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2002/10/22
第155臨時国会代表質問(千葉議員)
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第155臨時国会代表質問
民主党・新緑風会 千葉景子

 私は、小泉総理の所信表明演説に対し、民主党・新緑風会を代表して、総理はじめ関係大臣に質問します。

(はじめに)
 「改革断行内閣」、「改革なくして成長なし」を掲げてきた小泉政権が発足から一年六ヶ月。
改革は進んだのでしょうか。経済は成長し、国民生活に反映されるようになったのでしょうか。いや、実態はその逆で、改革も成長もない状態が続き、「小泉デフレ・スパイラル」を招いています。
 経済が失速寸前のなかで、広がり続けるリストラや失業という不安。介護や年金など将来に対する不安。そして健康や安全など生活に対する不安。いや、不安は今や、失望と落胆へ、更に恐怖心へと変わっていると言っても過言ではありません。
 自殺する人の数は三年連続三万人を突破していることが、そのなによりの証左です。人々が人間としての尊厳も持てず、生きる場をも奪われてしまっているのです。 小泉総理、あなたはこの国を、いやこの国に生きる人々をどうしようとするのですか。あなたの言う「改革」には人間の心や姿が見えず、将来の夢や希望のかけらも感じられません。
 人々はみな必死に痛みに耐えています。しかしそれは頑張れば実現できる夢や希望があればの話です。夢や希望に向かって一人ひとりが個性豊かに生きることのできる社会、それを国や社会がしっかり支えるシステム、このような社会を作ることが「改革」の先に見えてくるはずだったのではないでしょうか。
 しかもそうした国や社会の基盤をなす政治、その政治への信頼も小泉内閣になってからますます地に落ちています。小泉政権の下で、金や利権にまつわる政治家の不祥事が続出しましたが、総理は常に「出処進退は、政治家が自ら決めるもの」と、まるで他人事のような発言を繰り返すばかりでした。
 いま七つの衆参補欠選挙が行われておりますが、うち二つは、秘書の口利きという政治とカネにまつわる辞職に伴うものです。
 自民党の地方への利益誘導、公共事業依存型の政治の本質は、何ら変わっておりません。赤字路線でも構わずに地元に道路を引き込んで、関連業界から政治献金を受け取って選挙の支援まで仰ぐという構図、こうした政官業の癒着構造は何一つ是正されておりません。
 まず改革しなければならなかったのは、自民党という政官業癒着システムなのです。自民党をぶっ壊すと豪語されていた小泉総理、どうなっているのでしょうか。
 国民が政治に信頼を無くした国の未来を考えると、背スジが寒くなります。現在の小泉内閣は「不安・不信増幅内閣」でしかありません。
 総理、これでも、まだ、「改革」「改革」と空念仏を唱えて国民を惑わし続けるのですか。
 それとも、「改革」の挫折を認めて、自ら座を退く勇気をお持ちでしょうか、この一年半をどのように総括しておられるのか。総理の見解をお伺いいたします。

(大島農相秘書問題)
 このような最中、先のスキャンダル国会に続き、またしても秘書による口利きという政治とカネをめぐる疑惑が報じられています。
 総理、自民党総裁として、何と情けないことかと、国民に対して恥ずかしいと、お思いになりませんか。
 報道では、大島農水大臣の政務秘書官が、大臣の地元青森の公共事業に関する口利きで六〇〇〇万円受け取ったとされています。事実であれば、さきの国会で議員辞職された井上元参議院議長の問題とまったく同じ構造です。
 大島大臣は、スキャンダル国会となった先の通常国会では、自民党の国会対策の責任者であり、鈴木宗男衆議院議員の秘書が逮捕された時には、「議員には秘書の監督責任がある」と強く批判しておられました。当然のことです。大島大臣、疑惑の秘書官を先日解任されましたが、それは、疑惑が事実であったことの証左ではありませんか。であるならば、秘書は辞めさせて、ご本人は大臣職にとどまっていていいわけはありませんね。議員には秘書の監督責任があるのですから、速やかに進退をお決めになるべきではありませんか。大島大臣の見解を伺います。
 また、総理が大島大臣を任命されてわずか三週間余りで、このような問題が明らかになった。総理の任命責任が厳しく問われると考えますが、総理の見解を求めます。
 民主党は、この問題の徹底した真相究明を求めていくことを明らかにしておきます。

