議員が、プライバシー保護に対する具体的措置について引き続き追及、修正案についてもその真意をただした。
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古賀一成議員は、住民台帳のデータベース化について、「10桁で人の秘密を寄せ集められる。本来重要な扱いが必要なのに、本人確認を指定情報処理機関へ外部委託するという。国民の情報を非常に軽く見る政府のホンネが見える」と最近頻発しているデータ漏洩事件をあげながら、手厳しく批判。鈴木・自治省行政局長は「処理機関は十分信頼しうる所を指定する。法律でも秘密保持の規程などがある」と言い逃れた。古賀議員は「国民の情報は大切だから、責任のある国の機関で対応するのが正論だ。管理規程あるいは保護措置で済む問題じゃない。国民の情報はどれだけ重いかの問題」と反発した。
また3党派提出による修正案について、古賀議員は「25時間、8週間を超えて一生懸命やってきた委員会審議とかけ離れた場所で、全然関係ない人(政党の幹部)がぱっと政治的落とし所を決めるとは、委員会を無視した話としか思えない。まじめに質疑に立った人間は大馬鹿ということか」と3会派合意の経緯を、怒りも覚めやらない口調で批判した。
さらに、古賀議員は「なぜ国政全般における重要問題である個人情報保護法制の措置に関する規定を、市町村の固有事務を扱う法律の付則に書けるのか」と疑問を示し、「具体の責任を負わずに、明示せずに通す、政治的妥協の思惑の条文」と重ねて批判した。
次に質問に立った葉山峻議員は、修正案について「個人情報の保護に万全を期するため速やかに、所要の処置を構ずると、わざわざ言わなければならないのは、つまりこのままでは万全ではないということですかね」と核心を突き、3会派議員は思わず苦笑い。提案者の桝屋敬悟議員(公明)は、想定される所要な措置として 1.民間部門も対象とした個人情報保護法整備 2.住民基本台帳法制での個人情報保護措置 3.国によるICカード運用への指導――の3つを示したが、葉山議員は「財金分離のように、絵に描いたもちになる可能性が高い」と批判した。
最後に立った土肥隆一議員は、まず「この法案は、個人の内面的思いにふれるものだ」と懸念を示し、続いて中央省庁の92事務に関する、全国住民情報データベース利用の一例として、建設省が宅建業者の免許取り消しのための犯罪者のチェックに使う可能性を指摘した。そして、改正法第30条の中で「本人確認情報の利用・提供の制限」の中で「必要な範囲で受領した情報を提供できる」としている点についても、そのあいまいさを指摘しながら、「本人確認が必要だとして、今後全部の省庁が利用する懸念がある」「政府機関内、例えば法務省から建設省に、犯罪リストの情報交換が可能になる」など、なし崩し的利用への懸念を強調した。
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