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2002/10/23
第155回臨時国会参議院本会議代表質問(朝日議員)
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第155回臨時国会参議院本会議代表質問
民主党・新緑風会 朝日 俊弘

 私は民主党・新緑風会を代表し、先日行われました小泉総理の所信表明演説に関連して、主に社会保障制度に関わる課題にしぼって、総理および関係大臣に質問いたします。
 本題に入る前に、金融分野緊急対応戦略プロジェクトチームの中間報告をめぐる昨日の混乱について、総理及び竹中金融担当大臣にお尋ねしておかなければなりません。
 その具体的な経緯はともあれ、少なくともその報告の中味については、市場をはじめ、関係者が大いに注目していたところでもあり、そして昨日の混乱した状態は、本日の株価にもすぐに跳ね返っていることは、ご承知の通りであります。
 こうした事態について、総理及び竹中大臣は、どのように受けとめ、今後どのように対処されるお考えなのでしょうか。明確にお答えしていただきたいと思います。

 それでは本題に入ります。今、冒頭でお尋ねしたこととも関連することなのですが、小泉総理の政治手法、とりわけその政策決定プロセスの問題点について、総理ご自身の問題意識を伺っておきたいと思います。総理は就任以来、中央省庁再編成にともなって大幅に機能と役割を強化された内閣府を活用して、言わばトップダウン方式で検討項目や改革の方針を指示するやり方を、かなり意図的に採ってきていると思います。
 なるほどそれも一つの手法と言うべきなのでしょうが、残念ながら、それに引き続く政策の具体化に至るプロセスにおいて、総理のリーダーシップの欠如と、各論部分を軽視する強引さとが相まって、担当省庁や事業・実務を担う現場に当惑とある種の無責任な対応を誘発し、結果として著しく整合性に欠ける制度改正や、社会的弱者への一方的なしわ寄せを強いる極めて荒っぽい内容となっているのではないか。
 にもかかわらず、総理は相も変らず「改革なくして成長なし」などと、最早、誰もが聞き飽きた ・掛け声=アジテーション・ を繰り返しているとしか思えません。これでは自らの無策ぶりを自画自賛してごまかそうとするもの、あるいは単に自らの言葉に自らが酔っているとしか言いようがありません。いったい、総理はそのことに気がついておられるのでしょうか? まずはご自身の自己認識についてお尋ねいたします。

 次に、総理の社会保障制度改革に関わる基本認識についてお伺いいたします。
 既に多くの識者から、最近では諸外国のマスコミ関係者からも鋭く指摘されているように、過去四年間、我が国の年間自殺者が連続して三万人を超えるという事態は、いかにも ・異常な事態・ と認識すべきであります。
 しかも年間三万人の自殺者数のうち、五〇代の男性の自殺者数は実に六千人を超えています。このような数字は一体何を物語っているのでしょうか?
 ご承知の通り、年金の支給開始年齢は既に六十五歳に引き上げられました。先の国会では老人保健の適用年齢を七〇歳から七十五歳へと段階的に引き上げられることが決められました。一方、退職年齢の六〇歳から六十五歳への引き上げは遅々として進まず、高齢者雇用も思うにまかせません。・老後の不安・ は日々強まりこそすれ、その解消には程遠いのが現状です。
 迫りつつある老後の不安を感じ、その上自らの賃金引き下げやリストラの不安と戦う五〇代の労働者、あるいは長引く不況の中で必死の思いで経営の建て直しに取り組んでいる中小企業経営者達の姿が目に浮かぶようではありませんか。
 私はこうした現状をみるにつけても、改めて一九九五年に公表された社会保障制度審議会の勧告「安心して暮らせる二十一世紀の社会を目指して」を想い起こす必要があると思っています。今こそ二十一世紀の社会保障制度全体の再構築に向けて取り組む必要があり、その際のキーワードは ・社会連帯の絆としての社会保障・ であると思います。改めて総理の社会保障制度改革に関する基本認識をお伺いいたします。