(内閣改造)
さて、このたびの内閣改造についてお尋ねします。
総理は九月三〇日、政権発足後初の内閣改造を行いましたが、今回の内閣改造ほど不可解なものはありません。「一内閣一閣僚」という原則を貫くと豪語しつつ、他方で6人も大臣を替えたことは、全く説明がつかないではありませんか。この点、総理の説明を求めます。
 今回の内閣改造は、総理や各大臣の責任が具体的に問われることもなく、なぜ、この人が大臣にふさわしいかの説明もありません。
総理は、柳沢氏が公的資金投入への消極姿勢を変えなかったため更迭し、竹中経済財政担当大臣を兼任させました。しかし、ここまで日本経済が落ち込み、財政が破綻寸前の状況にあることを直視すれば、まず竹中大臣の責任や能力を厳しく問うべきであり、その大臣に金融担当相を兼任させるような人事は到底理解できません。
総理の見解を伺います。
 また、私たちが、BSE問題等の責任を問い、辞任を求めてきた武部農水大臣が今回交替になる一方で、東京電力原発検査記録の不正記載等で原子力安全保安院など国の責任が問われる中、平沼経済産業大臣は留任、さらに、防衛庁長官が交替で、外務大臣が留任というのも理解に苦しみます。
 結局は従来からの自民党の順送り人事にしか過ぎないと思いますが、総理、内閣改造の目的、各大臣がなぜその担当大臣とされたのか、明確に説明していただきたい。

(財政・金融)
 経済問題についてお尋ねします。
 今、日本経済は、小泉内閣の経済無策により、デフレ・スパイラルという「底無し沼」の状態に陥っています。一体、景気はどこまで悪化するのか、全く予想がつかない状態です。
失業者やホームレスがあふれ、企業倒産が続いて、自殺に追い込まれる人が後を絶ちません。社会に対する不安で人々は消費を控え、それでますます景気が落ち込むという悪循環に陥っています。就職の夢は絶たれ、若者は未来に希望が持てない苦しみに直面しています。
高卒で、就職できるのは二人に一人との調査結果が出ています。
日経平均株価が一時期八〇〇〇円台前半にまで下がったことは、日本経済の危機がはかり知れないほど深刻であることを示しています。
 こうした経済状況に直面し、総理は、過去の政策についての総括も反省もなく、なし崩し的に政策転換を行っています。
 小泉内閣はペイオフ凍結解除の再延期を決定しましたが、これは「ペイオフは予定通り実施する」との方針を表明し続けた内閣の重大な政策転換です。総理は、これまで金融システムは健全であると言い続けてきました。仮にそれが事実とすれば、ペイオフ延期などあり得ないのではないですか。また、それが事実に反するならば、なぜ政策転換をしたかについて、国民にはっきり説明責任を果たす必要がありますが、総理の答弁をお聞きしたい。
 また、不良債権処理についても、総理は、大臣の首まですげ替えて、デフレ対策も講じないまま、不良債権処理を急ぐとのメッセージを市場に送りました。ところが、総理がはっきりした理由も示さず、過去の方針をひるがえしたため、日本経済は大混乱に陥っています。
 これらの政策転換について、総理は国民にわかるような説明を行うべきではありませんか。また、政策転換をするのであれば、政治責任をどうとるのか具体的に示すべきです。これは政治の基本であり、いい加減な答えでは、国民は到底納得できないと考えます。総理より明快なる見解をいただきたい。

 日本経済は非常事態に突入しています。今臨時国会は、デフレから脱却し、国民生活を建て直し、日本経済を再生させるための対策を早急に策定し、実行する重要な国会と位置付けるべきだと考えます。
 なぜ日本経済がここまで低迷し、国民生活は危機に瀕しているのか。その答えは、極めてはっきりしています。小泉総理が進める構造改革がニセモノであり、口先だけのものだからです。総理は単なる破壊者であり、新しい社会へのビジョンもない、日本を再生させる根本的な政策が欠落しているからではないでしょうか。

