通信傍受(盗聴)法案を審議している参議院法務委員会で29日、民主党・新緑風会の内藤正光、小川敏夫両議員が質問にたち、前日の参考人質疑で明らかになった携帯電話傍受の実効性を中心に、政府を追及した。
内藤議員は、「携帯電話の傍受は非常に困難。この問題を横に置いて法案を成立させるのか」と迫った。法務省の松尾刑事局長は「法案は携帯電話の通信傍受が前提。技術的困難性は1年以内には克服できる」と強弁し、国の予算で技術開発を進める考えを明らかにした。さらに、内藤議員が通信事業者への仕様変更要求があるのかをただしたのに対し、松尾局長は「過度な技術的な要求はしない。協力は基本的には任意」などと答弁。
また通信傍受の立会人の責任について、内藤議員が「結果的に違法捜査であった場合にも、立会人は民事上、刑事上、行政上の責任を負わないと断言できるか」と念を押したのに対し、松尾局長は「立会人は実施手続きの公正さを担保するために立ち会う。実施はあくまでも捜査機関であり、立会人が民事上の責任を負うことはない」と答えた。
さらに、内藤議員が乱用の歯止めとして、それぞれの捜査が適正に行われたかどうかを判断できるよう各通信傍受捜査ごとに国会に報告するよう求め、「指摘は重く受け止める。国会に報告する内容に盛り込むなど、運用に関する国会の論議を待ちたい」などと前向きの答弁を引き出した。
続いて質問にたった小川議員は、「傍受令状による通信傍受で該当する会話がなかった場合の「傍受記録の作成」について、「記録が作成されないと、受けた捜査に対する不服の申し立てができない。憲法上、強制処分を受けたことについて争う道が開かれないのは、刑事手続きの精神に反する」と追及した。
さらに「捜査の濫用については裁判官が事後的にチェックするので、立会人に切断権を与えなくてよい」とする政府などの答弁に対し、小川議員が「立会人の意見が刑事裁判の資料にならなかった場合、裁判官が事後的にチェックする機会はない」と指摘。修正案で事後チェックの道をつくったと主張していた上田勇衆院議員(公明)は「原案の中に十分な規定が設けられていると認識している」との逃げ口上。これには小川議員はあきれるばかりだった。
この日の委員会では与党議員までが「電子メールには抜け穴がいくつもある」と法案の欠陥に言及し、法案の実効性や捜査権濫用への危惧は一層強まった。
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