 以上の基本的事項を前提として、以下、社会保障制度改革〈五つの柱〉について、それぞれの制度改革の方針あるいは方向性について、総理ならびに関係大臣のお考えを確認させていただきたいと思います。
 その第一に、先の通常国会で強行成立させられた健康保険制度改正を含む、医療制度改革について触れておかねばなりません。この点について総理は先日の所信表明の中で「先の通常国会では、郵便事業への民間参入法と郵政公社法が成立し、……道路関係四公団についても、民営化推進委員会設置法が成立し、……医療改革関連法も成立しました。構造改革は着実に進んでいます。」と胸を張って述べられました。
 しかし先の国会に提出された健康保険法改正案は、まさに・抜本改革なき負担増・を国民に強いるものに他ならず、また併せて提出された「健康増進法」も従来の栄養改善法に一部手直しを加えた内容に過ぎません。これをもって「構造改革が着実に進んでいます」とは到底評価できないものと断ぜざるを得ません。
 むしろ、多くの皆さんが正しく受け止めておられるように、先の国会では医療制度改革のほとんど全ての課題が宿題として残されている。従って、医療制度改革の本番はまさしくこれからなのです。この点に関する基本認識が欠如しているようでは、話が前に進みませんので、この点は総理ご自身にお答えいただきたいと思います。

 私たち民主党は関連する数多くの課題の中でも、特に患者の側=医療サービスを利用する側の立場に立った改革の必要性を重視し、いわゆる「患者の権利法案」を提出しました。
 医師をはじめとする治療者側と患者・家族の両者が可能な限り情報を共有し、患者の理解と選択に基づいた良質かつ適切な医療を促進すること、この点は先月はじめ想い半ばで倒れられた私たちの先輩=今井澄前参議院議員も特に強調してやまなかったポイントの一つでありました。こうした観点から、患者の権利を擁護しサポートするための法律を制定する必要性について、厚生労働大臣のお考えを伺いたいと思います。

 医療制度改革に関わるもう一つの重要な側面は医療提供体制について、とりわけ医療機関の機能分化と役割分担の明確化と、医療事故防止対策を含む医療の質の改善に向けての取り組みであります。
 我が国の医療機関とりわけ病院については病床数は過剰、病床あたりの従事者数は過少という実態があり、最近では医療の質=サービス水準に対する不安・不満が強まる一方で、医療ミス・医療事故の多発が問題となってきています。こうした現状の改善を図るためには、診療所機能の位置付け直しとともに、病院の機能分化とそれに対応する職員配置基準の大幅な改善を中心とする医療提供体制の再編成を強力に進めていく必要があると考えますが、この点に関する担当の厚生労働大臣の見解をお伺いしたいと思います。

 第二の課題は、早くも第一期の三年を終えて第二事業期に入ろうとしている介護保険制度の見直しと、介護報酬改定に関連して、総理はこの制度創設に深く関わられた訳ですから、ここはぜひ総理のお考えを伺っておきたいと思います。
 二〇〇〇年に新たな制度としてスタートした介護保険制度は、全体としては徐々に定着に向かって動きつつあると私も認識していますが、どうも気になる傾向が明らかになってきています。
 その一つは、介護保険制度の理念は「高齢者の自立支援」にあったはずですが、サービス提供体制の不充分さのためか、あるいは制度の利用に慣れていないせいか、ややもすればサービス提供側の都合や家族の側のニーズが先行しているのではないか?
 二つ目には、在宅介護重視という視点が、施設介護偏重に流れてはいないか? この傾向が強まれば強まるほど、第二事業期の保険料負担はさらに増えるのではないか。
 三つ目は、介護保険制度は高齢者のための様々なサービスの中から、介護に着目をして直接的に関連する部分だけを取り出してメニュー化したものであって、介護の周辺あるいは介護以外の領域のサービス、例えば老人保健・老人福祉サービスや高齢者のための住宅提供等については含まれていないこと。むしろ、これら周辺サービスの充実があってこそ介護保険はより良く活かすことができるのに、現実にはこうした分野のサービスはむしろ削減されてきているのではないか?
 今、私は三点ほど問題点を指摘しましたが、こうした点を含め、総理には基本的な考え方を、そして担当の厚生労働大臣には、具体的な今後の取り組みの方針についてお答えをいただきたいと思います。

 第三の課題は、今年度で最終年を迎えている障害者基本計画および障害者プラン=ノーマライゼーション七ヵ年戦略について、来年度以降の新たな計画策定に向けた基本的な考え方をお聞きしたいと思います。
 新たな計画策定に向けては、現在、内閣府を中心に作業を進められていると伺っておりますが、正直なところ政府全体として力の入れ具合が極めて弱いように思えてなりません。折しも、来年度からは社会福祉法の制定によって身体障害者および知的障害者の福祉施策は、従来の措置制度に基づく福祉から、利用契約と支援費制度による新たな仕組みへと移行する時期でもあります。また精神障害者については、なお三十万人の入院患者を抱えて、本格的な社会復帰・社会参加の促進と市町村における福祉事業の実施が求められており、ある意味で来年度から始まる新たな障害者計画はエポック・メイキングな内容となるべきものと考えます。
 申し上げるまでもなく、総理は政府の障害者施策推進本部の責任者でもあります。新たな計画およびプランの策定方針、そのポイント等についても触れてお答えいただければと思います。