民主党が主張する構造改革は、口先だけの小泉改革とは違い、長期的なビジョンに立ち、未来に対する安心・安全を取り戻し、国民生活を根本から立て直すことを目的とします。以下、小泉改革との違いについても触れつつ、民主党の主張する経済対策を提唱いたします。

 第一に、小泉内閣は、自らが約束した国債三十兆円枠に縛られ、小手先の景気対策でその場をしのごうとしていますが、私たちは、長期的な視野に立った安心・安全のシステムをつくることこそ基本だと考えています。
 年金制度の抜本的改革、健保・介護の保険制度の根本的改革を進めるとともに、雇用保険の給付期間や給付額の拡充、受給要件の緩和などの対策を急ぐべきです。
 「将来年金がもらえなくなるのではないか」「失業した時に雇用保険は受け取れないのではないか」という不安を除去しない限り、冷え切った消費や投資を回復することはできません。
 第二に、小泉内閣は、我々が要求した予算組み替えを聞き入れず、旧態依然とした土木型公共事業にこだわり続けていますが、私たちは、環境、福祉、新エネルギーなど新しい時代のニーズに応える産業を育て、多くの雇用をつくる未来志向の発想を持っています。
また、NPOをはじめとした非営利団体の活動を促進し、新しい形の雇用をつくるべきです。民主党はじめ野党提出のNPO支援税制法案を早く成立させるべきです。

 第三に、小泉内閣は、大銀行、大ゼネコンを救済し、国民や中小企業を切り捨てる政策をとっていますが、本末転倒といわざるを得ません。民主党の経済対策は、あくまで生活者、中小企業を生かすことが基本です。
 民主党が主張する不良債権処理は、あくまでも金融機関が本来の姿に戻り、地元の中小企業に積極的に融資を行えるようにすることが目的です。そのため、金融アセスメント法を策定するとともに、中小企業に対する金融上のセーフティネットを確立することが絶対条件です。大企業の借金は棒引きにして、中小企業への融資を止める政府のやり方とは正反対です。
その他、住宅、教育ローンの利子減税などを断行すべきと考えます。
 
 第四に、政府は内向きのツギハギ政策に終始していますが、民主党は、国際ルールや国際競争力を重視した政策を提言しています。
日本版SECを創設し、公正取引委員会を強化し、自由で透明な経済市場を確立すべきと考えます。
また、地域の活力を生み出すためには、現在出されている小手先のメニューを集めただけの特区構想にとどまることなく、権限とともに税財源を大幅に地方へ移譲するなど、大胆に分権を進めることが必要です。

小泉総理の所信表明演説をうかがっておりますと、具体的な経済対策にはほとんど触れておられません。本気で、今年を「デフレ脱却元年」とし、日本経済を再生させる気があるのですか。これでは、「小泉スパイラル」「竹中クラッシュ」をさらに加速させるだけではないですか。
総理は、私たちの提言を真摯に受けとめ、政治決断によって実行に移すべきです。この国会で何を実現するのか、具体的にお答えいただきたい。とりわけ、野党提出のNPO支援税制法、金融アセスメント法の策定は、すぐにもできることです。この点も含め、総理の答弁を求めます。

(人事院勧告について)
 ところで、さる八月八日、人事院は、今年度の国家公務員給与を平均二.〇三%引き下げること、一時金を
〇・〇五ヶ月削減することなどを中心とする勧告を行いました。勧告始まって以来、初のベースダウンで、年間給与も四年連続してマイナスとなるなど、極めて厳しい内容でした。
 給与水準に関わる勧告内容は、深刻な民間給与実態、経済、雇用状況を反映したものと認識しております。
 しかしながら、このような民間給与実態を招いた責任は、自民党を中心とする政府の経済失政にあることは明白です。また、官民格差の是正によって、官民相互に勤労者の給与所得を、いたずらに抑制することにつなげることは、国民経済の観点からも問題が多いのではないでしょうか。
 特に勧告の具体的な実施方法については、慎重な検討と冷静な労使協議を期待したいと思いますが、不利益、不遡及の原則を変更する内容が含まれていることについて、総理の見解を求めます。

