通信傍受法案(盗聴法案)を柱とする組織犯罪対策3法案の審議が1日、参議院法務委員会で陣内法相の出席のもとで行われた。民主党・新緑風会から角田義一、小川敏夫の両議員が質問に立ち、立会人の権限、事後チェックのあり方などの問題点を厳しく追及した。
最初に質問に立った角田議員は、まず「この法案には多くの不安があり、反対する声に心砕く必要がある」と述べ、「戦前のような息苦しい社会になるのではないか」と危惧を示した。陣内法相は「世論調査で反対が特に多いとは考えていない」と開き直り、「憲法の保障する基本的人権は、絶対無制限ではない」「通信の秘密も必要最小限の制限は許される」との見解を示した。
次に角田議員は傍受に立ち会うNTTの職員に関わる問題点を追及。立会人の切断権の有無をただしたのに対し、松尾・法務省刑事局長は「立会人には傍受が令状に従って行われているかの確認等の役割にとどめ、切断権や通信の内容の傍受を認めることができない。内容を第三者である立会人が聞くこと自体、プライバシー侵害にあたる」と述べた。
また角田議員は「NTT職員が業務命令による立ち会いを拒否する場合もあろう。懲戒というペナルティを課しながら協力させようというのは問題では」と迫ったが、松尾局長は「それはその組織の内部の問題。法案は通信事業者に義務を課している」と逃れた。しかし角田議員は「交代であっても狭いところで常時立ち会うのは憲法18条(奴隷的拘束及び苦役からの自由)に関わる問題」と反駁した。
さらに、角田議員は86年に発覚した共産党幹部宅盗聴事件を取り上げ、「この問題の総括と謝罪なくして先へは進めない」とただした。「民事判決などを厳粛に受け止めたい」「反省を踏まえて捜査手法などに疑問を抱かれないようにしたい」との政府側の答弁に、「謝罪になっていない。ちゃんと答えよ」と角田議員は激怒。しかし政府側は意地を張るように同じような答弁を繰り返すだけだった。
次に質問に立った小川敏夫議員は、通信傍受の事後チェックのあり方を中心に質疑を展開した。
小川議員は、「立会人が傍受の内容を聴けない仕組みになっているため、捜査員が乱用した場合、制度的にチェックができない」と指摘。また、犯罪に関係のない会話を傍受された当事者は事後通知を受けないことから、すべての会話が録音されている「原記録」を聞く機会もなく、不服申し立てはできないと主張した。その上で、捜査員の乱用防止のため、「傍受内容をすべて裁判官が事後的に聴けるようにすべきだ」と提案した。
松尾刑事局長は「裁判官がプライバシーに踏み込むマイナス面がある」と答えたが、同時に「傍受記録を作成する際には関与する警察官はかなりの人数になることもあり得る」とも述べたのを捉えた小川議員が「それなのに、裁判官一人が聴くことがプライバシー侵害になるのか。むしろそのことで守られるプラスの方が数倍大きい」とすかさず反論。「民間の立会人には30日間ずっと立ち会う苦痛を強いている。裁判所は人権を守る砦だ。立会人が乱用をチェックできない以上、残るのは裁判所しかないではないか」と主張した。松尾局長は「捜査官の違法行為は法律で処罰される」とさらに弁解したが、小川議員は「それと制度的議論は別」と突っぱねた。
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