 第四に、平成十六年の年金制度改正に向けた基本方針についてお尋ねいたしたいのですが、その前に、当面する二つの課題について確認をしておかねばなりません。
 そのうちの一つは、年金給付水準の物価スライド凍結問題について、担当部局の説明によれば、来年度は仮に今年度の物価上昇率がマイナスとなれば、予測では〇・六%程度のマイナスとなるようですが、これまでのように凍結せず、法律通りマイナス・スライドさせる方針であるという。しかも場合によっては、これまでの特例措置による凍結分をも遡って減額することも検討中と聞いていますが、その真意や如何。
 率直に言えば、これまではその時々の経済状況に鑑みという理由で凍結してきたことも問題ですが、今度は遡ってまとめて減額するというのもまさしくご都合主義。それだけではなく、このような一方的な理屈によって、ある時は凍結し、あるときは定められた通り実施するようでは、制度と政府・機関への信頼感はますます損なわれることは火を見るよりも明らかでしょう。
 この点に関して、総理の方針を明確にお答えいただきたいと思います。

 もう一つの問題点は言うまでもなく、前回十二年改正の時に、附則第二条で「当面、平成十六年までの間に、安定した財源を確保し、国庫負担割合の二分の一への引上げを図るものとする」とされている課題について。この点については議論は前回でほぼ尽きておりますから多くは申し上げません。平成十六年までの間に、ということですから、私は平成十六年改正までに、安定した財源を確保することが当然の責務だと理解しております。この点についても総理の明確な答弁を求めます。

 さて、その上で、平成十六年改正に向けて、今後の検討の方向と主なポイントについて、この点は担当の厚生労働大臣にお伺いしたいと思います。

 五番目に、雇用保険制度改正の方向と雇用確保・雇用創出に向けた当面の重点施策についてお尋ねします。私たち民主党は1年以上も前から雇用保険財政の枯渇を指摘してきましたが、政府は昨年四月に引き上げたばかりの保険料率を、弾力条項の発動で今月再び〇・二%引上げ、来年の通常国会では制度改正の上、さらに引き上げようという、見通しの甘さを自ら露呈するが如き見直しを強行しようとしています。
 しかし、失業者数の増加に伴う負担増を、単に雇用保険料率の引上げによって労使に押し付けるだけでは、無責任のそしりを免れません。ここはむしろ、雇用保険財政の安定化のための失業等給付資金の創設などによる一時的な国庫負担増を検討してしかるべきではありませんか。
 政府はどのような考えのもとで、雇用保険制度の見直しをお考えですか。具体的な内容と今後のスケジュールをあわせて厚生労働大臣の答弁を求めます。

 次に、政府全体の雇用確保・新たな雇用創出の取り組みについて伺います。
 今年七月に更新された経済財政諮問会議のホームページにこんな項目があります。「これだけ進んだ! 構造改革:見えてきた小泉構造改革の成果」。そしてその中に、「雇用のセーフティーネットを充実しています。中高年ホワイトカラー離職者訓練、新公共サービス雇用の実施などにより三年間で百万人の雇用を拡大します。」という文句が踊っています。
 三年間で百万人の雇用拡大とおっしゃいますが、いったいこれまでにどの分野で何人の雇用拡大がなされたのでしょうか。数字をあげてお示しいただくとともに、現在の雇用状況について総理はどう認識されておられるのかお聞かせいただきたいと思います。

 最後に、雇用創出策について総理の答弁を求め、私の質問の締めくくりとさせていただきます。
 政府は昨年来、緊急地域雇用特別基金事業を実施していますが、こうした公的雇用が第二の失業者対策事業と呼ばれないためにも、これまでの事業の検証が不可欠だと思います。その上でNPOや民間の力を引き出しながら、教育や保育、福祉、介護、環境、警備など、国民の行政サービスの向上に直結する事業を拡大することによって雇用創出策を推進すべきであると考えますが、これまでの雇用実績を含め、今後のあり方について、政府の見解をお伺して、質問を終わります。ありがとうございました。

※本テキストは質問直前の予定稿であり、実際の発言内容とは一部異なる場合があります

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