(外交安保関係)
(北朝鮮関係)
先週十五日、北朝鮮に拉致された方々のうち、五名が、待望の帰国を果たされました。ご本人はもとよりご家族の皆様にとって、どれほど長い道のりであったことか、この間の心労はいかばかりであったことか、察するにあまりあるもので、言葉には到底表現し得ない思いです。五名にとって一日一日積み重ねられた二四年、その歳月の重さを考えるとき、生活を急激に変えることは容易なことではないでしょう。まずは、ゆっくりと心を癒していただきたいと思います。
さて、この帰国の契機になった九月一七日の日朝首脳会談は、国民にかなり唐突なものであったことは否定できません。確かに北東アジア地域全体の安全と平和の促進を考えたとき、日朝間の長きにわたる不正常な関係を解消することは、米国、韓国、中国、ロシアとの関係の発展・協調と共に不可欠な条件ではあると思います。しかし、この時期に首脳会談がもたれることになったのは、どのような判断に基づくものだったのか、総理に伺います。
 この日朝首脳会談において、北朝鮮は、国家による拉致を認め、拉致被害者の八名もの方々が死亡という衝撃的な内容を伝えてきました。総理は、この事実を知らされたとき、どれほど事の重大さを認識したのでしょうか。
 国と国の対立のなかで、いつも人々は翻弄されてきました。
 わが国が植民地支配の反省と償いを忘れてはならないと同様、自国の国民がその生命と人権をないがしろにされ、わが国の主権を侵されたことに、どれほど強く抗議したのでしょうか。金総書記は、口頭で謝ったと伝えられていますが、正式文書の日朝平壌宣言には、拉致の「ら」の字もありません。このように国による人権侵害という重大な事態が明らかになっても、あらかじめ用意した宣言案を、そのまま署名したのはなぜですか。総理の政治的判断の明確な説明を求めます。
 その後、拉致問題について北朝鮮から日本政府が聞き出してきた情報は、死因や埋葬等について真偽のほどさえ疑わしく、ご家族はじめ国民の不信感は募るばかりです。そもそも拉致被害者、ご家族に対して、直接の謝罪はあったのでしょうか。今後、被害者やご家族への謝罪と補償がなされ、安全が確保され、完全な解放と帰国という具体的で誠意ある対応がとられるべきです。
政府は、厳しく毅然として北朝鮮と向き合い、まずは、拉致問題の全容解明に向けて徹底的な再調査がなされなくてはなりません。そして調査結果を踏まえ、全面的な解決への道筋をつけるべきです。政府は、今月二九日には、国交正常化交渉を再開するとしています。そのように決めた理由はなんですか。「拉致問題の全面解決なくして国交正常化なし」と発言されてこられたのですから、その際の拉致問題に対する交渉の方針及び展望はいかなるものか、総理並びに外務大臣に伺います。
 さらに、北朝鮮が今月初めの米朝高官協議の際、核兵器開発を進めていることを認めたことが判明しました。いったい日朝首脳会談で署名された「日朝平壌宣言」は何だったのでしょう。総理は、首脳会談前に米政府から北朝鮮の核開発に関する情報を知らされていたということですが、会談では核開発について北朝鮮側からいかなる説明があり、どのような話し合いがなされたのか、総理、明確にご説明下さい。
 核開発は、米朝枠組み合意だけでなく他の国際約束にも反し、わが国を含む東アジアの安全保障上の脅威となるもので、看過できるものではありません。何としても国際社会による厳格な査察の実施、開発等の停止を北朝鮮に確約させなくてはなりません。
 再開するとしている国交正常化交渉において、拉致事件の徹底的な真相究明と核開発問題が交渉入口での最重要課題であり、交渉進展の条件になると考えますが、交渉に臨むにあたっての姿勢及び交渉のプログラムを総理及び外務大臣に伺います。

