平成18年度総予算の一般的な質疑が行われた衆議院予算委員会で16日、民主党・無所属クラブの高山智司議員が質問に立ち、8日の同委員会質疑に続き、上海総領事館員自殺事件はじめ、防衛庁ミサイルシステム情報漏洩問題等を取り上げ、安倍官房長官、麻生外務大臣はじめ関係大臣に質した。
上海総領事館事自殺事件について、高山議員は冒頭、「国益を守るために自殺を選ばれた。まさに殉職という扱いでいいか」と確認。麻生外務相や塩尻官房長はそれぞれ殉職という扱いが妥当との認識を示したうえで、イラクで銃弾に倒れた故・奥大使と同様、殉職扱いで金銭面・保険等でも外務省として対応したことを明らかにした。その対応に「安心した」と語った高山議員は続いて、事件発生後の政府としての手続き等に関して再確認した。
塩尻官房長の説明からは、2004年5月6日に事件が発生し、6日後の同12日、北京の在中国大使館公使が中国外務省アジア局副局長に対し、抗議と事実関係の究明を要請。同5月16〜20日にかけては外務省から監察査察担当参事官を現地総領事館に派遣し、同5月13日〜6月3日にかけては通信関連の担当官が派遣され、外交通信をチェックし、情報漏洩がないかを調査するとともに、暗号変更などを行ったことが明らかにされた。
高山議員は続いて、十分な検死、現場検証が行われたかどうか確認したうえで、事実解明に向けて外務省に提出された報告書の委員会への提出を求めたが、塩尻官房長は「インテリジェンスに係る問題が含まれている」との理由で提出を拒否。高山議員は事件をもみ消そうとしているとしか思えない指摘し、情報公開を重ねて求めた。
また、高山議員の追及から、外務省に届けられた総領事館による報告、査察監察参事官の報告等は、事件の相対的な報告に過ぎず、検死・現場検証等に関わる詳細な情報は不足していたことが明らかになった。
同時に、報告書は外務省の関係部局はじめ外務大臣の元に届けられるとともに、事件発生の約1カ月後に警察庁に提出されたことも明らかになったが、「約1カ月後とは2004年の6月ぐらいかと思うが、官邸には報告したか」との高山議員の問いに、小林警備局長 は報告していない旨を答弁。こうした答弁を受けて高山議員は、警察庁外事課に上げられた情報は国益を守るためにも官邸に報告してしかるべきだとの認識を示し、適切な対応を怠った政府の姿勢を問題視した。しかし、沓掛国家公安委員長は「外国で起こった問題なので外務省が対応していく」などと、無責任極まりない答弁に終始した。
国家としての情報伝達の在り方をめぐり、事件をいつ知ったかについて、8日の同委員会で小泉首相は「日日は忘れたが新聞報道後」、安倍官房長官は「週刊誌報道があった12月27日」と答弁したことを再確認したうえで、内閣情報室では情報を把握したのはいつかを高山議員は質したが、「インテリジェンスの問題」との認識で、安倍官房長官・長瀬官房副長官らはひたすら答弁を拒否して質疑はしばしば中断。政府の情報管理のあり方への疑念が一層深まるやりとりが繰り広げられた。
続いて高山議員は、在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)傘下団体の在日本朝鮮人科学技術協会に、陸上自衛隊の地対空ミサイル(SAM)の資料が流出していたことが24日の警視庁公安部の調べで分かった問題を取り上げた。流出資料は研究開発段階のデータなどが含まれており、既に北朝鮮側に渡った可能性も指摘されている。
高山議員はことの重大性を改めて指摘し、額賀防衛庁長官に対し、事実解明を急ぎ、事実を確認次第、情報を国民に明らかにするよう強く求め、質問を締めくくった。
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