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2001/10/01
小泉首相の所信表明演説に対する代表質問(鳩山議員)
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民主党 鳩山由紀夫


 私は、民主党・無所属クラブを代表して、小泉総理の所信に対し質問するとともに私の所信を表明し、絶叫すれども姿の見えぬ小泉流構造改革の実態を明らかにしていきたいと考えます。

 最初に私は、アメリカにおける先の同時多発テロに際して亡くなられた方々、負傷された方々、またご家族の皆様に対して、心から哀悼とお見舞いの言葉を捧げます。

 9月11日の日本時間夜9時45分、ニューヨークの世界貿易センタービルに旅客機が飛び込んだ、あの映像は世界の人々の目にいまも焼き付いていることでしょう。激突した飛行機の中でテロリストたちに刃を突きつけられていた人たちは、どれほどの恐怖に包まれて最期の瞬間を迎えられたか、悲しみと怒りで、私自身、胸が押しつぶされそうな想いです。

<同時多発テロ対策に対する政府の対応と民主党の態度>


 テロリズムは、正義と人道に反する行為であり、私たちはこれを許すことはありません。私たちは、アメリカや国際社会と一致協力して、暴力に屈することなく、いかなるテロに対しても毅然として立ち向かわなければなりません。

 当面するテロ撲滅対策に関する民主党の基本姿勢は、(1)正義と人道に反するテロには毅然として立ち向かう。(2)アメリカ等のテロ撲滅行動への協力に必要な法整備には、憲法の枠内で周辺事態法の議論を踏まえて行う。(3)求められる後方地域支援には、犯人の特定とアメリカの作戦目的の明確化を求める、以上の三原則を条件としています。

 ここで忘れてはならないことがあります。古代ローマの政治家キケロは「戦争になると法律は沈黙する」と言いました。国権の最高機関である立法府に集う私たちはこれを許してはなりません。わが国がアメリカをはじめとする国際テロ対抗措置を講ずるに当たり、なし崩し的な対応、あるいは危機に名を借りた行き過ぎた行動を決してとってはならないと考えます。
 以下、総理に具体的な質問を行います。


<初動と国民への説明の遅れ>


 今回のテロ事件に対する小泉総理の初動は、諸外国と比べてスピードに欠けたというのが率直な感想です。総理自らが国民や世界に対して日本の姿勢を表明したのは事件発生後何と12時間以上経ってからです。事態の深刻さに対する理解が欠けていたとしか思えません。そして、小泉総理は、9月19日、唐突に7項目の当面の措置を発表し、25日にはブッシュ大統領と会談して日本の支援策を説明しました。

 しかし、今日まで、7項目の詳細について日本国民や国会に対してはほとんど説明がなく、19日の記者会見はメモを読むだけの一方的な表明でした。先週の所信表明でも内容については何も語られませんでした。

 総理に対し、初動の遅れに対する反省と、7項目の詳細や法整備について、国民への説明も作業そのものも遅れていることについて、納得のいく答弁を求めます。


<「護衛」「イージス艦派遣」の法的根拠は何か>


 9月21日、アメリカの空母キティホークが横須賀基地を出港し、それに合わせて海上自衛隊の護衛艦が出港・同行しました。防衛庁は防衛庁設置法第5条の調査研究活動と説明していますが、中谷防衛庁長官が「警戒・監視」であったことを記者会見で認め、山崎自民党幹事長も昨日のテレビで「護衛」であったことを認める発言をしています。法的根拠のない活動を自衛隊が行ったことになり、法治国家として看過しかねる問題です。対米支援なら法的根拠がなくても行ってよい、というわけにはいきません。さらに、こうした自衛隊の活動が官邸の福田官房長官の耳に事前に入っていなかったと報道されていることも、大変危うい問題をはらんでいます。