 次に、イラク問題についてお伺いします。
昨年の十月七日の米英軍によるアフガニスタン攻撃から一年が経ちました。日本は、九月一一日の同時多発テロの大惨事を受け、国際社会とともに「テロとの闘い」に取り組んでいくことを明確にし、様々な面で米国に協力してきました。
しかし、現在私が憂慮するのは、米国がアフガニスタンにおける戦争の舞台をアフガニスタンからイラクに移そうとしていることです。ブッシュ大統領は、九月二〇日の「国家安全保障戦略」の発表から、フセイン政権の打倒を主張し、場合によっては単独での先制攻撃も辞さないとしています。さらに、武力攻撃を念頭にした安保理決議の提出、米国の上、下院による武力行使容認の決議案採択など、危険と見なせば単独での武力行使をしてでも、他国の政権をすげ替えるという米国の姿勢を、総理は支持されるのですか。総理の見解を伺いたい。
いやしくも武力行使を主張する以上は、その正当性を国際社会が承認することが不可欠であり、慎重かつ冷静な検討もないままに、自由と人権の理不尽な抑圧に繋がる事態が生ずるのみならず、イスラム世界を巻き込んだ国際的な紛争に拡大することを強く懸念します。
このイラク問題に対し、政府としてどのように取り組んでいくのか、また武力攻撃を主張する米英両国に対して、わが国としてどう対応していくのか、総理及び外務大臣に改めてお伺いしたい。
 他方、国内では、アフガン難民問題をきっかけにわが国の難民認定、難民支援制度の見直しを求める声が国内外で強まっています。国連からも難民問題に関するわが国の姿勢は、厳しく指摘を受けています。緒方貞子さんが、国際社会で果たされてきた足跡を私たちは受け継がなくてはなりません。世界のあらゆる人の自由と尊厳を守る先頭に立ち、国際社会と共生し、尊敬される国になるためにも、難民認定申請者が長期にわたり、収容されている実態は改める必要があり、民主党も検討を進めている難民認定に関する審査機関のあり方、「六〇日ルール」の廃止などについて、総理、法務大臣はどのように考えておられるかお伺いします。

〔国民生活の不安〕
さて、国民生活において、不安を募らせている問題について以下、伺います。

(原発のトラブル隠しをめぐる問題)
まず、東京電力など電力会社による原発のトラブル隠しをめぐる問題です。
今回の電力企業による点検記録の改ざん問題は、電力会社首脳の総退陣までに発展すると同時に、国の原子力政策を揺るがしかねない事態になっています。大変深刻な問題です。原発に対する国民の理解を得るためには、国と電力会社は情報の公開、説明責任を果たさなければなりません。トラブルを会社ぐるみで隠ぺいし、国民の原子力発電に対する信頼をおとしめた企業の責任は当然のことながら、経済産業省の原子力安全保安院など国の管理体制も厳しく問われなければなりません。国の検査体制の甘さや、不十分な説明など、総理はどのように認識し、原発の信頼回復のために今後どのような方針で取り組むお考えか、答弁を求めます。
 今回の事件を契機に、保安院を中心とした原発の安全管理体制に対して疑問の声が出ています。民主党は、以前から、保安院を完全に独立させ、内閣府に移すことを主張しており、二〇〇〇年三月には、「原子力安全規制委員会設置法案」を提出しております。自治体や経済界等からも推進体制とチェック体制との分離を求める声が出ています。保安院の内閣府への移行について、総理の見解をお尋ねします。

さらに、保安院の規模およびその専門的能力について伺いたい。
日本の体制は、原発約五〇基に対して保安院に二六〇人、内閣府に約一〇〇人の人員が配置されています。これに対し米国では、原発一〇〇基に対し、原発安全規制機関であるNRCに二九〇〇人の職員が配置されております。つまり、原発一基あたりでみれば、米国には約三〇人の職員がいるのに対し、日本はわずか七人にすぎません。今後、日本の原発の経年劣化が進んでいく中、米国のわずか四分の一の陣容で、本当に十分な安全対策を確保できるのか、総理の見解を求めます。

