民主党が強く反対している通信傍受(盗聴)法案など組織犯罪対策3法案を審議する参議院法務委員会は27日、NTTやインターネットの接続業者など大手の通信事業者4社を参考人に招いて質疑を行った。同法案をめぐり通信事業者が参考人として国会で意見を述べるのは今回が初めてだが、いずれの参考人からも法案の実効性への疑問や技術的な課題が突き付けられた。
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(株)東京デジタルホンの桑折恭一郎・専務取締役技術本部長は、PDCと呼ばれる日本規格の移動体通信システムを説明した。
続いてNTT出身で通信技術に詳しい内藤正光議員は、技術的な質問を通して、一般電話と携帯電話の違いを整理した。
まず「携帯端末−基地局」間の無線部分を傍受できるか質問。桑折氏は「特定の回線を探し出すこと自体が難しいし、また見つけ出しても音声はデジタル方式で特殊な形で圧縮されており、解読は全く不可能だ」と説明した。
さらに、内藤議員が「携帯電話の場合は受信側を待ち受けての傍受は可能か」と尋ねたのに対し、桑折氏は「理論的には可能。ただ発信場所の特定が必要だ。どの基地局の、どの無線機のチャンネルか、送信方式はどうかなど、現実には使用回線の特定に非常に時間がかかる。また移動した場合は使用回線自体が変わるので、努力がムダになる」と強調した。
それを受けて内藤議員は「容疑者が携帯端末から発信した場合、通信傍受できる可能性がない」「固定電話と違って、数百本の中から一本一本回線を特定しなければならず、時間がかかって実効上傍受はムリ」とまとめ、盗聴法案が携帯端末の傍受には実効性が全くないことを指摘した。
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午後の質疑で、日本インターネット協会会長も務める東京インターネットの高橋徹上級顧問(元社長)がインターネットの概念や発達の歴史からひもときながら、組織犯罪に利用される危険性、対処方法について考えを述べた。その中で、通信傍受の問題点について高橋氏は、「電気通信事業法の下での事業で、絶対的な前提である『通信の秘密』を覆す恐れがあり、また不特定多数のユーザーのプライバシーを侵す可能性が大きい」と指摘、慎重な審議を求めた。
質問に立った海野徹議員はまず、インターネット利用の企業戦略や国家安全保障機関によるネット上の諜報活動など、今アメリカで起きている事例を示した上で、プロバイダーとインターネット間の専用線が傍受される可能性について質問した。
高橋氏は「情報量が非常に大きいので全く難しい。莫大な予算をかけても全てを調査するのはムリ」とし、ニフティの本名信雄・取締役サービス企画統括部長代理も「上流(基幹回線)にいくほど情報量は増大する。それを傍受しても、ほんの断片的なものしかとれない」と指摘した。また暗号化された電子メールを解読する可能性について、高橋氏は「多くの独自なアルゴリズム(暗号解読の手順)があるので非常に難しい」と技術的な観点から説明。
さらに海野議員が「政府による暗号技術に対する規制の動き」を指摘したのに対し、高橋氏は「規制によって第三者に見られる危惧から、インターネットの発展が阻害される」とし、また本名氏は「規制してもアンダーグラウンドで暗号化されれば、法そのものに意味がない」とそれぞれ否定的な見解を示した。
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