 総理に質問します。9月21日の自衛艦活動の法的根拠は何か?もしも、調査研究活動というならば、それを実質護衛と呼ぶ中谷防衛庁長官や山崎幹事長の発言に問題はないのか。また、今後、インド洋へのイージス艦の派遣を行う計画があるのか、あるとすればイージス艦派遣の法的根拠は何なのか、以上二点についても併せて総理に伺います。


<国内の危機管理体制はどうなっているのか>


 次は、国内テロ対策について質問します。総理の所信表明には対米支援の決意は盛り込まれていても、この肝心要のポイントがすっぽり抜け落ちていたことに、私は唖然としてしまいました。日本国民の生命と財産を守ることが私たち政治家の最大の責務であることを考えれば、総理に猛省を促さなければなりません。 

 今後、日本がアメリカ等に協力する場合、日本に対するテロの危険がいや増すことは否定できません。「生物化学兵器テロ」「サイバーテロ」を含めて万全を期すことが最も喫緊の課題です。 

 そこで小泉総理に二点質問します。空港等の検査態勢や出入国管理の強化など、現行法のもとでの政府の危機管理の取組みはどうなっているのか。また、今後、警察力を超える事態が国内で起こった場合に自衛隊を活用することも必要になると考えますが、その際、米軍基地や自衛隊基地は守れても、例えば都心のオフィスビルは守れない、ということになれば本末転倒と言わざるをえません。今後必要になる自衛隊の警備対象についていかが考えるか、総理にお尋ねします。


<自衛隊の活動範囲をどう考えるのか>


 総理は7項目の措置の中で、「米軍等に対して、医療、輸送・補給等の支援活動を実施する目的で、自衛隊を派遣するため所用の措置を早急に講ずる」としています。ところが、そのために必要となるであろう法整備と憲法の関係が明確でありません。例えば、与党幹部の発言からは、今回の自衛隊の活動について、「活動地域及び武器使用基準について、従来の憲法解釈に収まりきらない可能性がある、だから、本件限りの特別立法にして大目に見ましょう」という印象さえ受けます。憲法に例外を認めるようなやり方は、絶対に認めることはできません。

 小泉総理は去る9月24日、ワシントン市内で行なわれた同行記者団との懇談で、「自衛隊は危険な所に出しちゃいかん、では話にならない。出し惜しみはしない」と述べました。これは、従来海外における自衛隊の行動を、「戦闘区域と一線を画した場所」に限定してきた政府の基本方針を変更する意図を表明したものとも受け取れます。新法における自衛隊の活動領域についての考え方と、それが武力行使の一体化に関する従来の政府見解を変更するものであるか否か、について総理の明確な答弁を求めます。

 また、同じ懇談で総理は、自衛隊の武器使用基準について「どこにいても安全は保証されない。常識的な対応が必要だと思う。」と述べています。常識的な対応、と法律に書くことはできません。総理の言う常識的な対応の内容について、具体的な答弁を求めます。特に、総理が自衛隊の武器使用に関する従来の政府見解を変更する意図を持っているのか、持っているとすれば、どの程度までの基準緩和を考えているのか、明確に説明することを求めます。

 後方地域支援に当たる自衛隊の任務についても慎重な吟味が必要です。周辺事態法では自衛隊による武器弾薬の輸送を認めていますが、新法において、日本の領土や公海を越え、他国領域での活動をも認めるのであれば、慎重を期して武器・弾薬の輸送も行わないこととすべきです。総理の見解を伺います。

 また、19日の7項目の中には、医療目的や難民支援のための自衛隊派遣が入っていますが、これはパキスタン等に対する陸上自衛隊の派遣を意味するのでしょうか?私たちの理解では、アフガニスタン周辺国において陸上自衛隊の活動区域を「現在及び将来にわたって戦闘区域と一線を画される地域」として認めることは基本的に難しいと考えます。この点について総理の見解を伺います。