(食の安全)
 次に、食生活の不安について、伺います。
 牛海綿状脳症、いわゆるBSE問題の発生から一年が経過しました。
 BSEに対する一定の安全確保体制は整備される方向に進んでいると思いますが、BSEの原因や感染経路については明らかになっていません。総理、これらの究明はどうなっているのか、明確な答弁を求めたい。
 また農水省が法律による肉骨粉の使用禁止を見送ったことや、EUから日本におけるBSE発生の危険性を指摘されながら、何もしてこなかった政府の対応などは、明らかに失政ではなかったか。これらについて、総理はいかがお考えですか。
 また、大手企業による牛肉偽装問題が発覚したとき、武部前農水大臣は企業に対し厳しい処分を求めましたが、そもそもBSE問題の発生時に農水省自身がとった処分はどうだったでしょうか。問題発生時に高級官僚だった農水省幹部は、八千数百万円の退職金を受け取り、畜産関連団体に天下りしようとしていた。逆にBSE発生以降、牛肉関連企業は業績を急降下させ、そのために職を失った方々や失いかねない人々も多数おられます。政府の失政の被害を受けた方々に、政府はどう対応しましたか。身内には優しく、働く人々や消費者には冷たい農水省の態度は全く解せません。
 総理の見解を伺います。

(個人情報保護法関連4法案について)
次に、個人情報保護法案について質問します。
個人情報を保護するための法律の制定は、急を要する案件ですが、自己情報に本人が関与する「自己情報コントロール権」が確保されることが最低限必要ではないでしょうか。この点について、総理のご所見をお伺いします。
また、政府提出の個人情報保護法案は、憲法二一条が保障している言論・表現・出版などの自由に逆行するもので、時の主務大臣の判断によって罰則規定が適用されることになり、その曖昧さは以前から強く指摘されているところで、大臣による恣意的介入も懸念されるところであります。これでは、本来、ジャーナリズムが監視する権力が、逆にジャーナリズムを監視するということになりませんか。
主務大臣が関与するという仕組みではなく、欧州諸国のように行政から独立した第三者委員会を設置すべきではないでしょうか。総理のご所見を伺います。
 私は、個人情報保護法案は、OECDの八原則に基づいた明確なものにしなければならないと考えておりますが、政府案には多くの問題点があり、「欠陥法案」と断ぜざるを得ません。政府の個人情報保護関連法案は撤回し、新たな法案を再提出する以外に選択肢はないと考えます。この場で、総理の決断をいただきたい。
 
(人権擁護法案)
 この際、重大な欠陥があるために、継続審議となっている「人権擁護法案」についても具体的に質問します。
 まず人権擁護法案では、人権委員会を法務省に置くとしております。国連からも強く指摘されているように、人権委員会の独立性を確保するためには、人権委員会は法務省ではなく内閣府に設置すべきです。権力を背景にした暴力・虐待・人権侵害が問題となっている刑務所や出入国管理施設を所管しているのは法務省なのですから、法務省が人権委員会を所管することは不適切です。
 また、地方にも人権委員会が必要です。
 第二点目は、報道機関の過剰な取材方法による人権侵害について、人権委員会が介入できる点です。報道機関も社会の一員であり、人権侵害は許されませんが、国家権力が報道へ介入することは、民主主義に不可欠な「自由な報道」への悪影響が懸念されます。直接介入するのではなく、報道機関に対し、自主的救済の仕組みを作ることを義務づけるべきです。
 これらの点を修正することについて、総理から明確な答弁をお願いします。

(男女共同参画)
次に、二一世紀の最重要課題、男女共同参画社会実現に向けて質問します。
現在、日本人の平均寿命は、男性七八.〇七歳、女性八四.九三歳と延びています。こうした長寿社会では、男女ともに多様なライフスタイルを選択することのできる社会システムを確立することが不可欠と考えます。また、内閣府の「男女共同参画社会に関する世論調査」によれば、「夫は外で働き、妻は家庭を守る」という伝統的な家庭観について、男性の賛成は五一.三%、反対が四二.一%という結果になりました。しかし、二〇代〜四〇代では、男女いずれも反対派が半数を超え、賛成派を大きく上回っています。若い世代が持つ家庭観を重く受けとめるべきではないでしょうか。
この調査報告の結果を踏まえた施策を含め、男女共同参画社会に向けた政府の基本姿勢を総理からお伺いします。
このような社会の変化の中、選択的夫婦別姓の導入が叫ばれて久しくなります。多くは申しませんが、機は熟しており、導入に向けた総理の決断あればという状況です。
改革を唱える総理であるならば、このようなときこそ本領を発揮すべきではないでしょうか。そうでなければ総理ご自身が抵抗勢力と評されることになります。総理の決断の一声をお聞かせ下さい。森山法務大臣も期待されておられるはずです。
さらに社会制度も、男女共同参画社会にふさわしく多様なライフスタイルに適合し、性に中立性を持った制度にすべきではないでしょうか。税制、年金については、世帯単位から個人単位の制度に変えていくべきではありませんか。基礎年金は全額税方式にする、年金負担は個人単位に切り換える、配偶者控除、配偶者特別控除は廃止して、子育て支援は歳出の方でしっかり手当てするという施策が必要ではありませんか。
総理から明快なる答弁を求めます。