<新たな国連決議を求めるべき>


 ところで、小泉総理の発言からは、日米同盟を強調するあまり、何か「アメリカが求めることであれば何でもよい」と言わんばかりの焦りさえ感じられ、それに国民は危うさを感じています。日米同盟は重要ですが、テロ撲滅のための国際共同行動というより大きな文脈に立って、今後の対応を考えなければなりません。その際、国際的正当性を裏打ちするのが国連決議だと考えます。その点、これまでの国連決議では不十分です。新たな決議をあくまで求めるべきだと考えますが、総理のご所見を伺います。
 国連決議が国際的正当性なら、国内的正当性は国会承認で担保すべきではないでしょうか。フル装備した自衛隊を海外に出すのです。新しい法整備で自衛隊の後方地域支援を可能にするのであれば、シビリアン・コントロールと民主主義を全うする観点から国会承認が不可欠です。また、一定期間を超える活動に対して国会にチェック機能を持たせることも、泥沼化防止にはきわめて有効です。国会承認を要件とすることについて、総理の見解を伺います。


<後方地域支援の条件>


 私たちは、仮に新法が成立しても、それが自動的に新法適用を意味するものとは考えていません。すなわち、日本が実際に後方地域支援に踏みきる場合にはいくつかの条件があります。その一つは犯人の特定であり、少なくとも日本政府が、犯人をウサマ・ビン・ラディン氏と断定する根拠についてアメリカ政府から十分な説明を受けなければなりません。総理に伺います。本日現在、日本政府はどのような説明を受けているのですか?また、アメリカの作戦目的についても、ビン・ラディン氏の逮捕か、テロ組織の撲滅か、それを支援した国家に対する攻撃をも含むのか、日本政府がまったく関知することなく自衛隊を派遣するというわけにはいかないと考えることは、それこそ常識です。総理に伺います。日本政府は、今回の米軍の作戦目標についてどのように聞いているのでしょうか。 


<テロリズム撲滅への日本の外交努力>


 今回のテロリズム撲滅のための国際共同行動は、アメリカ等に対する後方地域支援にとどまるものではありません。むしろ、外交面で日本が役割を果たすことが非常に重要です。私たちは、テロの遠因である貧困問題解消のためにODAを戦略的に活用することや、中東和平外交への取組みを倍化すべきことを提言します。例えば、国連決議についても、本来ならば日本が中国を含む安保理常任理事国に働きかけるべきことなのです。
 一体、安保理常任理事国や中東、南アジア諸国に対し、どのような外交的働きかけを行うつもりなのか、お答え下さい。


<国際刑事裁判所設立条約を批准すべき>


 テロ撲滅のためには、国際司法の観点から取組みを強めることも不可欠です。そして、これに関連する重要な国際的取り決めが、98年に採択された国際刑事裁判所設立条約です。これは、国際社会にとって最も深刻な罪である、集団殺人罪、人道に対する罪、戦争犯罪等を犯した個人を国際法に基づき訴追し、処罰しようという常設の国際刑事法廷の開設を意図したものです。しかし、わが国は本条約の批准はおろか署名さえしていません。
 私たちは日本が国際刑事裁判所設立条約に署名・批准すべきだと思いますが、日本政府としてその用意はあるのですか。

 最後に、国民に訴えておきたいことがあります。今後の日本が取り組む挑戦は、あくまでもテロリズムとの闘いです。決して、特定の宗教や民族、文化、思想の対立と位置付けてはなりません。日本における多文化教育の充実などと併せ、日常生活を送る上でもこの点を踏まえた冷静な対応をお願いするものです。


<小泉内閣150日を問う><BR>

 小泉総理、総理就任から150日が経ちました。「まだ150日」ではなく、「もう150日」なのです。もはや、「始まったばかり」との言い訳は許されません。

 「カイカク、カイカク」という総理の勇ましい言葉とは裏腹に、国民の目の前にあるものはいったい何でありましょうか。
 それは、日本経済を瀕死の状態にまで追い込んだ経済のマイナス成長であり、本格的な5%失業時代への突入であり、さっぱり進まぬ不良債権処理と相次ぐ大型倒産という現実であります。そして、資金繰りに苦しむ地域の中小企業群の解体であり、中高年者の自殺の増大です。いまや、人間も地域社会も崩壊の危機にあえいでいます。

 経済ばかりではありません。政治・行政の世界においても、国民に伝えられるものは、相次ぐ外務省不祥事の発覚であり、農水省の狂牛病にかかる隠蔽体質の露呈であり、高祖議員辞職劇を生んだ政官癒着構造の顕在化であります。これが、総理自身の百の説教よりも確かな現実なのです。

 総理自身、抵抗勢力と組んでは道路特定財源の一般財源化をウヤムヤにし、国債発行額を30兆円以下に抑制するとした国民への約束を放棄するかのような発言をしています。これらの「癒着」「隠蔽」「なれ合い」「先送り」「その場凌ぎ」、そのすべてが総理になる前からの自民党政権の体質そのままではありませんか。

 そのうえ、特殊法人改革をめぐる国土交通大臣と行革担当大臣のバラバラな姿勢、官房長官と外務大臣の冷え切った関係など、内閣としての一体性に乏しく、あなた自身の統治能力そのものが問われているのです。


<現下の経済・金融問題と財政規律のあり方について>


 総理就任から株価は4,000円以上下落し、あり地獄のようなデフレの進行の下でダウ平均1万円を割り込み、バブル崩壊後最安値を更新しました。にもかかわらず、「株価には一喜一憂しない」などとうそぶいています。しかし、問題は、一喜一憂するかしないかではないのです。総理自身が、わが国経済が崩壊寸前の危機的状況にあることをわかっているかどうかなのです。総理、私は危機的だと認識していますが、あなたはどう思っておられるのでしょうか、お尋ねします。

 さて、総理は、柳沢金融担当大臣の言を鵜呑みにして、不良債権についてその処理がうまくいっているかのような発言を行ってきました。実際、つい2年半前、当時の柳沢金融再生委員長は不良債権処理は完了したと宣言しています。しかし、不良債権の金額はどんどん膨らみ、挙げ句の果てには、問題債権は150兆円もあるというとんでもない事実が判明する始末です。今や誰も、政府の言うことを信じてはいません。欧米から厳しいまなざしを向けられ、IMFが金融特別審査に乗り込んでくるのも、そのためなのではありませんか。

 柳沢大臣は、不良債権の査定は適切だと言い続けてきました。しかし、倒産したマイカルの資産査定は、本当に適切に行われていましたか。自民党お得意の「手心」を加えて、甘い査定をしていたのではないですか。マイカルは、昨年個人投資家向けに900億円の社債を発行したといいます。実に2万人の個人投資家が、一瞬にして財産を失ったのです。金融当局と銀行、大企業のなれ合いと問題先送り体質がこうした事態を招いたのでありませんか。私は、柳沢大臣の下では不良債権処理は進まないと前から主張してきましたが、その責任についてどう対処されようとしているのか、総理の決断をお尋ねします。

 また、政府自身の認識の誤りを率直に認めて、私たち民主党が主張しているように、緊急一斉検査を実施して銀行に厳格な資産査定と引き当てを行わせることが必要不可欠なのではないですか。お答え下さい。

 総理は、整理回収機構による不良債権の買い取り価格の決定方式を弾力化するという方針を示されましたが、買い取り価格は簿価にしようという構想もあるようです。不良債権を時価より高い価格で買い取るということは、形を変えた銀行への税金投入であり、国家的な不良債権の飛ばし、すなわち国民の税金による肩代わりにほかなりません。私たちは、このような国家的飛ばしを、断じて認めるわけにはまいりません。それでもこの方針を強行するおつもりですか。明確なご返答をお願いします。

 今国会に提出する補正予算の規模・内容についてお尋ねします。特に、今年度の国債発行額を30兆円以下に抑制するのかどうかについて、所信表明演説は明快ではありません。「大胆かつ柔軟に」などと逆方向の言葉も申されたのです。総理は、自らの公約を捨て去り、30兆円を超える国債発行で補正予算を組むようなことはないと思いますが、はっきりとお答え願います。