(司法制度改革)
 もう一つ、二一世紀、公平、公正な社会を支えるものとして、期待される司法制度改革について質問します。
 わが国は、欧米諸国と比べ、弁護士や裁判官など法曹の数が圧倒的に不足しており、国民の人権擁護、紛争解決に支障をきたしています。民主党も、既に司法制度改革に関する提言として「市民が主役の司法」をまとめ、法曹を現在の五倍の一〇万人に増やすことを主張しており、そのためには、中核となる法科大学院、いわゆるロースクールの創設が非常に重要だと考えています。政府も今国会に、法科大学院を創設する法案を提出されております。
 そこでお聞きします。民主党は、法科大学院をこれまでの法学部の二の舞にしてはならないと考えます。法律専門職業人の養成に特化した機関としての教育内容・方法を確保すること、入学者が法学部出身者に偏らないよう適性試験、学部成績、社会人としての活動実績等を総合的に評価すること、設置認可・監督・評価などは文部科学省から独立した第三者機関で実施することなどが必要と考えます。これらについて、法務大臣のお考えをお聞かせください。

(基地関係訴訟)
 司法による社会の公正の担保が重要であることを指摘させていただきましたので、最後に最近出された二つの司法判断に関連しておたずねします。
 小泉総理の地元神奈川県は、ご存知のとおり、沖縄県に次ぐ基地県でもあります。この米軍基地に関連して過日二つの第一審判決が出されました。
 一つは、一〇月七日に言渡があった基地従業員の石綿じん肺訴訟。もう一つは、一〇月一六日に言渡があった厚木基地騒音訴訟です。いずれも国の責任を厳しく問う内容でした。
 じん肺訴訟において判決は、「国は雇用者としての立場、地位協定締結当事者としての立場から、米軍が安全配慮義務を充分に尽くしているかどうかを不断に調査・監視し、必要な措置を講ずるよう働きかける義務があるにもかかわらず、それを充分に尽くしていなかった」としており、基地騒音訴訟判決においても、「国の防音対策は抜本的な解決になっていない。」として抜本的な対策の必要性を指摘し、併せて「日米合同委員会での協議・交渉という手段があり、国が被害の発生を回避する可能性が全くなかったということはできない」と不作為の責任を問うています。
 基地の存在には、周辺住民の協力、基地機能を維持するための優れた技術力などが必要です。だとすれば、これらに関わる人々の安全・安心・人権を保つことは国としての責務ではないでしょうか。国民の信頼なくして日米同盟関係に基づく基地の存続はあり得ません。これからも日米両国が対等の良きパートナーシップを発展させていこうとするのであれば、この際、住民や働く人々の安全、安心を求める声に応え、司法が下した判断を率直に受け止め、抜本的な対策を講ずるべきと考えますが、如何でしょう。総理の答弁を求めます。
 じん肺訴訟の原告は戦後の日米関係の発展、わが国の復興を支えてきた人々ですが、今や高齢化し、亡くなる方も出ています。時間はないのです。また、厚木基地周辺住民が「静かな夜を返して」と最初の訴訟を提起したのは一九七六年。それから既に三十年近くの時が経っているのです。じん肺訴訟については、国はほぼ判決を受け入れましたが、一部を控訴しました。しかし、いずれにしても、これ以上国が訴訟を長引かせることは避けるべきです。長年にわたる市民の痛みを和らげるためにここでひとつでも総理の暖かい心を示されては如何でしょう。問題を最終解決するための総理の決断を強く求め、私の質問を終わります。

※本テキストは質問直前の予定稿であり、実際の発言内容とは一部異なる場合があります

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