<狂牛病問題に対する政府の無責任な対応について>


 次に、ついに日本でも発症例が確認された、狂牛病問題についてお尋ねします。
 9月10日に農水省が、狂牛病の疑いのある牛をいったん「焼却処分した」と発表しておきながら、たった4日後の14日には「実は肉骨粉に加工されていた」と発表するとは何事ですか。届いたファックスを机に放置するなど、県との連絡の不徹底さも次々と明らかになっています。狂牛病の発生に対応するマニュアルもなかったと聞きます。こんな農水省の発表を、今後誰が信じるというのでしょうか。農水大臣の責任はきわめて重大です。その責任について、総理はどうお考えなのかお答え願います。

 総理は先月27日、まるで他人事のように農林水産省や厚生労働省の対応を批判したと聞きます。さらに、あの薬害エイズ事件での元厚生省課長に対する有罪判決について「ずいぶんもう前のような出来事だね」などと平気でコメントしたのも、あなたです。いったい行政府の長は誰なのか。他ならぬ小泉総理、あなたです。あなたこそこの事態に対応しなければならない最高責任者なのです。国民に対し早急に、この事態をどう解決するのかという、いつもあなたがなかなか口にしない具体策を打ち出すことこそが求められているのです。

 総理、あなたの所信表明では、この狂牛病問題についてはほんのわずかしか触れられていません。まさに、総理の危機感のなさの表れではありませんか。「万全の措置を講ずる」などという聞き飽きた言葉を並べるのはもういいかげんにやめてください。

 狂牛病の感染経路の早期解明、狂牛病発覚に伴う直接の被害及び風評被害を現実に受けておられる関係者に対する補償と対策をどうするのか、狂牛病感染の実態とともに人間への影響などに関する早急な情報開示と併せて、それぞれ明確にお答え願います。


<高祖議員の辞職問題と歪んだ選挙制度改革の目論見について>


 近畿郵政局長をはじめ郵政関係16人の逮捕者を出した高祖議員をめぐる選挙違反事件は「連座制適用」目前というところでの辞任劇となりました。しかし、国民は、政府・自民党による臨時国会前のトカゲのしっぽ切りと感じています。事件の根底にある、業界・団体・省庁、そして族議員との、「ザ・自民党」の癒着構造が深々と横たわっていることを国民は知っているのです。

 私は、代表質問や党首討論を通じて繰り返し、先の参議院選挙における自民党の比例候補者に業界団体代表、官僚OBがずらっと並んでいる事実を取り上げ、「自民党を変える」と約束して自民党総裁になった小泉総理に再考を促してきました。にもかかわらず、自民党は相変わらず利益誘導で業界団体などの支援をとりつけ、郵政族の他に、建設族、医師会、看護業界、JR族などから候補者を揃えたのです。

 こともあろうに、高祖議員の辞職に伴って繰り上げ当選となるのはその一人であるJR出身の人物です。これでは、あなたがた自民党にとっては、いわば「やり得」そのものではないですか。あなたの師である福田元総理は「政治は最高の道徳」とおっしゃったと聞いています。「政治を最高の道徳」にするためにも、やり得方式の繰り上げ当選を辞退させ、議席返上を党総裁として決断すべきだと思いますがどうでしょうか。明快な答弁を求めます。併せて、高祖前議員の喚問を要求して真実の徹底解明にあたるべきだと考えますが、総理の見解を伺います。

 管理監督の責任者である総務大臣や郵政事業庁長官らは、組織的犯罪の事実が発覚した後も、実態調査を行って真相を解明する努力への姿勢を見せていません。2人の責任は重大です。総理は、その責任問題にどう対処されるつもりなのかお尋ねします。

 いま、与党内で中選挙制復活の議論が進められています。党利党略が露骨に出過ぎて、自民党の中からさえも、「哲学も理念もない。国民の失笑を買う」提案だ、との声が出るほどです。こんなお粗末な選挙制度改悪を強行するなら「国民の信頼はまったくゼロになる」との貴党の議員の叫びが、総理には聞こえますか。

 あまつさえ、「連立をどう維持するかの観点で決断した」と自民党選挙制度調査会の責任者が公言する有様です。この問題について、自民党総裁でもある小泉総理はどのような見識を持っておられるのか、ぜひお聞かせ願いたい。


<日本外交の停滞と相次ぐ外務省不祥事の発覚について>


 次に、小泉内閣のアジア外交について伺います。小泉内閣発足以来、私たちの隣国である中国・韓国との関係は、率直に言って冷却化しています。これは、総理自身の靖国参拝問題など、あなたが種をまいた結果です。韓国の金大中大統領は、日韓関係の冷え込みについて「問題は日本側で生じた」と述べ、韓国民が納得できる日本政府の措置を求めています。

 総理に質問します。特に靖国参拝問題について日本国民及び諸外国に対してどのように説明するつもりなのですか。これを明らかにしなければ、総理の望む中韓両国指導者との真摯な対話は不可能です。

 テロリズムへの対応をはじめ、今日、外交の重要性はかつてないほど高まっています。しかし、日本外交を担う外務省と、その司令塔であるはずの外務大臣が、機能不全に陥っているのではないかとの危惧はいまや広く国民の共有するところとなっています。

 とりわけ、田中外務大臣についてです。最近でも、テロ事件後、極秘情報であったアメリカ国務省の避難先をマスコミに具体的に話してしまったこと、パキスタンへの訪問を拒否したと言われること、駐日中国大使の表敬訪問を2ヶ月近くも放置していたこと、官邸や外務省幹部との間で意思の疎通さえ取れていないことなど、大臣としての資質を疑わせる事例は枚挙に暇がありません。このような事態を放置しておくことは、日本の外交不在に拍車をかけることになり、国益そのものを害することに他なりません。

 総理はかつて、「まだ2ヶ月なので多少不慣れな点もある」とか「勉強して色々な事情もわかってくる」といった類の発言を繰り返しては田中外相を弁護する姿勢をとってきましたが、今日に至ってもまだその姿勢は変わっておられないのでしようか。田中外相の外交センスと外務省管理能力について、任命権者たる総理の認識をお聞かせ願います。


<政権交代なくして真の構造改革はあり得ない>


 小泉総理、最後にあなたに申し上げたい。あなたの最大の問題は、この国の未来の姿を一度も示したことがないことです。あなたの口から発せられてきた断片的な改革の先に、どんな社会を描いているのかあなたは一度も国民に語っていません。あなたは、所信表明で改革がめざす5つの目標を示したつもりでしょうが、あなたの改革で何故このような目標を実現できるのか全く説明がありません。ごまかしてはいけません。改革に痛みを伴うと言われても、痛みの先にどんな未来が待ち受けているのか見えなくては、国民が痛みに耐えられる訳がないではないか。

 私は、子どもも大人も一人ひとりが尊厳を持てる社会、女性と男性が互いに自立し、共生し、責任を持つ社会をつくりたい。海外に名誉を求めることより海外から尊敬される日本をつくりたい。中央集権ではなく地域主権の国をつくりたい。そして会社や組織の利潤を第一に考えるのではなく、個人そして家庭を第一に考える人間中心主義の世の中にしたい。そのためには、今までの依存型社会から勇気をもって脱出することです。それはまさにテロの対応にも見られるようなアメリカ依存から、より主体性のある外交を創出し、政官業の癒着の中に安住した官僚依存の政治をやめることです。それが真の構造改革なのです。

 小泉総理、あなたには改革の意味がわかっていない。自民党政治に身を任せ、政官業の癒着に手をつけようともせず、主体性のある外交も行っていない。私はあらためて確信します。政権交代なくして真の構造改革はありえない、と。このことを最後に申し上げて代表質問を終わります。

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